火災保険の長期契約は、ローン期間の平均に合わせて36年まで加入することができました。
しかし、2015年10月から最長でも10年の補償期間に短縮されました。
その背景と、今後、新たに長期契約の火災保険に加入する場合の方法やできるだけ安く契約するためのコツを紹介していきます。
これまでの火災保険と長期契約廃止の背景
火災保険の契約期間は、長期契約であれば最長36年までの契約が可能でした。
これは、新築住宅のローン期間を35年に設定することが多かったため、ローン支払いの終了と保険の満了を揃えた方が、火災などの事故が発生した時にローンの残債を処理しやすかったことに由来します。
しかし近年では突発的な自然災害の増加(参考資料1参照)や将来の大地震の発生確率の問題など災害の 予測をするのが難しくなり、保険会社でも将来の収支予測をしにくくなりました。
これが、10年超の契約の廃止の大きな原因です。 また、2022年度にも現行の最長10年から5年に短縮される見通しです。
<参考資料1>過去の主な風水災等による保険金の支払い
対象時期/災害名 | 支払保険金 | |
---|---|---|
1 | 2018年9月 台風21号 | 1兆678億円 |
2 | 2019年10月 台風19号 | 5,826億円 |
3 | 1991年9月 台風19号 | 5,680億円 |
4 | 2019年9月 台風15号 | 4,656億円 |
5 | 2004年9月 台風18号 | 3,874億円 |
6 | 2014年2月 雪害 | 3,224億円 |
7 | 1999年9月 台風18号 | 3,147億円 |
8 | 2018年9月 台風24号 | 3,061億円 |
9 | 2018年7月 豪雨 | 1,956億円 |
10 | 2015年8月 台風15号 | 1,642億円 |
※一般社団法人 日本損害保険協会調べ(2020 年3 月末現在)。
※支払件数、支払保険金は見込です。支払保険金は千万円単位で四捨五入を行い算出
火災保険は長期で10年、10年超の場合は”10年自動継続方式”
前述したとおり、現在火災保険は最長で10年の契約になっています。
ただし、10年ごとに保険の内容を見直すのは面倒だという場合や、内容を変えるつもりがない場合など は10年経ったら自動で契約を更新する10年自動継続方式を利用することができます。
10年自動継続方式とは? |
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更新の手続きが不要で、10年ごとに火災保険の契約が自動で継続されます。契約期間は融資期間が限度。 ※継続時に保険料が値上げしていた場合は、再計算されます。 |
この方法のメリットは、同じ内容の補償が引き続き受けられるという点です。
また、10年ごとの契約で現在最も割引率が高くなりますので(参考資料2参照)、1年更新より保険料が得になります。
保険料を長期一括払いにすることで、契約期間に応じて長期割引が適用されます。
保険期間10年の場合、長期係数は8.2となっています。これは8.2年分の保険料で、10年間の火災保険に加入できるということになります。<参考資料2>
保険期間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
長期係数 | 0.00 | 1.85 | 2.7 | 3.5 | 4.3 | 5.1 | 5.9 | 6.7 | 7.45 | 8.2 |
割引率 | なし | 7.5% | 10.0% | 12.5% | 14.0% | 15.0% | 15.7% | 16.3% | 17.2% | 18.0% |
※割引率は一例の為、全ての保険会社で同一とは限りません。
※保険料が変更になると、10年目の更新のときには変更された保険料で契約更新となります。
ただし、自動更新の限度は住宅ローンの融資期間の範囲内である必要があるため、注意が必要です。
更に、新しい補償が出ても自動継続方式をそのままにしておくとその補償を付加することができませ ん。
新しい補償内容にする場合は途中で契約期間を変更し、加入し直す必要があります。
火災保険の最長契約期間が5年に短縮された場合の影響
台風や大雨などの自然災害が多発し保険の将来的な収支予測が難しくなっているため、最長契約期間の 短縮が検討されていることは冒頭でご説明しました。では、実際契約期間が短くなることで 私たちにどのような影響があるのでしょうか。
- 更新機会が増えるため、現状の災害の状況を踏まえると、更新の度に保険料値上げの影響を 受ける可能性がある
- 長期割引の割引率が少なくなるため、総支払額が増える
- 補償内容の見直しをするタイミングが増える
火災保険の長期契約が廃止。節約できるポイントは?
火災保険の長期契約が廃止され、契約期間による割引のメリットも少なくなってしまいました。
しか し、短期の火災保険にしか入れないからと言って保険料が節約できないということはありません。
▼節約POINT1 補償の内容の見直し
更新機会が増えることで得られる一番のメリットは補償内容の見直しのタイミングが増えることと言えるでしょう。
つい勧められるがまま加入していたり、あれもこれもと特約をつけてしまいがちですが、実は補償内容 を絞り込めば保険料負担を軽くできます。 ハザードマップなどを調べると、自分の家にとって必要な補償が分かります。それに合わせて火災保険 の特約を選ぶことで、保険料を抑えつつ必要な補償を得ることができます。
▼節約POINT2 保険料を長期一括払いにする
保険料はまとめて支払う方が割引されます。月払い、年払いは1回の保険料が安く済みますが、 トータルの保険料は長期一括払いの方が安くなります。
→火災保険の年払いと長期一括払いはどっちがお得?
▼節約POINT3 免責金額を決める
免責金額とは、保険請求する際の自己負担金のことです。 免責設定は、火災、風災、家財など個別に設定できる保険商品が増えているため、 全ての補償に一定の自己負担額を定めることで、保険料を抑えることが可能です。
まとめ
一時の保険料の安さのみを優先すると、いざというときに必要となるお金を十分に確保できない可能性 もあります。自分ではどれが必要、不要な補償か分からない!と言う方は一括見積もりをして比較・検討 してみて下さい。お住まいの立地や住居構造などからアドバイザーが最適なプランを紹介します。