「スワップは金利差で決まると聞いた。でも各国の金利がいくらで、それが自分の受取額とどうつながるのかが見えない」
こういった疑問に答えます。
FXの金利とは、突き詰めれば各国の中央銀行が決めている政策金利のこと。ただし「政策金利」という言葉が指す中身は国ごとに違い、日本は無担保コールレートの誘導目標、米国はフェデラルファンド金利の誘導目標レンジ、ユーロ圏は預金ファシリティ金利です。そして金利差から単純計算した理論値は、実際に受け取れる金額と一致しません。米ドル/円1万通貨で計算すると、理論値が1日約117円なのに対し、ヒロセ通商の公表値は160円。この差がどこから来るのかまで含めて整理します。
付与のタイミングから先に押さえたい方は、スワップがいつ付くかをまとめた記事を読んでおくと日数の数え方で迷いません。金利の高い通貨を扱っている会社を先に見ておきたい方は、主要FX会社の比較ページで取扱通貨ペアを確認できます。
| 国・地域 | 中央銀行 | 政策金利と呼ばれているものの正式名称 | 数値 | 決定日または適用日 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 日本銀行 | 無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標 | 1.0%程度 | 2026年6月16日決定、6月17日以降適用 |
| 米国 | FRB | フェデラルファンド金利の誘導目標レンジ | 3.50〜3.75% | 2026年6月17日に据え置き |
| ユーロ圏 | ECB | 預金ファシリティ金利 | 2.25% | 2026年6月17日から適用 |
| トルコ | トルコ共和国中央銀行 | 1週間物レポ金利 | 37.00% | 2026年1月23日から適用、7月23日に据え置き |
| メキシコ | メキシコ銀行 | 翌日物銀行間金利の誘導目標 | 6.50% | 2026年6月25日に据え置き |
| 南アフリカ | 南アフリカ準備銀行 | レポ金利 | 7% | 2026年7月に据え置き(月内の日付は非公表) |
※2026年7月26日時点で各中央銀行が公表している数値です。金利は会合ごとに変わるため、最新の水準は各中央銀行の公式サイトで確認してください。この記事で使うスワップの実額も2026年7月時点の公表値であり、金額は日々変動して受け取りが支払いに転じることもあります。
政策金利という一語の中身は、中央銀行ごとに別物になっている
上の表でいちばん見てほしいのは、数値ではなく3列目です。同じ「政策金利」と訳されていても、対象になっている金利の種類がばらばらだということ。
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、短期金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ0.25%ポイント引き上げました(日本銀行「金融市場調節方針の変更(2026年6月金融政策決定会合)」)。誘導目標という言い方のとおり、これは銀行同士が翌日物で資金をやり取りするレートをその水準で推移するよう促す方針であって、固定された金利ではありません。
米国も同じく誘導目標ですが、単一の値ではなく幅で示されます。FRBは2026年6月17日のFOMCで、フェデラルファンド金利の誘導目標を3.50〜3.75%に据え置きました(FRB「Federal Reserve issues FOMC statement(2026年6月17日)」)。0.25%ポイントの幅があるということは、日米金利差も幅を持つということです。
ユーロ圏はさらに事情が違います。ECBは3つの主要金利を同時に公表しており、2026年7月26日時点では預金ファシリティ金利2.25%、主要リファイナンスオペ金利2.40%、限界貸付ファシリティ金利2.65%がいずれも2026年6月17日から適用されています(ECB「Key ECB interest rates」)。どれを政策金利と呼ぶかで0.4ポイント動く。ユーロの金利を語る記事を読むときは、どの金利の話かを確かめる必要があります。
新興国側も名称が異なります。トルコは1週間物レポ金利が37.00%で、2026年1月23日から適用(トルコ共和国中央銀行「1 Week Repo」)。メキシコは翌日物銀行間金利の誘導目標が6.50%(メキシコ銀行「Monetary policy statement, Press release June 25, 2026」)、南アフリカはレポ金利が7%です(南アフリカ準備銀行「Statement of the Monetary Policy Committee(2026年7月)」)。
数値を並べるだけなら簡単ですが、比べているものが同じ性質かどうかは別問題。ここを飛ばすと、金利差の計算が最初からずれます。
スワップの向きは金利差の符号で決まり、金額は元本と日数で決まる
仕組み自体は単純です。金利の高い通貨を買って持てば差額を受け取り、売って持てば差額を払う。
日本の1.0%と米国の3.50〜3.75%なら、米ドルを買って円を売る側が受け取り、逆向きが支払いになります。日本語で同じ数値を確認したい方向けに、外為どっとコムも2026年6月時点の政策金利としてトルコ37.00%、メキシコ6.50%、南アフリカ7.00%、日本1.00%を掲載しています(外為どっとコム「金利差調整額『スワップポイント』」)。
ここまでは教科書どおり。問題は、この金利差から出した理論値が実額と合わないことです。
金利差から出した理論値とヒロセ通商の実額は、1日あたり37円以上ずれる
実際に計算してみます。日本銀行の外国為替市況によると、2026年7月21日17時時点の米ドル/円は162.59円台でした(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。1万米ドルの円換算元本は162万5,900円になります。
これに日米の金利差を掛け、365で割ったものが理論値です。米国側は誘導目標に幅があるため、下限・中心・上限の3通りで出します。
| 米国側の金利 | 日本との差 | 年間の理論値 | 1日あたりの理論値 |
|---|---|---|---|
| 3.50%(下限) | 2.50ポイント | 4万647円 | 111.36円 |
| 3.625%(中心) | 2.625ポイント | 4万2,680円 | 116.93円 |
| 3.75%(上限) | 2.75ポイント | 4万4,712円 | 122.50円 |
理論値は1日111円から122円の範囲。ところがヒロセ通商が2026年7月22日に公表した米ドル/円のスワップは、3日分で買い48円・売り57円の支払い、1Lot=1,000通貨あたりの表示です(ヒロセ通商「LION FXスワップポイント」)。3で割って1万通貨に直すと、買い160円、売り190円の支払いになります。
買いの実額160円は、理論値の上限122.50円すら37.50円上回っています。この160円を年換算すると58,400円で、元本162万5,900円に対する利回りは約3.59%。政策金利差2.625%より0.97ポイント高い計算です。
売り側も見ておきます。1日190円の支払いは年69,350円で、利回り換算4.27%。買いと売りの中値は1日175円、年換算3.93%で、そこから上下15円ずつ、年0.34%ぶんが会社側の取り分にあたります。
つまり買いと売りの帯そのものが、政策金利差より上に浮いている。差の理由として考えられるのは、政策金利があくまで誘導目標であって実際の資金の受け渡しは市場金利で行われること、会社はカバー取引で調達したコストをもとに提示していること、そしてヒロセ通商の値が2026年7月22日という1日の切り出しであるのに対し政策金利は会合日時点の水準であることです。ただし内訳がどうなっているかは、公表資料からは特定できません。
ここは正直に書きます。金利差からスワップを予測することはできず、できるのは「桁が合っているか」を確かめることまでです。
金利差が大きい通貨ほど受取額が大きい、という順番は成立しない
もうひとつ、金利差の話で必ずずれるのが順位です。政策金利差とヒロセ通商の受取額を並べてみます。
| 通貨ペア | 対円の政策金利差 | 買い1日(1万通貨) | 買い365日 | その受取を金利差だけで生む円換算元本 |
|---|---|---|---|---|
| トルコリラ/円 | 36.00ポイント | 24円 | 8,760円 | 約2万4,333円 |
| 南アフリカランド/円 | 6.00ポイント | 14円 | 5,110円 | 約8万5,167円 |
| メキシコペソ/円 | 5.50ポイント | 14円 | 5,110円 | 約9万2,909円 |
| 米ドル/円 | 2.625ポイント | 160円 | 58,400円 | 約222万4,762円 |
| ユーロ/円 | 1.25ポイント | 75円 | 27,375円 | 約219万円 |
金利差の順位は上から下へ小さくなるのに、受取額の順位はほぼ逆さまです。金利差が36ポイントもあるトルコリラ/円の受取が、2.625ポイントしかない米ドル/円の6分の1にも届きません。
種明かしは右端の列です。金利差はあくまで率であって、金額になるには元本を掛けなければなりません。そして1万通貨の円換算額は、通貨によって桁ごと違います。トルコリラが米ドルに金利差で14倍近く勝っていても、掛ける元本の側で何十分の一まで落ちれば、出てくる金額は逆転する。
右端の数字は、その受取額を政策金利差だけで生むために必要な円換算元本を逆算したものです。米ドル/円は約222万円と出ましたが、実際の1万通貨は約162万円。実額のほうが理論より大きいことが、ここでも確認できます。ほかの通貨ペアについては公的統計に対円レートの掲載がないため、自分の口座で1万通貨の円換算額を出して右端と比べてみてください。
同じ金額を受け取りたいなら、そろえるべきは通貨量ではなく円換算の元本。この視点が抜けると、高金利通貨の枚数だけが増えていきます。
金利が動けばスワップも動くので、今の数値は前提であって約束ではない
政策金利は据え置きが続くこともあれば、連続して動くこともあります。直近の動きを見ておきましょう。
メキシコ銀行の公表日一覧によれば、2025年11月6日に0.25%ポイント引き下げ、12月18日にも引き下げ、2026年2月5日は7.00%で据え置き、3月26日と5月7日に引き下げ、そして6月25日に6.50%で据え置きとなりました(メキシコ銀行「Monetary policy announcements」)。1年足らずで1ポイント前後下がっている計算です。
トルコはもっと大きく動いています。1週間物レポ金利は2024年3月22日の50.00%をピークに、2025年1月24日45.00%、3月7日42.50%、4月18日46.00%、7月25日43.00%、9月12日40.50%、10月24日39.50%、12月12日38.00%、そして2026年1月23日に37.00%へと推移しました。下げ一本調子ではなく、2025年4月には引き上げも挟んでいます。2026年7月23日の金融政策委員会でも37%の据え置きが決まっています(トルコ共和国中央銀行「MPC Meeting Decisions」)。
米国も同じです。FRBの記録では、直近の変更は2025年12月11日の0.25%ポイント引き下げで、3.75〜4.00%から3.50〜3.75%になりました。2026年に入ってからの変更はありません(FRB「Open Market Operations」)。
2ポイント動けば、1万米ドルなら年3万2,518円ぶんの受け払いが変わる計算になります。今日の数値で1年後を試算することはできますが、それは仮定であって約束ではありません。この記事でも先行きの金利を予想することはしません。
政策金利の高さは、その国のインフレとセットで見ないと意味を取り違える
「トルコの37%はすごい」と感じるかもしれません。ここで同時に見るべきなのが物価です。
トルコ共和国中央銀行の統計によると、消費者物価指数の前年同月比は2026年6月時点で32.11%。データの出所はトルコ統計局です(トルコ共和国中央銀行「Inflation Data」)。政策金利37.00%との差は4.89ポイントしかありません。
南アフリカも同じ視点で見られます。南アフリカ準備銀行は2026年6月のヘッドラインインフレを5.0%と公表し、インフレ目標を3%、許容幅をプラスマイナス1%ポイントとしています。政策金利7%との差は2ポイントです。
名目の金利が高い国は、物価の上昇率も高いことが多い。金利の高さは通貨の強さの証明ではなく、むしろ資金を引き留める必要があるという状況の表れであることも珍しくありません。数字の大きさだけで通貨を選ぶと、この背景が視野から落ちます。
金利の変更日は事前に分かるので、カレンダーで先に押さえておく
金利は突然変わるものではなく、会合の日程はあらかじめ公表されています。
南アフリカ準備銀行は2026年7月の声明で、次回の公表を2026年9月23日と明示しました。委員6名のうち4名が据え置き、2名が0.25%ポイントの引き上げを支持したという内訳も公表されています。日本銀行も年間の公表物を一覧で整理しており、2026年の金融市場調節方針の変更が6月16日で直近であることを確認できます(日本銀行「金融政策に関する決定事項等(2026年)」)。
スワップを目的に長く持つなら、決済のタイミングより会合の日程のほうが重要になる場面があります。会合日程の追い方や、金利以外の指標との関係は経済指標カレンダーの見方をまとめた記事で整理しました。
とはいえ、日程が分かることと結果が分かることは別。予想を当てにいくのではなく、変わりうる日を知っておくという使い方が現実的です。
FXの金利について口座を開く前によく調べられる質問
金利とスワップの関係は、細部でつまずきやすいところ。検索でよく見かける5つに答えます。
政策金利が上がるとスワップも増えますか?
方向としては増えやすくなりますが、比例はしません。この記事で見たとおり、米ドル/円は政策金利差2.625ポイントに対して実額の利回りが約3.59%と、1ポイント近く上に乖離していました。
会社が提示する金額は市場金利とカバー取引のコストを反映したもの。政策金利の変更幅がそのまま受取額に転嫁される、とは考えないほうが安全です。
金利差が大きい通貨を買えば必ず得ですか?
得とは言えません。金利差が36ポイントあるトルコリラ/円でも、1万通貨あたりの受取は1日24円で、米ドル/円の160円に届きません。
さらに、受け取る金利差より為替の値動きのほうが大きくなる局面もあります。金利差は損益の一部でしかない、と考えてください。
ポーランドズロチの政策金利はいくらですか?
この記事では書きません。ポーランド国立銀行の金利ページを開こうとしたところアクセスを拒否され、数値を確認できなかったためです。
ズロチ/円を扱っている会社があること自体は確認できています。金利の数値が必要なら、ポーランド国立銀行の公式サイトで直接確かめてください。
金利差から自分でスワップを計算できますか?
概算はできます。円換算元本に金利差を掛けて365で割る、という手順です。ただし出てくるのは目安であって、実額とは一致しません。
用途としては、口座の一覧に表示された数字の桁が合っているかを確かめる検算に向いています。予測には使えません。
日本の金利が上がるとスワップはどうなりますか?
円を売る側で持っているなら、受け取る差額は縮む方向に働きます。日本銀行は2026年6月16日に誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。
この0.25ポイントは、1万米ドルの元本162万5,900円なら年4,065円、1日あたり約11円ぶんに相当します。今後の金利については予想しませんが、動けば受取額も動くという点だけは前提にしておいてください。
金利は受取額の出発点であって、受取額そのものを決めてはいない
ここまで見てきたとおり、政策金利はスワップの向きを決めますが、金額まで決めてはいません。名称も水準も国ごとに違い、実額との間には無視できない開きがあります。
- 政策金利の中身は国ごとに別物で、日本は無担保コール、米国はFF金利の誘導目標レンジ、ユーロ圏は預金ファシリティ
- 米ドル/円1万通貨の理論値は1日111円から122円だが、ヒロセ通商の実額は買い160円で上に乖離している
- 買い160円と売り190円の中値からの上下15円、年0.34%ぶんが会社側の取り分にあたる
- 金利差36ポイントのトルコリラ/円より、2.625ポイントの米ドル/円のほうが受取額は大きい
- トルコは政策金利37.00%に対しインフレ率32.11%で、名目の高さだけでは判断できない
金利の側から水準を押さえたら、次は会社の側です。公表単位も日数も期間もばらばらな各社の数値をどうそろえるかを国内主要口座のスワップポイントを比較した記事にまとめたので、自分の口座の数字を並べ直すときに使ってみてください。

