住宅ローン選びのポイント

金利の上昇見通しから固定期間選択型や全期間固定型などの固定金利タイプの住宅ローンの人気が上昇しています。
変動金利型の住宅ローンは、基準金利が上がるといずれ毎月・毎年の返済額も増加します。固定期間選択型なら固定期間の間、全期間固定型なら借り入れの全期間、返済額は変わりません。
低金利のうちに借りておけば、金利上昇後も返済額を低く抑えておくことが可能です。そうした点が人気の理由のようです。

住宅ローンの基礎知識

住宅本舗 編集部

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流れは一気に逆転

図表1は、住宅金融支援機構の「民間住宅ローン利用者の実態調査」による住宅ローン利用者の金利タイプの推移です。数百件のサンプルにもとづく調査ですが、傾向は把握できます。

調査結果を見る限り、2008年9月のリーマンショック以降変動金利型の利用者の割合が増加しました。2012年10月は、同月中に借り入れた人の6割弱が変動金利型でした。不況による金利低下から返済額の少なくなる変動金利型に人気が集まったからです。キャンペーン金利ですが、1%以下の住宅ローンも登場しました。

変動金利型は、6ヵ月に1回適用金利を見直します。他の金利タイプに比べて適用金利の固定期間が短いため住宅ローンの中では、金利がもっとも低くなります。金利が年1%の変動金利型の場合、2千万円を25年返済で借りて、返済期間中金利がまったく変わらなければ、総返済額は2207万円です。これでは、変動金利型に流れるのも無理はありません。

ところが、成長戦略によるデフレ脱却を掲げる安倍政権の誕生で流れが変わります。2012年12月の内閣発足後から固定期間選択型や全期間固定型などの固定金利タイプを選択する人が増え、2013年の8月には、固定金利タイプを選ぶ人が全体の3分の2近くまで上昇しました。流れが一気に逆転してしまったのです。

固定金利タイプが増加しているのは、理由があります。成長戦略が成功すれば、金利は上がると多くの人が判断しているからです。変動金利型は、金利上昇とともに適用金利も上がり返済額が増えます。固定期間選択型または全期間固定型なら一定の返済期間内または全返済期間内、増加しません。先行き金利上昇見通しが逆転の流れを作ったのです。

金利だけではない住宅ローン選びの方法

動向を傍から見ていると金利に振り回される利用者の姿が嫌でも目に浮かびます。住宅購入は、人生最大の買物。住宅ローンの返済も長期間にわたり、家族や人生のあり方を長期間拘束します。借入後を考えると、住宅購入という「大事業」を金利だけで決めてよいのか疑問に思えます。

金利以外の住宅ローンの選び方も冷静に考える必要があります。
(1)金利タイプの種類と特徴
(2)住宅ローンのリスク
(3)住宅ローン選びのポイント
の3つの視点から「金利だけではない住宅ローンの選び方」を考えたいと思います。

住宅ローンの金利は、変動金利型と固定期間選択型と全期間固定型の3タイプあります。

変動金利型は、6ヵ月ごとに適用金利が見直されます。見直しは、返済完了まで行われます。

固定期間選択型は、あらかじめ固定金利の適用期間を決め、適用期間後に変動金利に切り替わります。

全期間固定型は、契約時の金利が返済終了まで適用されます。

一般に住宅ローンには、3つのリスクがあります。
(1)金利変動リスク
(2)生命のリスク
(3)火災のリスク
の3つです。

金利変動リスクは、適用金利の変動に伴う返済額の変動のことです。変動金利型は当然ですが、固定期間選択型も変動金利移行後はこの金利変動リスクにさらされます。

生命のリスクは、返済中に借入本人が亡くなり残債の返済が困難になることです。残された家族で返済ができればよいのですが、そうはいきません。このリスクをカバーするために団体信用生命保険があります。団信が借入本人に代って返済してくれます。

火災リスクは、火災でマイホームそのものが失われる可能性です。消失した家屋を建て直すには費用がかかります。この費用をカバーするのが火災保険です。住宅ローンは、返済完了まで対象物件に火災保険を付けることが義務づけられる場合が一般的です。

大事なのは「変わらない」こと

住宅ローンの金利タイプを決める前によく考えてほしいことがあります。

1つは、「借入後」のことです。もう1つは、金利変動リスクは「誰が負担するのか」ということです。

金利タイプを比較するとき、つい月々の返済額の違いばかりに目がいきます。しかし、「借入後」を考えた場合、大事なことは返済額の多寡ではなく、返済額が変わらないことです。下の図表2は、3タイプの総返済額の違いを単純にイメージ化したものです。

全期間固定型は、借入時に全期間の金利が確定します。最後まで当初に確定した毎月・毎年の返済額が変わりません。変動金利型と固定期間選択型は違います。借入時点では、将来の金利動向がわからないので、返済額がどう変化するのかわかりません。図表2の固定期間選択型と変動金利型の棒グラフはそのことを示しています。

仮に適用金利が上昇して返済額が増加した場合、一体どういうことが起こりえるでしょうか。「返済資金計画の狂いによる家計の混乱」です。収入が増えていればよいのですが、そうでなければ奥さんがパートに出る、家計支出の切り詰めなどが必要です。

それでも無理だと大変です。子どもの教育費の取り崩しや保険の解約なども必要になります。金利の上昇が続き未払い利息まで発生・増大すると、やりくりだけでは困難です。新たな借金が必要になったり、家そのものを失う事態に直面するかもしれません。家計の混乱は家庭の安定化を損ない、家族の人生も狂わせます。

毎月・毎年の返済額が変わらなければ、夫の失職などよほどの事態が起こらない限り混乱は避けられます。混乱が避けられれば、家庭の安定化を通じて家族の生活や夢が守れます。金利の低さや返済額の少なさは、負担の最小化は保証しても家庭の安定化まで保証するものではありません。

リスクを負うのは誰?

金利変動に伴うリスクは誰が負担するのでしょうか。確かに変動金利型は、借入人がリスクを負います。金利が上昇すれば自動的に返済額が増加します。

これに対して全期間固定型は、貸し手が金利変動のリスクを負います。金利が上昇しても利用者に転嫁できません。上昇に伴う損失は、自分で被るしかありません。

金利が下がっても、この構造は変わりません。変動金利型は、返済額減少の形で借入人がメリットを享受します。全期間固定型は、金利変動とは無関係なので返済額減少のメリットはありません。要するに全期間固定型は、貸し手が金利変動のメリット・デメリットをすべて受け取るしくみなのです。つまり、借り手には金利変動リスクがないということです。

全期間固定型の金利には、貸し手が引き受ける金利変動リスク分が加算されているので、変動金利型や固定期間選択型より高くなります。しかし、返済への不安と家計の混乱を避けることができるのであれば、全期間固定型の金利は決して高いものではありません。

住宅ローン選びのポイント

最後に実際の住宅ローン選びのポイントを指摘しておきます。

ポイントは、
(1)ライフサイクルから住宅ローンを考える
(2)「返せる額」で資金計画を立てる
(3)住宅ローンの金利タイプとリスクを知る
の3つです。

住宅の購入は、人生最大の買物です。ブランド・バッグの衝動買いと同列には扱えません。ポイントをしっかり押さえて検討してください。

子どもの進学や結婚、夫の定年退職など家庭のライフイベントとともに家計は変化します。住宅ローンの返済は長期にわたります。ライフサイクルをきちんとイメージして選んでください。

「金融機関が融資できる額」と「家計から無理なく返せる額」は同じではありません。ライフサイクルにもとづく収入・支出見通しを確認して、「返済終了まで無理なく返せる額」を計算しましょう。それにもとづく借入金額や返済額などの資金計画を立ててほしいと思います。

実は、借入金額が少ない、返済期間が短いなどの場合は変動金利型の方が固定金利タイプよりもよい場合もあります。これは、金利だけで判断するという一面的な見方だけで住宅ローンは決められないことを意味しています。それぞれの特徴とリスクを理解したうえで、ライフイベントや人生設計に最もマッチする住宅ローンを選ぶ視点が欠かせません。

(記事提供:ニッキンマネー 2014年3月号 p60-p63)

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