「ローソク足の名前は一通り覚えた。それでも実際のチャートを開くと、どれが大陽線でどれがコマなのか判断できない。ヒゲが長いと言われても、どこからが長いのか分からない」
こういった疑問に答えます。
ローソク足の判定は、感覚ではなく比率の計算です。高値から安値までを全長とし、実体がその何パーセントを占めるかを出せば、形の名前は後からついてきます。実体が全長の70%以上なら大陽線か大陰線、実体30%以下で片側のヒゲが60%以上ならカラカサかトウバ。この2つの数字を決めておくだけで、判定は他人と共有できる基準になります。そして分解した実体やヒゲは、そのままpipsと金額に直せます。
チャートの読み方が固まってきたら、その形をどの口座で実際に発注するかも並行して考えておくと無駄がありません。取引単位やスプレッドの実数値は主要FX会社の比較ページにまとめてあります。
| 形の名前 | 実体が全長に占める比率 | 上ヒゲ | 下ヒゲ | 本数 |
|---|---|---|---|---|
| 大陽線 | 70%以上(終値が始値より上) | 15%以下 | 15%以下 | 1本 |
| 大陰線 | 70%以上(終値が始値より下) | 15%以下 | 15%以下 | 1本 |
| コマ | 30%未満 | 25%以上 | 25%以上 | 1本 |
| カラカサ | 30%以下 | 10%以下 | 60%以上 | 1本 |
| トウバ | 30%以下 | 60%以上 | 10%以下 | 1本 |
| 包み足 | 2本目の実体が1本目の実体を上下とも越える | 条件に含めない | 条件に含めない | 2本 |
| はらみ足 | 2本目の実体が1本目の実体の内側に収まる | 条件に含めない | 条件に含めない | 2本 |
※比率の境界値(70%・30%・60%など)は、判定を数値で共有できるように私が置いた基準です。業界で統一された定義ではないため、自分のチャートに合わせて調整して構いません。
ローソク足1本が持っている情報は、始値・高値・安値・終値の4つだけ
まず出発点を確認します。ローソク足は「一定期間の相場の4本値(始値、高値、安値、終値)を用いて一本の棒状の足を生成したもの」であり、実体と上ヒゲ・下ヒゲの3つの部分から成ります(マネックス証券「ローソク足の基礎」)。
始値より終値が高ければ陽線、低ければ陰線。色の割り当てはチャートソフトによって変わりますが、判定に使うのは色ではなく数字の大小のほうです。
この4つの数字は四本値と呼ばれます。始値はその時間の始まりの価格、終値はその時間の終わりの価格であり、移動平均線をはじめ多くのテクニカル指標は終値を基準に算出されます(OANDA証券 用語集「四本値」)。
つまりローソク足は、期間内に起きた無数の値動きを4つの数字に圧縮したものです。「その4つ以外の情報は入っていない」という当たり前の事実を押さえておくと、読み過ぎを防げます。
指標の分類の中でも、ローソク足の分析は独立した1カテゴリとして扱われています。マネックス証券はテクニカル指標をトレンド分析・オシレーター分析・フォーメーション分析・ローソク足分析・その他の5つに整理しており、ローソク足はどの計算式にも依存しない生データの読み方として並んでいます(マネックス証券「テクニカル指標一覧」)。
指標そのものの位置づけや、テクニカル分析が機能する範囲と限界についてはテクニカル分析の役割と限界をまとめた記事で先に整理しています。
実体とヒゲは、全長に対する比率で数えると判定がぶれない
ここからが本題です。4本値が分かれば、次の4つはすべて引き算で出せます。
- 全長 = 高値 − 安値
- 実体 = 始値と終値の差の絶対値
- 上ヒゲ = 高値 − 始値と終値のうち高いほう
- 下ヒゲ = 始値と終値のうち低いほう − 安値
そして「全長 = 実体 + 上ヒゲ + 下ヒゲ」が必ず成り立ちます。この等式が合わないなら、どこかの数字を取り違えたということ。
なぜ絶対値ではなく比率で見るのかというと、絶対値は時間足と相場の状況で桁が変わってしまうからです。1分足の30pipsと日足の30pipsでは、同じ数字でも意味がまるで違う。比率にそろえておけば、どの時間足でも1つのものさしで比べられます。
「大陽線かどうか」を人に説明できる形にするには、この比率を先に決めてしまうのが早い。冒頭の表で70%や60%という数字を置いたのは、そのためです。
4本値を1万通貨の金額に直すと、ヒゲ1本が数千円の攻防だと分かる
比率だけでは実感が湧きにくいので、金額に換算します。前提を先に置きます。米ドル/円は1pips=0.01円で、1万通貨なら1pips=100円。基準レートは日本銀行が公表した2026年7月21日17時時点の162.59円台とし、そこから上下に置いた仮の4本値を使います(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。
まず大陽線から。始値162.300円、高値162.780円、安値162.260円、終値162.740円と置きます。
| 部位 | 計算 | 値幅 | 1万通貨での金額 | 全長比 |
|---|---|---|---|---|
| 全長 | 162.780 − 162.260 | 52.0pips | 5,200円 | 100% |
| 実体 | 162.740 − 162.300 | 44.0pips | 4,400円 | 84.6% |
| 上ヒゲ | 162.780 − 162.740 | 4.0pips | 400円 | 7.7% |
| 下ヒゲ | 162.300 − 162.260 | 4.0pips | 400円 | 7.7% |
実体比率84.6%、上下のヒゲはどちらも15%以下。冒頭の表の条件に照らせば大陽線と判定できます。
次にカラカサ。始値162.600円、高値162.630円、安値162.320円、終値162.590円で計算します。
| 部位 | 計算 | 値幅 | 1万通貨での金額 | 全長比 |
|---|---|---|---|---|
| 全長 | 162.630 − 162.320 | 31.0pips | 3,100円 | 100% |
| 実体 | 162.600 − 162.590 | 1.0pips | 100円 | 3.2% |
| 上ヒゲ | 162.630 − 162.600 | 3.0pips | 300円 | 9.7% |
| 下ヒゲ | 162.590 − 162.320 | 27.0pips | 2,700円 | 87.1% |
実体はわずか100円ぶん、下ヒゲは2,700円ぶん。1万通貨を持っていた人から見れば、いったん2,700円の含み損を抱えてから、ほぼ元の位置まで戻された1本ということになります。
同じ要領で残りの形も出しました。
| 形 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 実体 | 上ヒゲ | 下ヒゲ | 実体比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 大陰線 | 162.740 | 162.760 | 162.240 | 162.300 | 44.0pips/4,400円 | 2.0pips/200円 | 6.0pips/600円 | 84.6% |
| コマ | 162.500 | 162.640 | 162.380 | 162.530 | 3.0pips/300円 | 11.0pips/1,100円 | 12.0pips/1,200円 | 11.5% |
| トウバ | 162.400 | 162.700 | 162.380 | 162.420 | 2.0pips/200円 | 28.0pips/2,800円 | 2.0pips/200円 | 6.2% |
トウバは全長32.0pipsのうち28.0pipsが上ヒゲ。金額でいえば2,800円ぶん上に伸びてから、そのほぼ全部を戻したという記録です。
ちなみに1万通貨という数量は、口座によって数え方が変わります。ヒロセ通商のLION FXは1Lot=1,000通貨が基本なので10Lotぶん、DMM FXの通常コースは取引単位が10,000通貨なのでちょうど1単位ぶんにあたります(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」、DMM FX「サービス概要」)。※2026年7月時点。最新の条件は各社の公式サイトで確認してください。
下ヒゲの長いカラカサは「戻された跡」であって、上昇の約束ではない
ここは大事なので、はっきり書きます。カラカサが出たから上がる、という因果関係を示す一次資料を私は確認できていません。
言えるのは、下ヒゲ27.0pipsという記録が残ったという事実だけです。期間中にいったん162.320円まで売られ、終値は162.590円まで戻った。この足だけから分かるのは、安値圏で買い戻しが入ったという過去の事実であって、次の1本がどちらへ行くかではありません。
「では読む意味がないのでは」と思うかもしれません。そんなことはなくて、意味があるのは価格のほうです。162.320円という安値は、その時間帯に売りが尽きた場所として記録に残ります。次にその価格帯へ戻ってきたとき、同じ攻防が起きるかどうかを観察する材料になる。ここまでが、ローソク足1本から取り出せる情報の限界です。
プライスアクションという言葉も、この範囲で使うのが正確だと思います。指標の計算を挟まず、値動きそのものを根拠にする読み方。それ以上の予測力を含んだ言葉として使うと、途端に検証できない話になります。
包み足とはらみ足は、2本目の実体が1本目の実体を越えるか収まるかで決まる
2本の組み合わせに進みます。判定に使うのは実体だけで、ヒゲは条件に入れません。
包み足の例を置きます。1本目が陰線で始値162.520円・終値162.450円、2本目が陽線で始値162.440円・終値162.560円。1本目の実体は162.450円から162.520円までの7.0pips、2本目の実体は162.440円から162.560円までの12.0pipsです。
2本目の実体の下端162.440円は1本目の下端162.450円より下、上端162.560円は1本目の上端162.520円より上。上下とも越えているので包み足が成立します。金額でいえば、2本目の実体は1万通貨で1,200円ぶん。
はらみ足は逆向きの条件です。1本目が陽線で始値162.300円・終値162.560円(実体26.0pips、2,600円)、2本目が陰線で始値162.500円・終値162.400円(実体10.0pips、1,000円)。2本目の実体が1本目の実体の内側に完全に収まっています。
この2つは、言葉で覚えるより不等式で覚えたほうが確実です。
- 包み足 = 2本目の実体下端 ≦ 1本目の実体下端 かつ 2本目の実体上端 ≧ 1本目の実体上端
- はらみ足 = 2本目の実体下端 ≧ 1本目の実体下端 かつ 2本目の実体上端 ≦ 1本目の実体上端
包み足は「動きが広がった」、はらみ足は「動きが縮んだ」という記録。それ以上でもそれ以下でもありません。なお、3本以上を使って作られる大きな図形はローソク足の組み合わせとは別の話になるので、チャートパターンの一覧をまとめた記事のほうで扱っています。
実体抜けは、終値が前の足の実体を越えたかどうかという1行の条件
検索でよく出てくる「実体抜け」も、定義してしまえば単純です。私は次のように置いています。
当足の終値が、直前の足の実体の上端(または下端)を越えて確定すること。ヒゲが越えただけでは成立とみなさない。
先ほどの包み足の例で確かめます。1本目の実体上端は162.520円、2本目の終値は162.560円。4.0pips、1万通貨で400円ぶん上に抜けて確定したので、実体抜けが成立しています。
なぜ終値で判定するのかというと、途中の価格は最終的に残らないからです。高値162.590円をつけていたとしても、終値が162.510円で終われば実体抜けは成立しません。四本値のうち、指標の計算に採用されるのは終値であるという性質とも整合します。
この「終値で確定したか」という判定は、あとで出てくるどの読み方にも共通する土台になります。逆に言えば、ここを決めないまま「抜けた」と言い出すと、同じチャートを見ている2人の結論が食い違います。
同じ形でも、時間足が変われば実体の絶対値は桁ごと変わる
最後に時間足の話。冒頭の表は比率で書いてあるので、1分足でも日足でもそのまま使えます。ただし金額のほうは、まったく違うものになる。
4時間足は4時間分の値動きをまとめた足で、1日に6本しか形成されません(松井証券「FXの取引で使われる4時間足とは」)。単純に考えれば、4時間足1本の値幅は1分足240本分の値動きを1本に畳んだものということ。
先ほどのカラカサは全長31.0pips、1万通貨で3,100円でした。同じ形が1分足で出たなら全長は数pipsということもありえますし、日足なら100pipsを超えることもあります。形の名前は同じでも、口座に及ぶ金額は10倍以上変わるわけです。
だからこそ、形を見つけたら必ず全長をpipsに直し、自分の通貨量で金額にしてから判断してください。「きれいなカラカサが出た」と「1万通貨で3,100円ぶん振れた1本が出た」は、同じ事実の別の言い方です。後者のほうが、次に何をすべきか決めやすいはずです。
FXのローソク足と実体・ヒゲについて、判定に迷いやすい疑問
比率で判定するという型はここまでで揃いました。とはいえ、実際のチャートに当てると細かい迷いが出てきます。よく調べられている4つに答えます。
陽線と陰線の色は会社によって違いますか?
違います。始値より終値が高い場合が陽線、低い場合が陰線という定義は共通ですが、陽線を白で描くソフトも赤で描くソフトもあります(マネックス証券「ローソク足の基礎」)。
色で覚えると、チャートソフトを変えたときに読み間違えます。始値と終値の大小で判定する癖をつけておくほうが安全。
宵の明星のような3本の組み合わせは、どう判定すればよいですか?
宵の明星は3本で構成される形として広く紹介されていますが、実体やヒゲの比率まで数値で定めた公式の一次資料を、私は確認できませんでした。
そのため、この記事では自分で条件を置く方法をおすすめしています。たとえば「1本目が実体比率70%以上の陽線、2本目の実体が1本目の実体の20%以下、3本目が実体比率70%以上の陰線」といった形で数値化すれば、少なくとも判定は再現できます。名前を先に覚えるより、条件を先に書くほうが実務的です。
ヒゲが長い足が出たら、その方向に入るべきですか?
そう判断できる根拠を、私は持っていません。ヒゲの長さは「いったんそこまで動いて戻された」という過去の記録であり、次の値動きを示すものではないからです。
使えるのは、ヒゲの先端がついた価格のほう。その価格帯で攻防が起きたという事実は、次に同じ水準へ来たときの観察材料になります。方向を決めるサインとしてではなく、価格の目印として扱ってください。
何本くらいのローソク足を表示して見ればよいですか?
決まった正解はありません。ただし本数を変えると、同じ形でも目立ち方が変わるという点は意識しておく価値があります。
実務的には、まず判定に使う時間足を1つに固定し、その時間足で全長が何pipsになるかを数回計算してみるのが早いです。自分の通貨量で許容できる金額と、その時間足の平均的な全長が釣り合っているかを先に確かめておくと、時間足選びの基準ができます。
平均足はローソク足と何が違うのですか?
始値と終値を計算で置き換えている点が違います。通常のローソク足が実際の4本値をそのまま描くのに対し、平均足は前の足の値を混ぜた値を使うため、実際に取引された価格とは一致しません。
その加工のぶん、連続した足の色がそろいやすくなります。ただし、この記事で扱ってきた実体とヒゲの比率による判定は、加工前の4本値を前提にした読み方です。平均足の実体を同じ基準で測ると、意味が変わってしまう点には注意してください。
ローソク足は形の名前ではなく、4つの数字の比率で読むもの
ローソク足の学習でつまずくのは、名前の暗記から入ってしまうからだと思います。先に比率の計算を身につければ、名前は結果として後からついてきますし、判定の理由を人に説明できるようになります。
- ローソク足が持つ情報は始値・高値・安値・終値の4つだけで、それ以外は入っていない
- 全長=実体+上ヒゲ+下ヒゲが必ず成立する。合わなければ数字の取り違え
- 判定は絶対値ではなく比率で行う。実体70%以上で大陽線、片側ヒゲ60%以上でカラカサやトウバ
- 分解した値幅は1万通貨なら1pips=100円で換算できる。全長52.0pipsは5,200円ぶんの振れ
- 包み足とはらみ足は実体だけで判定し、ヒゲは条件に含めない
形が読めるようになったら、次はその形が並んだ結果としてのトレンドをどう定義するかです。高値と安値の切り上げでトレンドを判定する枠組みはダウ理論の6原則をFXに当てはめた記事で、店頭FXに使える部分と使えない部分に分けて整理しています。

