親からお金を借りて住宅ローンの繰り上げ返済する際の注意点

住宅ローンの繰り上げ返済の資金を親から借りる場合でも借用書を交わす必要があることをご存じでしょうか。たとえ親子間であっても、住宅ローン返済のための借り入れであることが認められない場合は、贈与税の課税対象となることがあるからです。親からお金を借りて繰り上げ返済をする際の注意点についてご紹介します。

住宅ローン返済期間の変更

江﨑真奈美 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

江﨑真奈美 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後、会計事務所に勤務し、巡回監査業務に従事。その後、社会福祉法人をはじめ、地元の上場企業などで長年経理業務を担当。勤務していた事務所の閉鎖に不安を感じ、これをきっかけとして2016年に最短1年で1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得する。FPとして独立し、執筆、講師業を中心に精力的に活動中。
【企画・編集/SAKU株式会社】

親からお金を借りる場合の注意点

住宅ローンに限らず親からお金を借りる場合は、その借り入れに実態が伴わないと税法上は贈与扱いとなり、借りた金額に対して贈与税が課税されることがあります。言い換えると親からお金を借りた場合は、返済能力や返済状況から見て本当に金銭の借り入れであることが証明できれば、贈与とはならず借入金として扱われることになります。
では、どうすれば借入金であると証明できるのでしょうか?

借入金であることを証するにはやはり借用書等の金銭の貸借を書面で残しておくことがベストです。

【借用書に明記する内容】
・借り入れ金額や金利(無利子の場合は利子相当額が贈与として扱われることがある)
・返済期間(返済時期があいまいな場合には形式上の貸し借りと判断され、贈与として扱われることがある)
・返済方法など

口頭での契約も民法上は契約とみなされますが、税法上の問題や今後のトラブルを避けるため、親子間でも金銭の貸借では借用書を残しておく方がよいでしょう。

贈与の場合は非課税枠を活用しよう

親からの借り入れでなく援助で住宅ローンの繰り上げ返済をする場合、援助金額が一定金額以下であれば贈与税が課税されません。贈与税額は以下の計算式で求められます。
贈与税額=(課税価格-基礎控除額110万円)×税率
計算式から分かるように親からの援助(課税価格)が基礎控除額である110万円以下であれば、贈与税は課税されないことになります。この計算方法を暦年課税といい、毎年利用できます。毎年暦年贈与の非課税枠を活用することで、税負担なく親からの援助で住宅ローンの繰り上げ返済をすることができます。

●毎年暦年贈与の非課税枠を利用するときの注意点
暦年課税では特別な条件はありませんが、1人の人が複数人から贈与を受けた場合の基礎控除額については注意が必要です。贈与税の基礎控除の金額は贈与者の人数ではなく贈与を受けた人ごとです。したがって、たとえ両親の双方から贈与を受けた場合でも基礎控除の金額は110万円までです。

●毎年暦年贈与の場合の申告は必要?
贈与税は、1人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額に対して算出し、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに申告する必要があります。暦年贈与の場合、贈与を受けた金額が基礎控除額の110万円を超えないときは贈与税の申告の必要がありません。仮に贈与額が110万円を超えてしまう場合は、贈与税を払ってまで繰り上げ返済をするとメリットがなくなってしまうことがあります。

基礎控除後
の課税価格
200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

【国税庁HP【特例贈与財産用】(特例税率)より】

上記税率は20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合に適用される税率です。20歳未満の者が受贈者となる場合や直系尊属ではない者からの贈与では税率や控除額が異なります。

親からの贈与額が110万円を超える場合

親からの贈与が110万円を超えた場合には、相続時精算課税制度を検討してみましょう。
相続時精算課税は生前に親から子に贈与をしたときの贈与税を軽減し、贈与された財産(贈与時の時価)を相続時の財産に加算する制度のことです。贈与税額は、贈与財産の合計額から特別控除額2,500万円を控除した後の金額に一律20%の税率をかけて算出します。したがって、贈与時の金額が2,500万円以下であれば贈与税は課税されません。

【相続時精算課税の適用要件】
・60歳以上の父母または祖父母からの贈与であること
・贈与を受ける者は20歳以上の子または孫であること(養子縁組した場合は、それ以降の贈与が対象)
※年齢については贈与があった年の1月1日時点での年齢です。

【暦年課税との違いと手続きの流れ】
・贈与税額がゼロでも申告が必要(「相続時精算課税選択届出書」等の必要書類を添えて期限までに申告)
・相続時には相続財産に加算する必要がある
・贈与者ごとに本制度を選択できる(父母からの贈与では、それぞれの金額から2,500万円控除できる)

※選択した年以降贈与者が亡くなる時まで継続して適用されるため、暦年課税に変更不可

住宅ローンの繰り上げ返済の資金を自分で用意できない場合は、親からの贈与を検討してみるべきですが、その際には贈与金額が基礎控除の110万円を超えない金額内におさえることがポイントです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加