住宅ローン減税中の10年間は繰り上げ返済をしない方がいいの?

「早くから繰り上げ返済をしたい」、そんな考えを持つ人は少なくないはず。しかし、住宅ローン減税を受けている10年間に繰上げ返済をして借入額を減らす、ということは減税される額が減る、ということ。当初10年間は繰上げ返済しないほうが良いのか悩ましいところです。住宅ローン減税と繰り上げ返済の兼ね合いで悩む永山さんの事例で解説していきます。

住宅ローン控除・減税の仕組み

大村美穂 回遊舎

大村美穂 (回遊舎)

金融を専門とする編集・制作プロダクション回遊舎にて、住宅に関わる分野を中心に編集・執筆を行う。AFP(日本FP協会認定)。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。

住宅ローン減税中に繰り上げ返済をするのは損?

「住宅ローン減税を受けている10年間は繰り上げ返済しないほうが良いですよ!!」

ここ数年で住宅ローンの契約をした人たちは、銀行担当者からそんなアドバイスを受けることがあるようです。2016年に3680万円の新築マンションを購入した永山さん(夫/34歳会社員、妻/33歳会社員)もその一人。

「住宅ローン関連の本で、『金利負担の軽減効果が大きいので、早いうちからどんどん繰り上げ返済をしたほうが有利』と勉強していたので、1年目から繰り上げ返済をするつもりでいました」

「住宅ローン減税」は、4000万円まで(認定長期優良住宅であれば5000万円まで)の住宅ローンに対して、借り入れから10年間、年末の借入残高の1%が所得税と住民税から戻ってくる制度。年末の借入残高の1%が減税されるので、借入額がたくさん残っていればいるほど、減税額も増えるということ。繰り上げ返済をするということはその分の借入残高が減るため、減税される額も減る、というわけです。

永山さんも、10年間の住宅ローン減税適用期間中は繰り上げ返済せずに、終わるまで待ったほうが良いのか、住宅ローン減税と繰り上げ返済の優先順位で悩んでいるそうです。

低金利下では住宅ローン減税フル活用したほうが節約に

永山さんの場合、3000万円を0.675%の変動金利型で35年間借り入れました。ボーナス時返済は行わず、1年目からボーナスのなかから50万円を繰り上げ返済にまわしたいと考えていました。1年目から年間50万円を10年間繰り上げ返済した場合と、住宅ローン減税適用10年間は繰り上げ返済せず(つまり住宅ローン減税をフル活用する)、減税適用が終わった11年目に一気に500万円を繰り上げ返済した場合、どちらがおトクなのでしょうか?

※借入金額3000万円(35年返済)、借入金利0.675%の場合。(年収は約600万円)

1年目から「50万円/年」を
10年間繰り上げ返済する
10年間せず11年目に500万円繰り上げ返済
する場合(住宅ローン減税フル活用)
住宅ローン減税額 230万円 257万円
繰り上げ返済利息軽減額 100万円 78万円
合計の軽減額 330万円節約 335万円節約

住宅ローン減税フル活用したほうが約5万円おトク!

住宅ローン減税額と、繰り上げ返済の利息軽減額を比較すると、永山さんの場合、住宅ローン減税適用中は繰り上げ返済をせず、フル活用後の11年目に繰り上げ返済をしたほうが約5万円節約になる、という結果になりました。

金利が高い場合は「早々に繰り上げ返済」が吉!

永山さんは変動金利の0.675%というかなりの低金利で借り入れをしていますが、参考までに、もう少し金利が高い場合(固定金利を選んでいた場合など)はどうなるか、見てみましょう。

※借入金額3000万円(35年返済)、借入金利1.5%の場合。(年収は約600万円)

1年目から「50万円/年」を
10年間繰り上げ返済する
10年間せず11年目に500万円繰り上げ返済
する場合(住宅ローン減税フル活用)
住宅ローン減税額 234万円 262万円
繰り上げ返済利息軽減額 246万円 189万円
合計の軽減額 480万円節約 451万円節約

早くから繰り上げ返済をしたほうが約29万円おトク!

現在の固定金利の水準約1.5%でシミュレーションをしてみると、先ほどの結果とは逆になり、住宅ローン減税適用中でも早くから繰り上げ返済を行った方が、約29万円もの節約になる、という結果になりました。

今回の永山さんの例では、当初10年間は繰り上げ返済をしない方がおトクという結果になりましたが、住宅ローン借入額や金利、繰り上げ返済の金額、その人の年収(所得税額・住民税額)などの条件が変われば、どちらの選択が有利かも変わってきます。条件により異なりますが、ポイントとしては、住宅ローン借入額が多かったり、金利が高かったりする場合は、早くから繰り上げ返済をした方が有利になるケースが多いといえます。金利が低いうちは利息の負担が少ないため、現在の変動金利の水準ぐらいであれば、住宅ローン減税適用期間中に焦って繰り上げ返済をしなくてもいい、というケースが多いと言えるでしょう。
注)図表内のデータは、シミュレーションサイトにて計算。また、変動金利に関しては金利が変わらない場合で試算した。

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