住宅ローン返済中の物件を相続した場合はどうなるの?

住宅ローンの融資を受けているご本人が亡くなり、住宅ローン返済中の物件を相続したご遺族は、その後の住宅ローンの返済やマイホームについてどうなるのか?心配になると思います。住宅ローン返済中の物件を相続した場合、団体信用生命保険(団信)の加入の有無によってその後の扱いが異なります。

住宅ローンの名義変更

江﨑真奈美 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

江﨑真奈美 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後、会計事務所に勤務し、巡回監査業務に従事。その後、社会福祉法人をはじめ、地元の上場企業などで長年経理業務を担当。勤務していた事務所の閉鎖に不安を感じ、これをきっかけとして2016年に最短1年で1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得する。FPとして独立し、執筆、講師業を中心に精力的に活動中。
【企画・編集/SAKU株式会社】

相続では住宅ローンも引き継ぐ

相続では原則、金銭や不動産といったプラスの財産のほか、債務などのマイナスの財産も一緒に相続人が引き継ぐことになります。
したがって、住宅ローンが残っているマイホームを相続した場合は、住宅ローンについても一緒に相続することになります。

●団体信用生命保険(団信)に加入している場合
フラット35以外の住宅ローンの融資を民間の金融機関等で受けるには、団体信用生命保険への加入が条件となります。団体信用生命保険とは、加入者に万が一のこと(死亡または高度障害)があった場合、残りの住宅ローン全額の完済が保障される制度のことです。団体信用生命保険の保険料はほとんどの場合、金融機関が負担します。よって、保険契約者も保険金の受取人も金融機関等となります。つまり、住宅ローン返済中にご本人に万が一のことがあったときは、保険会社から金融機関等へ保険金が支払われるため、相続人が残りの住宅ローンの返済義務を負う必要はないのです。また、保険金は相続人が受け取るわけではないため団体信用生命保険の保険金は相続税の課税対象にもなりません。団体信用生命保険の加入は、金融機関にとっても本人に万が一のことがあった場合に貸し倒れの危険を避けるための必須の保険といえます。
万が一ご本人が亡くなられた場合は、各金融機関や保険会社への所定の手続きが必要になります。

●団体信用生命保険に加入していない場合
民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する長期固定金利の住宅ローンであるフラット35などでは団体信用生命保険への加入は任意です。
そこで、フラット35など団信に加入していない場合の住宅ローン返済中の物件を相続した場合は、返済義務の対象となるのか?について解説します。
冒頭でもご説明したように相続では、原則プラスの財産もマイナスの財産も相続人が引き継ぐことになります。しかし、住宅ローンを相続した場合では、相続の方法によって住宅ローンを引き継がなくてもよいケースがあります。相続の方法には以下の3通りがあり、相続人がいずれかの方法を選択することができます。

①単純承認

内容 手続き
全ての財産(プラス財産もマイナス財産)を引き継ぐ 特になし

単純承認を選択した場合は相続人が引き続きローンの返済義務を負います。

②限定承認

内容 手続き
プラスの財産の範囲でマイナス財産を引き継ぐ 3ヶ月以内に相続人全員で家庭裁判所に申述

限定承認はプラスの財産がマイナスの財産より多いか少ないか分からないときに用いられる方法です。プラスの財産が多い場合は、マイナス財産を超えた部分の財産を引き継ぐことができます。限定承認はプラスの財産を引く継ぐ可能性があるのですが、共同相続人全員で家庭裁判所に申述しなければならないため、1人でも反対する相続人がいると、この方法を取ることができないのが選択しにくい点です。

③相続放棄

内容 手続き
全ての財産(プラス財産もマイナス財産)を引き継がない 3ヶ月以内に各相続人が単独で家庭裁判所に申述

相続放棄は、はじめから相続がなかったものとされるため、マイホームを手放すことになりますが、住宅ローンの返済義務を負うこともありません。相続放棄は単独で行うことができます。 ただし、相続人が複数人いる場合に1人が相続放棄すると、残りの相続人が相続分に応じてプラス財産とマイナス財産の両方を引き継ぐことになるので注意が必要です。

②の限定承認と③の相続放棄は、相続があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ所定の手続きを行わないと単純承認したものとみなされます。

単純承認で住宅ローンを相続する場合の手続き

相続人が単純承認を選択して住宅ローンを引き続き返済する場合は、借り入れ中の金融機関等への手続きが必要になります。相続人が複数人いる場合には、返済能力のある一人を決めて返済することになります。
手続きは、住宅金融支援機構のケースでは、「相続届」に以下の必要書類を添えて提出して行います。

【添付書類】
・法定相続人全員の戸(除)籍謄本または抄本等の写し
・住宅ローンを相続したことを証する書類(遺産分割協議書の写し、家庭裁判所の調停書の写し等。なお、遺産分割協議書の写しには、相続人全員の印鑑証明書を添付)
・その他、各金融機関等で必要な書類
※住宅金融支援機構のサイトを参考

相続により住宅ローン返済中の物件を引き継いだ場合でも、相続の方法によりその後の住宅ローンの扱いが異なります。相続の方法によっては手続きに期限が設けられています。期限つきの方法を選択する場合は、期限内に手続きをするように気を付けましょう。

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