法人が暗号資産を保有すると、購入時だけでなく、交換、手数料支払い、期末評価でも会計処理が生じます。売却していないから仕訳が不要とは限りません。
まず保有目的と市場の有無を確認し、会計上の評価と法人税上の区分を分けて記録することが重要です。
法人口座の対応状況や取扱銘柄は、暗号資産取引所17社の比較ページで整理されています。
| 場面 | 基本となる確認 |
|---|---|
| 取得 | 取得時の円換算額と付随費用 |
| 交換 | 手放した資産と得た資産の時価 |
| 売却 | 売却価額と帳簿価額の差 |
| 決算 | 活発な市場の有無と期末価格 |
期末評価は活発な市場の有無で分かれる
企業会計基準委員会の実務対応報告第38号は、活発な市場が存在する暗号資産を期末の市場価格で評価し、帳簿価額との差額を当期損益とする処理を示しています。活発な市場がない場合は取得原価を基礎とし、処分見込価額が取得原価を下回るときに差額を損失とします。
「上場している」だけで機械的に判断せず、継続的に価格情報が得られ、十分な取引量があるかを確認します。日本公認会計士協会千葉会の資料も、法人税上の期末評価と翌期の洗替処理を整理しています。
取得から売却までの仕訳例
たとえば暗号資産を100万円で取得し、手数料1万円を取得原価へ含める方針なら、帳簿価額は101万円です。その後120万円で売却し、売却手数料1万円がかかった場合は、差額18万円が損益計算の出発点になります。
| 取引 | 借方の例 | 貸方の例 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 現金で取得 | 暗号資産101万円 | 現預金101万円 | 約定履歴、手数料 |
| 別銘柄へ交換 | 取得した暗号資産 | 手放した暗号資産、交換損益 | 両銘柄の時価 |
| 現金で売却 | 現預金119万円 | 暗号資産101万円、売却益18万円 | 約定履歴 |
| 期末評価 | 暗号資産または評価損 | 評価益または暗号資産 | 期末価格 |
国税庁の暗号資産FAQは、法人の取得価額や期末評価に関する税務上の取扱いを示しています。実際の勘定科目は会計ソフトや会社の方針で異なりますが、数量と円換算額が追跡できる補助簿は必要です。
会計と税務の区分は同じとは限らない
会計上の評価損益が、そのまま法人税の益金または損金になるとは限りません。国税庁の法人税基本通達で、市場暗号資産の区分、譲渡制限、自己発行暗号資産などの条件を確認します。
決算時に時価評価益が300万円計上されても、現金が300万円増えるわけではありません。納税資金を別に確保する必要があります。会社法に基づく計算書類の作成という会計目的と、課税所得を算定する税務目的を混同しないことが大切です。
決算前にそろえる資料
決算日の直前に履歴を集めると、ウォレット間移動を売買と誤認しやすくなります。月次で次の資料を保存します。
- 取引所ごとの残高証明とCSV
- 自己管理ウォレットのアドレスと残高
- 約定日時、数量、円換算額、手数料
- 期末価格に採用した市場と時刻
- 活発な市場の有無を判断した根拠
価格取得方針と端数処理を毎期変更すると比較しにくくなります。変更する場合は理由と影響額を記録してください。
暗号資産の会計処理に関するよくある質問
暗号資産を買っただけで利益を計上しますか?
取得時には通常、支払額を基礎に暗号資産を資産計上します。ただし、法人が決算日に保有する場合は、実務対応報告第38号に沿って活発な市場の有無を判定し、期末評価差額を損益へ計上する可能性があります。購入時と決算時を分けて考えてください。
期末価格はどの取引所の価格を使いますか?
会社が通常利用する市場、取引量、継続的な価格入手可能性を踏まえ、合理的な価格取得方針を定めます。都合のよい価格を毎年選び直すのではなく、採用市場、時刻、レートの種類を会計方針として残し、例外があれば理由を記録します。
個人事業主も法人と同じ時価評価ですか?
同じとは限りません。国税庁の暗号資産FAQでは個人所得と法人税の取扱いが分けて説明されています。個人の事業に関連する取引でも、法人向けの市場暗号資産の期末評価規定をそのまま当てはめず、所得区分と棚卸資産該当性を確認します。
会計方針と税務区分を決算前に固定する
暗号資産の会計処理は、数量管理、期末価格、税務区分を同時に整えると再計算しやすくなります。売却の有無だけで処理を決めないことが要点です。
- 活発な市場がある暗号資産は期末時価評価が基本です。
- 会計上の評価と法人税上の区分は別に確認します。
- 交換取引でも円換算額と損益を記録します。
- 残高証明とウォレット履歴を月次で照合します。
法人保有全体の判断材料は、法人で暗号資産を保有するメリットと注意点でも確認できます。

