「FXで人生が終わった、有り金を全部溶かしたという話をよく見かける。あれは実際に起きていることなのか、それとも大げさに書かれているだけなのか」
こういった疑問に答えます。
預けた資金を超える損失が実際に発生した日は、業界団体が件数と金額まで公表しています。金融先物取引業協会の集計では、2019年1月3日の1日だけで6,598件・9億4,300万円。一方で2026年6月の不足金は0件・0円でした。大損は毎日どこかで起きている現象ではなく、特定の日に一斉に起きています。そして自分の側で決められるのは、その日が来る前に1回の損失をいくらまでにしておくかという設計だけです。
損失を限定する設計は、ロスカット水準や最小取引単位といった口座側の条件にも左右されます。各社の条件を先に眺めておきたい方は主要FX会社の比較ページを開いてから読み進めてください。
| 論点 | この記事の答え |
|---|---|
| 大損の実データはあるか | 金融先物取引業協会が不足金の件数と金額を日付単位で公表している |
| 件数が最も多かった日 | 2019年1月3日の6,598件・9億4,300万円 |
| 金額が最も大きかった日 | 2015年1月15日の1,229件・33億8,800万円 |
| 1件あたりの不足金 | 約14万円(2019年1月3日)から約276万円(2015年1月15日) |
| 平常月の水準 | 2026年6月は0件・0円、2026年3月でも26件・28万1千円 |
| ロスカットで止まるか | 水準どおりに執行されても証拠金以上の損失が生じうると協会が明記 |
| 資金100万円の設計手順 | 1回の許容損失額を先に決め、損切り幅で割って数量を出す |
| 許容損失1%と5%の差 | 損切り幅50pipsなら数量は20,000通貨と100,000通貨で5倍 |
| 連敗の想定 | 金額を固定した計算では、5%の設計は20連敗で資金がゼロ |
人生終了と呼ばれる状態は、業界の集計に件数と金額で残っている
金融先物取引業協会は、相場が急変した日に会員各社で発生した未収金を集計して公表しています。未収金とは、ロスカット等のあとに損失が顧客の預託額を超えてしまい、会社が回収できずに残った金額のこと。「預けた資金を失ったうえで、さらに請求が残った」件数がそのまま並んでいる資料です。
公表されているのは4回分あります(金融先物取引業協会「ロスカット等未収金発生状況」)。金額の単位は資料の見出しどおり百万円なので、ここでは円に直して並べます。
| 発生日 | 曜日 | 資料が名指ししている通貨 | 件数 | 金額 | 1件あたりの平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2015年1月15日 | 木曜 | スイスフラン | 1,229件 | 33億8,800万円 | 約275万6,713円 |
| 2015年8月24日 | 月曜 | 南アフリカランド/円、米ドル/円等 | 4,999件 | 9億1,900万円 | 約18万3,837円 |
| 2019年1月3日 | 木曜 | 記載なし | 6,598件 | 9億4,300万円 | 約14万2,922円 |
| 2021年3月22日 | 月曜 | トルコリラ/円 | 3,458件 | 13億8,100万円 | 約39万9,364円 |
1件あたりの平均は、公表されている合計金額を合計件数で割った値です。協会はこの数字自体を公表していないため、右端の列はこの記事での計算になります。
読み方をひとつ。件数が最も多かった2019年1月3日は1件あたり約14万円で、件数が最も少なかった2015年1月15日は約276万円。約19.3倍の開きがあります。
大損という言葉は金額の大きさを指しますが、公表データに現れているのは2種類の日です。多くの口座が十数万円規模の不足金を出す日と、少数の口座が桁の違う不足金を出す日。同じ「急変日」でも、中身がまるで違います。
2015年1月15日は内訳も出ています。個人1,137件・19億4,800万円に対し、法人92件・14億4,000万円。1件あたりに直すと個人が約171万3,281円、法人が約1,565万2,174円で、約9.1倍の差がつきました。現在の証拠金規制でも、個人が取引金額の4%以上(レバレッジ25倍以下)と一律に定められているのに対し、法人には一律の上限がなく、通貨ペアごとに算出した証拠金率を週1回以上見直す方式が採られています(金融先物取引業協会「法人店頭FX取引に係る証拠金規制」)。個人と法人では証拠金の枠組みそのものが違うため、1件あたりの金額を同じ物差しで並べることはできません。
どういう手順でこの状態に近づくのかはFXの失敗談に学ぶ初心者の敗因と対策で類型ごとに整理しています。数字の前に行動のパターンを押さえたい方はそちらから読んでください。
未収金が出た4日は、通貨と曜日に偏りがある
4つの日付を並べると、共通点が見えてきます。まず通貨のほうから。
2015年1月15日の資料は表題が「スイスフランの相場変動に係るロスカット等未収金発生状況」。2015年8月24日には「早朝に南アフリカランド/円、夜間に米ドル/円等の相場変動により未収金が発生」、2021年3月22日には「トルコリラ/円の相場変動により未収金が発生」という注記が付いています。通貨名の記載がないのは2019年1月3日だけで、名指しされた3回にはいずれも米ドル/円以外の通貨が含まれています。
次に曜日です。2015年1月15日と2019年1月3日は木曜、2015年8月24日と2021年3月22日は月曜でした。半分が週明けの最初の営業日にあたります。
この曜日は、FX会社の注意書きにも登場します。外為どっとコムはロスカットの注意点として「月曜オープン時の相場の急変動により、ロスカットレベルを大幅に下回りロスカットが執行されてしまった際に、お客様の口座に不足金が発生する可能性があります」と明記しています(外為どっとコム「ロスカットルールと注意点」)。
土日は取引ができません。その間に出た材料は、週明けの最初の値段にまとめて反映されます。ポジションを持ったまま週末を越すというのは、値が飛びうる時間帯を、注文を出せない状態で通過するということ。
なお2015年8月24日には、もう1つ「日付は営業日ベース(8月24日早朝6時頃から25日早朝6時頃まで)」という注記も添えられています。24時間動く市場なので、日付の区切り方そのものが暦の1日とずれている点も頭に入れておいてください。
平常月の不足金は0件の月もあり、桁が変わるのは急変日だけ
同じ協会が、未収金の発生口座数を月次でも公表しています。こちらの単位は千円です。
直近では2026年6月が0件・0円、2026年3月でも26件・28万1千円でした。2025年8月も0件・0円です(金融先物取引業協会「ロスカット等未収金発生口座数(月次・速報)」)。
急変日の数字と突き合わせると、桁の違いが見えます。2019年1月3日の1日が6,598件・9億4,300万円、2026年3月の1か月が26件・28万1千円。件数で約254倍、金額で約3,356倍です。
つまり「FXは危ない」でも「FXは安全」でもありません。公表データが示しているのは、平常時はほとんど起きないけれど、起きる日は一斉に起きるという非対称のほうです。
この非対称が厄介なのは、平常時の感覚で数量を決めてしまうから。何か月も何事もなく回っていると、その数量が正しいという確認を毎日もらっているような気分になります。データの上では、確認されていたのは平常時の相場のほうだけです。
ロスカットは損失の上限を約束する仕組みではない
誤解が多いところなので、公的資料の言葉をそのまま引きます。
金融先物取引業協会はロスカットルールについて「実際の損失はロスカット水準より大きくなる場合が考えられます。また、ルール通りにロスカット取引が行われた場合であっても、相場の状況によっては顧客から預かった証拠金以上の損失の額が生じることがあります」と説明しています(金融先物取引業協会「ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付け」)。同じページのリスク管理体制の留意事項にも、証拠金を上回る損失が発生する可能性を排除するものではない旨が書かれています。
会社側の記載も同じ方向を向いています。ヒロセ通商はLION FXの取引要綱で「追証制度はありません。入金金額以上の損失が発生し、不足金がでた場合は、発生から三営業日以内にお支払いいただく必要があります」と定めています(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)。追証制度がないことと、不足金が出ないことは別の話ということ。
なお、この2社の記載は2026年7月時点で確認したものです。取引条件は変更されるため、最新の内容は各社の公式サイトで確認してください。
ロスカット水準そのものの計算方法と、水準の違いが値幅に生む差はFXのロスカットの計算と強制決済を防ぐ資金設計で分解しました。数量を決める前に、自分の口座がどちらの基準なのかは押さえておいてください。
損失に上限を作れるのは制度ではなく、自分が出す注文のほうです。ここから資金100万円で、その上限をどう作るかを数字で組みます。
資金100万円は、1回の許容損失を決めてから数量を逆算する
前提を固定します。米ドル/円のレートは日本銀行が公表した2026年7月21日17時時点の162.59円台(日本銀行「外国為替市況(日次)」)、証拠金率は取引金額の4%、口座資金は100万円、損切り幅は0.50円(クロス円の1pipsは0.01円なので50pips)、スプレッドとスワップポイントはゼロとした試算です。必要証拠金は建玉時のレートで固定して計算しており、実際には各社が定める基準レートで再計算されます。
順番はひとつだけ。1回の取引で失ってよい金額を先に決め、それを損切り幅で割る。出てきた数が数量になります。
| 1回の許容損失 | 損失額 | 数量 | 必要証拠金 | 建てた直後の維持率 | 実効レバレッジ |
|---|---|---|---|---|---|
| 資金の0.5% | 5,000円 | 10,000通貨 | 6万5,036円 | 約1,537.6% | 約1.63倍 |
| 資金の1% | 1万円 | 20,000通貨 | 13万72円 | 約768.8% | 約3.25倍 |
| 資金の2% | 2万円 | 40,000通貨 | 26万144円 | 約384.4% | 約6.50倍 |
| 資金の3% | 3万円 | 60,000通貨 | 39万216円 | 約256.3% | 約9.76倍 |
| 資金の5% | 5万円 | 100,000通貨 | 65万360円 | 約153.8% | 約16.26倍 |
同じ100万円、同じ損切り幅なのに、数量は10,000通貨から100,000通貨まで10倍の幅があります。自分で決めたのは「1回いくらまで失うか」だけ。
注意したいのは最下段です。許容損失5%は数字として穏やかに見えますが、必要証拠金は65万360円に達し、建てた直後の維持率は約153.8%しか残りません。損切りが働く前にロスカットのほうが近い、という置き方になっています。
私の考えでは、100万円の口座で現実的なのは1%(1万円)か2%(2万円)まで。3%を超えると、この表のとおり維持率のほうが先に苦しくなります。
「もっと大きく張らないと増えない」と思うかもしれません。増える速度は確かに落ちます。ただしこの表で決まるのは増え方ではなく、間違えたときに次があるかどうかのほうです。
損切りを置かないと、失う額は数量が決めてしまう
同じ前提のまま、損切り注文を置かずロスカットまで持ち続けた場合を計算します。ロスカット水準は有効比率100%割れ、つまり有効証拠金が必要証拠金を下回った時点で執行されるものとしました。
| 数量 | 必要証拠金 | ロスカットまでの値幅 | 到達する米ドル/円 | 執行時に確定する損失 | 資金に対する比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20,000通貨 | 13万72円 | 約43.50円 | 約119.09円 | 約86万9,928円 | 約87.0% |
| 40,000通貨 | 26万144円 | 約18.50円 | 約144.09円 | 約73万9,856円 | 約74.0% |
| 60,000通貨 | 39万216円 | 約10.16円 | 約152.43円 | 約60万9,784円 | 約61.0% |
| 100,000通貨 | 65万360円 | 約3.50円 | 約159.09円 | 約34万9,640円 | 約35.0% |
| 150,000通貨 | 97万5,540円 | 約0.16円 | 約162.43円 | 約2万4,460円 | 約2.4% |
一見すると、数量が多いほど損失額は小さくなっています。150,000通貨なら約2万4,460円で済む計算です。
ただし到達する値幅を見てください。150,000通貨のロスカット価格は約162.43円で、建てた値段から16銭しか離れていません。米ドル/円が16銭動くのは、平常時でも数分の出来事です。
数量を増やすと、1回あたりの損失額は小さくなる代わりに、その損失が確定する頻度が跳ね上がる。有り金を溶かしたという結果にたどり着く経路は、1回の巨大な損失だけではありません。この構造で繰り返される小さな損失の合計でも、行き着く先は同じです。
そして急変時には、この表の損失額も当てになりません。ロスカットは水準に触れた時点で発注されるだけで、その価格での約定を約束する仕組みではないからです。前章で引いた協会の記載は、まさにこの点を指しています。
連敗を想定しないと、許容損失率は決められない
1回あたりの損失を決めるとき、もうひとつ入れるべき変数があります。何連敗まで口座を生き残らせたいか、という数字です。
| 1回の許容損失 | 1回の損失額 | 10連敗後の残高 | 20連敗後の残高 | 20連敗後(定率で計算) |
|---|---|---|---|---|
| 資金の1% | 1万円 | 90万円 | 80万円 | 約81万7,907円 |
| 資金の2% | 2万円 | 80万円 | 60万円 | 約66万7,608円 |
| 資金の3% | 3万円 | 70万円 | 40万円 | 約54万3,794円 |
| 資金の5% | 5万円 | 50万円 | 0円 | 約35万8,486円 |
中央の2列は、最初の100万円を基準に損失額を固定した場合の計算。右端は、減ったあとの残高に対して毎回同じ比率をかけた場合の計算です。実際の運用は後者に近くなりますが、金額を固定したまま続ける人も多いので両方を出しました。
読んでほしいのは最下段です。許容損失を5%にすると、金額を固定した計算では20連敗で資金がゼロになります。勝率や手法を語る前に、この設計は20回外したら終わるということ。
一方で1%なら、20連敗しても80万円が残ります。取り返す機会が残っているかどうかは、相場観ではなくこの割り算のほうで決まっています。
「20回も連続で外すものだろうか」と思うかもしれません。連敗の起こりやすさは手法によって変わりますが、確率を推定しなくても、20回外れても続けられる設計にしておけば済む話です。
自己破産まで調べている段階なら、調べる順番を変えたほうがいい
検索の言葉には「fx破産」「自己破産」といった語も並びます。ここは正直に書きます。
法的な手続きの要件や影響は、収入・資産・借入の内容といった個別の事情で結論が変わるため、この記事では扱いません。弁護士や司法書士、法テラスのような窓口に早い段階で相談してください。匿名の体験談を読み込む前に、専門家の判断を取ることです。
制度上の位置づけだけ補っておきます。登録を受けた業者との取引であれば、個人は取引金額の4%以上の証拠金が必要でレバレッジは25倍以下、業者側にはロスカットルールの設定義務と顧客資産の信託による分別管理義務がかかります。これらは、FX取引が金融商品取引法上のデリバティブ取引に該当し、業として行うには金融商品取引業の登録が必要だという枠組みの上に乗った規制です(金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」)。
このうち顧客証拠金の区分管理は、2010年2月1日から信託に一本化されました。ロスカットルールの整備・遵守が個人顧客と取引する全業者に義務づけられたのも同じ日です(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。信託による区分管理は、会社が破綻したときに預けた証拠金を守るための制度であって、自分の取引で出た不足金を消す制度ではありません。この2つは混同されやすいので、分けて覚えてください。
FXの大損について調べた人が、最後に確かめる5つの疑問
数字と制度はここまでで揃いました。とはいえ、細かい部分で引っかかったままの点があるはずです。検索で多い5つに答えます。
FXで人生が終わったという話は、どこまで本当ですか?
公表データで確認できるのは、預けた資金を超える不足金が実際に発生していることと、その件数と金額までです。そのあと生活がどうなったかを示す統計は見当たりません。
確認できる範囲でいうと、2019年1月3日は6,598件で1件あたり約14万2,922円でした。金額の大きさは口座の設計によって上下します。結果を決めるのは相場そのものより、入れた資金と建てた数量の関係のほうです。
FXで100万円を溶かすことはありますか?
あります。この記事の試算では、資金100万円で20,000通貨を持ち、損切りを置かずにロスカットまで待った場合の損失は約86万9,928円でした。
ただしそれは、損切りを置かなかった場合の数字。1回の許容損失を1%(1万円)と決めて損切りを置けば、1回で失う額は1万円に固定されます。同じ資金でも、先に決めているかどうかで結果が変わります。
大損したあと立ち直れないときは、何から手をつけますか?
まず建玉をゼロにして、入金をいったん止めることです。判断が乱れている状態で取り返しにいくと、数量が大きくなる方向にしか働きません。
不足金の請求や借入が絡む場合は、自分で返済計画を立てる前に専門の窓口へ相談してください。金額と期限が確定していない状態では、次の判断そのものが立ちません。
FX会社が破産したら、預けたお金はどうなりますか?
国内の登録業者では、顧客から預かった証拠金の区分管理が2010年2月1日から信託銀行等への金銭信託に一本化されています。会社の資産とは分けて管理される仕組みです。
ただしこれは会社側の破綻に備えた制度であって、自分の取引で生じた損失や不足金には関係しません。ここを混同すると、資金設計そのものを誤ります。
損切り幅と数量は、どちらを先に決めますか?
1回の許容損失額が先、損切り幅が次、数量は最後です。数量から決めると、失う金額を相場が決めることになります。
資金100万円で許容損失を1%、損切り幅を0.50円にすれば、数量は20,000通貨に自動的に決まります。迷う余地がないところまで先に固定しておくのがコツ。
損失を限定する設計は、ポジションを建てる前にしか作れない
ここまでに出てきた数字のうち、自分で動かせるものはひとつしかありません。相場の急変が起きるかどうかではなく、その日に自分が何通貨持っているかのほうです。
- 金融先物取引業協会が公表する未収金は、件数最多が2019年1月3日の6,598件・9億4,300万円、金額最大が2015年1月15日の33億8,800万円
- 平常月は0件の月もあり、2026年3月でも26件・28万1千円。桁が変わるのは急変日だけ
- 協会はルール通りにロスカットが行われても証拠金以上の損失が生じることがあると明記している
- 資金100万円・損切り幅50pipsなら、許容損失1%で20,000通貨、5%で100,000通貨と5倍の差になる
- 金額を固定した計算では、5%の設計は20連敗で資金がゼロ、1%なら80万円が残る
今日建てる予定の数量を、損切り幅で掛け算してみてください。その金額を20回続けて失っても口座が残るなら、設計としては合格ラインに乗っています。
不足金がどういう条件で発生し、会社ごとに扱いがどう違うのかはFXで借金地獄になる仕組みと追証・借金を防ぐ設定で条件別に整理しました。請求が残る側の話まで確認しておくと、数量を決める手が自然に止まります。

