「トルコリラは金利が高いから、持っているだけでスワップが貯まると聞いた。ただ検索すると『死亡』という言葉も一緒に出てくる。何がどう危ないのかを数字で知りたい」
こういった疑問に答えます。
トルコリラ円のスワップ運用で起きているのは、拍子抜けするほど単純な引き算です。ヒロセ通商が2026年7月22日に公表した値で計算すると、10万通貨を買いで持ったときの受取は1日240円、365日で87,600円。ところが10万通貨は為替が1円動けば10万円動く玉なので、この87,600円はレートが0.876円下がった時点で消えます。「死亡」と呼ばれているのは金利の高さではなく、受け取る金利差より為替の下落幅のほうが大きくなりうるという、この関係のことです。
高金利通貨をまとめて見比べてから絞り込みたい方は、高金利通貨5種類を比較した記事に取扱状況を整理しています。トルコリラ円を扱う会社の条件を先に確認しておきたい方は、主要FX会社の比較ページもあわせてご覧ください。
| 項目 | 数値 | 出所と時点 |
|---|---|---|
| トルコの政策金利(1週間物レポ金利) | 37.00% | 2026年1月23日から適用。2026年7月23日の金融政策委員会で据え置き |
| トルコの消費者物価指数(前年同月比) | 32.11% | 2026年6月時点。データの出所はトルコ統計局 |
| 政策金利から物価上昇率を引いた差 | 4.89ポイント | 上の2つから計算 |
| 日本の政策金利との差 | 36.00ポイント | 日本は1.0%程度(2026年6月16日決定) |
| ヒロセ通商のトルコリラ/円 買いスワップ | 3日分で7.2円(1Lot=1,000通貨) | 2026年7月22日更新の公表値 |
| 10万通貨を買いで持った場合の受取 | 1日240円、365日で87,600円 | 上の公表値から換算 |
| その受取と釣り合うレートの下落幅 | 0.876円 | 10万通貨は1円の変動で10万円動くため |
| トルコリラ/円の公的なレート統計 | 掲載なし | 日本銀行の外国為替市況はドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円の3つのみ |
※2026年7月時点で確認できた数値です。スワップは日々変動し、受取が支払いに転じることもあります。政策金利も動くため、最新の水準は各社と各中央銀行の公式サイトで確認してください。
「死亡」と呼ばれているのは金利の話ではなく、受取と含み損の引き算のこと
まず、この言葉が何を指しているのかを分解しておきます。
スワップ運用の損益は2本立てになっています。毎日受け取る金利差と、決済するまで確定しない為替差損益。前者は買い方向なら基本的にプラスで積み上がり、後者はレートの向き次第で符号がひっくり返ります。
口座画面での見え方も2枚に分かれます。毎日少しずつ増えるスワップの累計と、その裏で膨らんでいるかもしれない含み損。片方だけを追っていると、実態を取り違えます。
「死亡」という言い方が生まれるのは、この2枚を足し合わせた合計がマイナスに沈む場面があるからです。増えている数字のほうが毎日目に入るぶん、引き算の側が視界から外れやすい。
私はこの言葉を、単なる煽りだとは思っていません。ただし危ないのは通貨そのものではなく、受取額と下落幅を同じ土俵に置かないまま数量だけを増やす置き方のほうです。
政策金利37.00%からインフレ率32.11%を引くと、残るのは4.89ポイント
金利の水準そのものは、中央銀行の公表値で確認できます。
トルコの政策金利は1週間物レポ金利で37.00%。2026年1月23日から適用されています(トルコ共和国中央銀行「1 Week Repo」)。2026年7月23日の金融政策委員会でも37パーセントの据え置きが決まり、オーバーナイト貸出金利40パーセント、オーバーナイト借入金利35.5パーセントも維持されました(トルコ共和国中央銀行「MPC Meeting Decisions」)。
日本の政策金利は1.0%程度なので、名目の差は36.00ポイント。数字だけを並べれば圧倒的です。
ここで一緒に見ておきたいのが物価のほう。トルコ共和国中央銀行の統計によると、消費者物価指数の前年同月比は2026年6月時点で32.11%、データの出所はトルコ統計局です(トルコ共和国中央銀行「Inflation Data」)。
37.00%から32.11%を引くと、残るのは4.89ポイント。名目金利の高さが、そのまま購買力の増加を意味するわけではないということです。
日本語で同じ水準を確かめたい方向けに、外為どっとコムも2026年6月時点の政策金利としてトルコ37.00%を掲載しています(外為どっとコム「金利差調整額『スワップポイント』」)。中央銀行の公表値と一致しているので、和文の裏取りとして使えます。
高い金利は通貨が強いことの証明ではなく、資金を引き留める必要があるという状況の表れであることも珍しくない。数字の大きさだけで判断すると、この背景が抜け落ちます。
10万通貨の年間受取87,600円は、0.876円の下落と釣り合っている
ここから実額の計算に入ります。
ヒロセ通商は、スワップの実数を静的なページに載せている数少ない会社です。2026年7月22日更新の一覧では、トルコリラ/円の買いが3日分で7.2円、売りが3日分でマイナス8.7円、付与単位は1Lot=1,000通貨と明記されています(ヒロセ通商「LION FXスワップポイント」)。
公表値が3日分なので、1日あたりは7.2円を3で割って2.4円。10万通貨は100Lotにあたるため、1日240円という計算になります。
試算の前提は次の4つです。
- 保有するのはトルコリラ/円の10万通貨、買い方向のみ
- 口座に入れる資金は100万円
- 2026年7月22日のスワップ水準が1年間そのまま続くと仮定する
- 1年を365日とし、祝日によるロールオーバーの増減は考慮しない
240円に365日を掛けると87,600円。資金100万円に対して8.76%にあたります。
問題はここからです。10万通貨は、レートが1円動けば10万円動く玉。87,600円を10万で割ると0.876円になります。
つまり1年かけて受け取る金額と、レートが0.876円下がったときの含み損が、ちょうど同じ大きさで釣り合うということ。下落幅ごとに1年間のトータルを並べます。
| レートの下落幅 | 為替の含み損 | 年間スワップ | 合計 | 資金100万円に対して |
|---|---|---|---|---|
| 0円(変動なし) | 0円 | 87,600円 | 87,600円 | 8.8% |
| 0.5円 | -50,000円 | 87,600円 | 37,600円 | 3.8% |
| 0.876円 | -87,600円 | 87,600円 | 0円 | 0.0% |
| 1円 | -100,000円 | 87,600円 | -12,400円 | -1.2% |
| 2円 | -200,000円 | 87,600円 | -112,400円 | -11.2% |
| 3円 | -300,000円 | 87,600円 | -212,400円 | -21.2% |
| 5円 | -500,000円 | 87,600円 | -412,400円 | -41.2% |
「0.876円くらいなら誤差の範囲では」と思うかもしれません。実際にトルコリラ円が過去1年でどれだけ動いたかは、この記事には書きません。日本銀行の外国為替市況にトルコリラ円の掲載がなく、公的統計で裏づけられないからです。
書けるのは、損益分岐点がどこにあるかという位置までです。そこから先の判断材料は、自分の口座のチャートで確かめてください。
保有を10年に伸ばしても、耐えられる下落幅は8.76円までしか伸びない
「長く持ち続ければ、いずれ下落ぶんを追い越すのでは」という考え方があります。ここも掛け算だけで確かめられます。
| 保有年数 | スワップ累計(1日240円で計算) | 釣り合う下落幅 |
|---|---|---|
| 1年 | 87,600円 | 0.876円 |
| 2年 | 175,200円 | 1.752円 |
| 3年 | 262,800円 | 2.628円 |
| 5年 | 438,000円 | 4.380円 |
| 10年 | 876,000円 | 8.760円 |
10年持ち続けても、耐えられる下落幅は8.76円まで。年0.876円ずつしか増えていかない、というのが正確な言い方です。
しかも右列は、今のスワップ水準が10年そのまま続いた場合の数字。この前提は、かなり強い仮定だと思います。
金利は動きます。トルコの1週間物レポ金利は2024年3月22日の50.00%をピークに、2025年1月24日45.00%、7月25日43.00%、12月12日38.00%と段階的に下がり、2026年1月23日に37.00%となりました。政策金利が下がればスワップも下がる方向に働くため、この表は上限に近い想定として見ておくのが安全でしょう。
時間は味方にもなりますが、同時に敵にもなります。受取が積み上がっていくのと並行して、大きな下落に遭遇する機会も増えていくからです。
資金100万円で10万通貨ならロスカットは起きにくく、含み損だけが残る
では、資金100万円で10万通貨という置き方はどのくらいの重さなのか。
必要証拠金は取引金額の4%以上と決まっています。外為どっとコムは個人の必要保証金を「基準レート×1,000通貨×保証金率(4%)」で算出し、基準レートは前々週木曜から当週水曜の終値のうち最も高いレートを使って通貨ペアごとに毎週算出すると公表しています(外為どっとコム「取引通貨ペア・必要保証金」)。
仮にトルコリラ/円を4.00円と置くと、10万通貨の取引金額は40万円、必要証拠金は1万6,000円。資金100万円に対する証拠金維持率は6,250%、実効レバレッジは0.4倍という計算になります。
ヒロセ通商のロスカットは有効比率100%割れで、追証制度はありません(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)。必要証拠金を一定と置いてこの水準まで計算すると、許容できる含み損は98万4,000円、下落幅にして9.84円ぶんになります。
仮定したレートが4.00円なのに、9.84円下がるまで耐えられる。レートがゼロに近づいても、計算上は強制決済に届きません。
ここが、トルコリラのスワップ運用の分かりにくいところです。強制決済で一気に退場するのではなく、決済しないまま含み損を抱え続ける形になりやすい。
損失が確定していないことは、損失がないことではありません。ロスカットが働かないなら、引き際は自分で決めるしかないということ。
利回りは仮定レート次第で14.6%から29.2%まで動く
お気づきの方もいるかもしれませんが、ここまでの計算で私は4.00円という仮定レートを置きました。
理由は単純で、トルコリラ円のレートを公的統計で裏づけられないからです。日本銀行の外国為替市況に掲載されている通貨ペアは、ドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円の3つだけ(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。トルコリラ円は対象外です。
仮定を変えると、利回りの見え方も変わります。
| 仮定レート | 10万通貨の取引金額 | 必要証拠金(4%) | 年87,600円の元本利回り | 0.876円は元本の何%か |
|---|---|---|---|---|
| 3.00円 | 300,000円 | 12,000円 | 29.2% | 29.2% |
| 3.50円 | 350,000円 | 14,000円 | 25.0% | 25.0% |
| 4.00円 | 400,000円 | 16,000円 | 21.9% | 21.9% |
| 4.50円 | 450,000円 | 18,000円 | 19.5% | 19.5% |
| 5.00円 | 500,000円 | 20,000円 | 17.5% | 17.5% |
| 6.00円 | 600,000円 | 24,000円 | 14.6% | 14.6% |
利回りは14.6%から29.2%まで、仮定次第でおよそ2倍の幅で動きます。「結局いくらなのか」と言いたくなるところですが、ここは正直に書きます。実勢レートは各社の取引画面で確認するしかなく、この記事で断定はできません。
ただし、左右の2列を見比べてください。仮定をどこに置いても、元本利回りと「1年分の受取が消える下落率」が完全に一致しています。
一致するのには理由があります。年間受取を元本で割った値と、年間受取ぶんの下落幅を元本で割った値は、定義上まったく同じ数字になるからです。言い換えると、利回り20%のスワップ運用とは、元本の20%ぶん下落すると1年分が消える運用のことにほかなりません。
利回りの高さと、下落に対する弱さは、別々の性質ではなく同じ数字の裏表。ここを押さえると、高金利通貨の広告の見え方が変わってくると思います。
売りは年105,850円の支払いになり、買いも税引後は年69,804円まで減る
方向を間違えたときの重さも確かめておきましょう。
ヒロセ通商の公表値では、トルコリラ/円の売りが3日分でマイナス8.7円。1日あたりマイナス2.9円で、10万通貨なら1日290円の支払いになります。
365日では105,850円の支払い。買いの受取87,600円と比べると、年18,250円、1日あたり50円の差があります。
円高を見込んでトルコリラ円を売る場合、この支払いを毎日負担しながら値幅を取りにいく形になります。同じ通貨ペアを買いと売りで同時に持つ設計でも、この差はそのまま毎日の目減りとして効いてきます。
税金の扱いも見落とされがちな点です。FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になり、税率は所得税15%、地方税5%、これに復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加わって合計20.315%となります(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。
年87,600円の受取に20.315%を掛けると17,796円。手元に残るのは69,804円で、下落幅に直すと0.698円ぶんです。
税引前で0.876円だった損益分岐点が、税引後では0.698円まで縮む。約2割ぶん、耐えられる幅が短くなる計算になります。
トルコリラのスワップ運用で口座開設前に迷いやすい質問
引き算の構造はここまでで見えたと思います。あとは細部です。つまずきやすい5点に答えます。
トルコリラのスワップで「死亡」と言われるのはなぜですか?
スワップの受取より為替の下落幅のほうが大きくなり、合計でマイナスになる場面があるからです。
ヒロセ通商の公表値で計算すると、10万通貨の年間受取は87,600円。これはレートが0.876円下がるだけで相殺される金額です。毎日増える数字だけを見ていると、この引き算が視界から外れます。
トルコリラ10万通貨で年間いくら受け取れますか?
2026年7月22日のヒロセ通商の水準が1年続くと仮定した場合、87,600円です。1日240円を365日ぶん積み上げた金額になります。
ただしスワップは日々変動し、政策金利が下がれば下がる方向に動きます。この金額が保証されているわけではありません。
資金100万円で10万通貨ならレバレッジは何倍ですか?
仮にレートを4.00円と置くと、取引金額は40万円なので実効レバレッジは0.4倍。1倍を下回ります。
証拠金維持率は6,250%となり、ヒロセ通商の有効比率100%割れという水準までは9.84円ぶんの余裕。強制決済はまず起きませんが、そのぶん自分で損切りを決める必要があります。
トルコの政策金利が下がるとスワップはどうなりますか?
減る方向に働きやすくなります。ただし比例はしません。
会社が提示する金額は市場金利やカバー取引のコストを反映したもので、政策金利の変更幅がそのまま転嫁されるわけではないためです。金利が今後どう動くかについては、この記事では予想しません。
トルコリラ円のレートは今後どうなりますか?
予想しません。将来のレートを当てにいく記事ではないからです。
書けるのは、政策金利が37.00%でインフレ率が32.11%であること、そしてその水準のスワップが年87,600円にあたることまで。この2つを見比べて、どこまで持てるかを自分で決めるための材料としてお使いください。
トルコリラで確かめるべきなのは金利の高さではなく、下落幅との釣り合い
ここまで見てきたとおり、トルコリラのスワップ運用は計算そのものが難しいわけではありません。難しいのは、毎日入ってくる数字と、決済するまで確定しない数字を同じ土俵に並べて眺め続けることのほうです。
- 10万通貨の年間受取は87,600円で、レートが0.876円下がると相殺される
- 保有を10年に伸ばしても、耐えられる下落幅は8.76円までしか伸びない
- 資金100万円ならレバレッジ0.4倍でロスカットは起きにくく、含み損が残り続ける形になる
- 政策金利37.00%からインフレ率32.11%を引くと、残るのは4.89ポイント
- 税引後の受取は69,804円で、損益分岐点は0.698円まで縮む
数量と資金の組み合わせを変えると、この関係はまるごと変わります。同じ高金利通貨でも取引単位と政策金利が違うメキシコペソについては、メキシコペソのスワップ運用を検証した記事でロスカットまでの距離と受取額の関係を計算しました。こちらと並べて読むと、通貨ごとの違いが見えやすくなります。

