ピボットの使い方!デイトレの反転目安になる計算値

ピボットの使い方!デイトレの反転目安になる計算値

「ピボットという指標名は見かけるけれど、R1やS2が何を計算した数字なのか分からない。ツールが自動で出してくれる線を、根拠なく信じていいのかも判断できない」

こういった疑問に答えます。

ピボットは、前日の高値・安値・終値という3つの数字だけから作られる水準です。予測要素は入っておらず、四則演算だけで7本の線が決まります。この記事では前日高値163.40円・安値162.10円・終値162.85円と置き、P・R1・R2・R3・S1・S2・S3を式どおりに手で計算します。ただし計算式には複数の流儀があり、しかも「前日」の区切りが変われば7本すべてがずれる点は先に知っておいてください。

ピボットの表示可否や四本値の区切りはツールごとに違います。チャート機能を横並びで比べたい方は、主要FX会社の比較ページで各社の仕様を確認できます。

水準この記事で使う計算式役割の位置づけ
R32×P−2×前日安値+前日高値上方向のいちばん外側
R2P+(前日高値−前日安値)上方向の2番目
R12×P−前日安値上方向の最初の目安
P(ピボット)(前日高値+前日安値+前日終値)÷3中心。当日の基準値
S12×P−前日高値下方向の最初の目安
S2P−(前日高値−前日安値)下方向の2番目
S32×P−2×前日高値+前日安値下方向のいちばん外側

※R3・S3の式は、外為どっとコムがHBOP・LBOPとして公表している式と同じものです。理由は本文で計算します。

ピボットは前日の3つの数字だけで7本の線を作る指標

まず式の出どころを固定します。外為どっとコムはピボットを別名リアクション・トレンド・システムとし、前日の高値・安値・終値から計算する指標として、P・R1・R2・S1・S2・HBOP・LBOPの7本の式を公表しています(外為どっとコム「ピボット(PIVOT)とは」)。この記事の式はすべてここに合わせました。

材料になるのは四本値のうち3つだけです。四本値はローソク足を構成する始値・高値・安値・終値の4つの価格を指します(OANDA証券 用語集「四本値」)。このうち上の式が使っていないのは始値だけ。前日のローソク足を1本見れば、材料は全部そろうということ。

ここが移動平均線やRSIとの決定的な違いです。パラメータがありません。期間を9にするか14にするかで結果が変わる指標と違って、ピボットは前日の足が確定した瞬間に7本の水準が一意に決まります。

つまり「設定次第で線が変わる」という悩みが原理的に起きない指標です。裏を返せば、前日の足の取り方が変われば、水準もまるごと変わってしまうということでもあります。

比率を掛けて水準を作る方法と比べると、性格の違いがはっきりします。フィボナッチの比率の由来と水準の出し方をまとめた記事では安値と高値の値幅に比率を掛けていましたが、ピボットは足し算と引き算しか使いません。

前日高値163.40円・安値162.10円・終値162.85円で7本を順に出す

実際に手で回します。前提は次のとおりです。前日の高値163.40円、安値162.10円、終値162.85円。前日のレンジは163.40−162.10=1.30円、つまり130pipsとします。米ドル/円は日本銀行が公表した2026年7月21日17時時点で162.59円台なので、この付近の水準として設定しました(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。

最初に中心のPを出します。(163.40+162.10+162.85)÷3=488.35÷3=162.7833円。以降の計算はこの値を使います。

水準計算式数値を入れた計算価格1つ下の水準との間隔
R32×P−2×安値+高値325.5667−324.2000+163.40164.77円68.3pips
R2P+(高値−安値)162.7833+1.3000164.08円61.7pips
R12×P−安値325.5667−162.1000163.47円68.3pips
P(高値+安値+終値)÷3488.3500÷3162.78円61.7pips
S12×P−高値325.5667−163.4000162.17円68.3pips
S2P−(高値−安値)162.7833−1.3000161.48円61.7pips
S32×P−2×高値+安値325.5667−326.8000+162.10160.87円該当なし

価格は小数第3位を四捨五入して表示しています。クロス円は1pips=0.01円なので、たとえばPからR1までの68.3pipsは1,000通貨なら683円ぶんの距離です。

計算そのものは中学の算数の範囲で終わります。にもかかわらず、7本の水準は前日のレンジ130pipsの3倍にあたる390pipsの幅に広がりました。ここは次の章で確かめます。

間隔は2種類しかなく、バンドの幅はレンジの1倍・2倍・3倍になる

先ほどの表の右端を見てください。間隔が68.3pipsと61.7pipsの2種類しか出ていません。偶然ではなく、式からそうなります。

R1−P=(2×P−安値)−P=P−安値。計算すると162.7833−162.10=0.6833円で68.3pips。一方、P−S1=P−(2×P−高値)=高値−P=163.40−162.7833=0.6167円で61.7pips。

つまり上下の間隔は「Pが前日安値からどれだけ離れているか」と「前日高値からどれだけ離れているか」の2つだけで決まります。R2−R1もS2−S3も高値−Pに等しく、R3−R2もS1−S2もP−安値に等しい。この2つが交互に並ぶ構造です。

もっと分かりやすい性質もあります。3組のバンド幅を出してみましょう。

前日のレンジR1とS1の幅R2とS2の幅R3とS3の幅
60pips60pips120pips180pips
130pips130pips260pips390pips
200pips200pips400pips600pips

R1とS1の幅は、前日のレンジとぴったり同じになります。式で確かめると、R1−S1=(2×P−安値)−(2×P−高値)=高値−安値。Pが消えるため、終値がどこであっても幅はレンジそのものです。

同じ理屈でR2とS2の幅はレンジの2倍、R3とS3の幅は3倍になります。前日が静かな日ならピボットの線は密集し、荒れた日なら大きく広がるということ。指標が勝手にボラティリティを反映してくれる構造になっています。

ここから使い方が1つ導けます。前日のレンジが極端に狭い日は、R1とS1の間が数十pipsしかありません。スプレッドや通常の値動きに埋もれる幅なので、水準として扱う意味が薄くなります。

R3・S3とHBOP・LBOPは、呼び名が違うだけで同じ式

計算式の流儀の話をします。ピボットは会社やツールによって、公表している式の本数も名前も違います。

外為どっとコムが公表しているのは、P・R1・R2・S1・S2に加えてHBOPとLBOPという2本です。式は次のとおり。HBOP=(2×P)−(2×前日安値)+前日高値、LBOP=(2×P)−(2×前日高値)+前日安値。

一方、R3・S3という名前で表示される場合、式はR3=前日高値+2×(P−前日安値)、S3=前日安値−2×(前日高値−P)という形で書かれます。見た目は違いますが、展開すると同じ式です。

前日高値+2×(P−前日安値)=前日高値+2×P−2×前日安値。これは外為どっとコムのHBOPの式と項の並びが違うだけ。実際の数値でも確かめました。HBOPの式では325.5667−324.2000+163.40=164.7667円、R3の式では163.40+2×(162.7833−162.10)=163.40+1.3667=164.7667円。完全に一致します。

S3側も同じです。LBOPの式で325.5667−326.8000+162.10=160.8667円、S3の式で162.10−2×(163.40−162.7833)=162.10−1.2333=160.8667円。

したがって、HBOPと表示するツールとR3と表示するツールを両方使っていても、線は同じ場所に出ます。ただし、これはあくまで上に挙げた式を採用している場合の話です。式の書き方も表示される本数もツールによって違うので、自分の環境の数値と手計算の値を1度だけ突き合わせてみてください。

「前日」の区切りが変われば、7本すべてがずれる

ピボットの最大の弱点はここにあります。前日の高値・安値・終値が材料である以上、「前日」がどこからどこまでかが変われば、7本すべてが動きます。

区切りの起点は主に3種類あり、公式ページで確認できる範囲には差があります。

日足の区切り方主に使われる場面公式ページで確認できたこと確認できなかったこと
ニューヨーククローズ起点MT4サーバー時間はGMTがベースで夏時間はGMT+3・冬時間はGMT+2。1日の区切りをNYクローズと定めており、ローソク足はMT4表示上の0時で切り替わる。日本時間との差は夏6時間・冬7時間夏時間と冬時間が入れ替わる具体的な日付。ページの記載は3月〜11月・11月〜3月という範囲まで
各社の取引時間に沿った区切り国内FX会社の独自チャート週の取引時間は各社が公表している日足を1日の何時で切っているかを明記した公式ページは確認できず
取引所の区切りくりっく365通貨ペア別に四本値・出来高・直近約定値を公開している店頭FX各社のチャートの四本値と一致するかどうかは公表されていない

根拠を並べます。OANDA証券はMT4のサーバー時間について、夏時間がGMT+3、冬時間がGMT+2であり、「1日の区切りをNYクローズと定め」ているため日本時間とは6時間または7時間の差が生じると説明しています(OANDA証券「iPhone版MT4の表示時間について」)。この差をそのまま当てはめると、MT4表示上の0時は夏時間なら日本時間の6時、冬時間なら7時にあたる計算になります。MT4の期間区切り表示についても、1分足から1時間足までは日区切りで縦線が入るとゴールデンウェイ・ジャパンが案内しています(ゴールデンウェイ・ジャパン(FXTF)「MT4チャートの期間区切り表示」)。

国内各社が公表しているのは、日足の区切りではなく週単位の取引時間です。ヒロセ通商は米国標準時で月曜7:00から土曜6:30、夏時間で月曜6:30から土曜5:30としており(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)、DMM FXは夏時間で月曜7:00から土曜5:50、冬時間で月曜7:00から土曜6:50と案内しています(DMM FX「サービス概要」)。GMOクリック証券は月曜7:00から土曜7:00(米国夏時間は土曜6:00まで)です(GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール(個人のお客様)」)。※2026年7月時点。最新の条件は各社の公式サイトで確認してください。

取引所FXであるくりっく365は、通貨ペアごとに四本値や出来高を公開しています(くりっく365「マーケット情報」)。ただし店頭FX各社のチャートと同じ四本値になる保証はありません。

区切りを変えて同じ相場を計算すると、S3は37pipsずれる

言葉だけでは実感が湧かないので、数字で出します。同じ値動きを別の区切りで切ると、前日の四本値がどう変わるかを想定しました。

区切りAは先ほどと同じ、高値163.40円・安値162.10円・終値162.85円。区切りBは切り替え時刻が数時間ずれた結果、高値163.55円・安値162.10円・終値162.60円になったとします。レンジは130pipsから145pipsに広がりました。

水準区切りA区切りBずれ
R3164.77円164.85円8pips
R2164.08円164.20円12pips
R1163.47円163.40円7pips
P162.78円162.75円3pips
S1162.17円161.95円22pips
S2161.48円161.30円18pips
S3160.87円160.50円37pips

中心のPは3pipsしか動いていません。ところが外側へ行くほどずれが拡大し、S3では37pipsに達しました。Pの式は3つの数字を平均するのでブレが薄まる一方、S3は2×Pと2×高値を組み合わせるため、誤差が増幅されるからです。

終値だけが動いた場合も確かめておきます。高値と安値を固定して終値を162.85円から163.10円へ25pips動かすと、Pは162.7833円から162.8667円へ8.3pips動き、R1は163.4667円から163.6333円へ16.7pips動きました。終値の変化の3分の1がPに、3分の2がR1とS1に伝わる計算です。

だからこそ、ピボットを使うなら区切り時刻を最初に確認してください。他人が公開しているピボットの数値と自分のツールの数値が違うとき、原因はたいてい計算式ではなく区切りのほうにあります。

ピボットを実際に使うときは、3つを先に決めておく

水準が出せるようになっても、それだけでは注文になりません。決めておくことを3つに絞ります。

1つ目は、どの区切りの四本値を使うかです。MT4のNYクローズ基準にするのか、使っている国内口座の日足に合わせるのか。混在させると、自分でも根拠が説明できなくなります。

2つ目は、水準に触れたときの解釈です。ピボットの各水準は「そこで必ず反転する価格」ではありません。近づいたときに一度立ち止まって判断する目印であって、反発を保証するものではないという前提で使ってください。

3つ目は、前日レンジの下限です。R1とS1の幅は前日レンジと同じなので、レンジが30pipsしかない日はR1とS1の間も30pips。取引コストを差し引くとほとんど余地が残りません。何pips未満なら見送るかを決めておくと、無理な取引が減ります。

移動平均線と組み合わせて方向だけを判断し、ピボットで水準を決めるという分担も現実的です。短期売買で使う移動平均線の期間設定はスキャルピングのインジケーターと移動平均線の設定をまとめた記事に整理してあります。

なお、ローソク足そのものの読み方が曖昧なままだと、四本値の取り違えが起きます。ローソク足は4本値から作られ、実体と上ヒゲ・下ヒゲの3つで構成されます(マネックス証券「ローソク足の基礎」)。高値はヒゲの先端であって実体の上端ではない、という基本を外さないでください。

ピボットの計算と手法について、デイトレ前に確認したい疑問

ここまでで7本の水準の出し方と、区切りによるずれの大きさは押さえました。とはいえ実際に使う場面では、もう少し細かい判断が必要になるはずです。よく調べられている4つに答えます。

ピボットはどの時間足のチャートに表示するのが適していますか?

前日の四本値を材料にしている以上、当日中に完結する取引と相性が良い指標です。1分足から1時間足あたりに表示して、当日の値動きが7本のどこにいるかを見る使い方が基本。

日足や週足に表示しても計算はできますが、前日1本ぶんの情報で数週間の値動きを測ることになり、水準の意味が薄れます。デイトレの目安と呼ばれるのは、材料が前日1本ぶんだからです。

R1やS1に到達したら必ず反転しますか?

しません。ここは断言します。ピボットの水準は前日の3つの数字を四則演算しただけの価格であって、反転する力を持っているわけではないからです。

水準で必ず止まると期待して逆張りの注文を置くのは危険です。到達したときにどうするかを、損切り位置とセットで先に決めておいてください。

自分のツールと他人のピボットの数値が違うのはなぜですか?

原因は主に2つで、計算式の流儀と、前日の区切りです。式については、この記事で見たとおりHBOPとR3のように名前が違っても中身が同じ場合があります。

より頻繁に起きるのは区切りの違いのほうです。区切りが数時間ずれるだけで、この記事の例ではS3が37pipsずれました。まず区切り時刻を照合するのが早道です。

ピボットは他のテクニカル指標と何が違いますか?

パラメータがない点が最大の違いです。移動平均線やRSIのように期間を選ぶ余地がなく、前日の足が確定した瞬間に水準が一意に決まります。

そのぶん、当てはまらない相場では調整の余地もありません。指標を最適化して当てにいくのではなく、あらかじめ決まった目印として使う道具だと考えるほうが実態に合っています。

ピボットは前日の3つの数字を機械的に翻訳しただけの水準

ピボットに予測は含まれていません。前日の高値・安値・終値という確定した事実を、足し算と引き算で7つの価格に置き換えているだけです。だからこそ、材料である「前日」の定義がずれると全体が崩れます。

  • 材料は前日の高値・安値・終値の3つだけ。始値は使わず、パラメータも存在しない
  • 前日高値163.40円・安値162.10円・終値162.85円ならPは162.78円、R3は164.77円、S3は160.87円になる
  • 水準の間隔はP−前日安値とP−前日高値の2種類だけで、R1とS1の幅は前日レンジと必ず一致する
  • HBOP・LBOPと表示するツールとR3・S3と表示するツールは、式を展開すると同じ価格になる
  • 区切りが変わると外側ほど大きくずれる。この記事の例ではPが3pips、S3は37pipsずれた

まずは自分の口座の日足が何時で切り替わるかを確認してください。そこが分からないままでは、7本の水準に根拠を持たせられません。

前日の水準と当日の注文の集まり方を重ねて見たい方は、FXの出来高とオーダーブックの活用法をまとめた記事で、各社が公開している注文情報の範囲と限界も確認しておくと判断材料が増えます。

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