「FXは9割が負けるらしい。本当ならやめておきたいけれど、その1割という数字はどこから出てきたんだろう」
こういった疑問に答えます。
結論から言うと、FXで勝っている人の割合を示す公的な統計は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。金融庁にも金融先物取引業協会にも日本銀行にも、個人の損益を集計した資料は確認できません。「9割が負ける」も「勝てるのは1割」も、出所をたどると一次資料に行き着かない数字です。ただし、割合以外なら公表されている数字はあります。この記事では、その数字を1件ずつ並べ、そこから何が言えて何が言えないのかを切り分けます。
割合が分からない以上、判断材料は取引条件のほうへ移るということ。各社のスプレッドや取引単位を先に見比べておきたい方は、主要FX会社の比較ページに条件を一覧でまとめています。
統計の前にFXという取引の輪郭をつかんでおきたい方へ。FXとは何かを仕組みから解説した記事に、取引の成り立ちと損益の出方を整理してあります。
| 論点 | この記事の答え |
|---|---|
| 勝っている人の割合 | 公的統計を確認できず。この記事では数字を書きません |
| 「9割が負ける」の出所 | 根拠を確認できる一次資料にたどり着けませんでした |
| 集計しうる立場の機関 | 金融庁、金融先物取引業協会、日本銀行。いずれにも該当する統計は見当たらない |
| 代わりに公表されている数字 | 取引金額と建玉、ロスカット等未収金、相談受付件数 |
| 未収金の平常月 | 2026年6月は0件・0千円。直近12か月の中央値は月3件 |
| 相場急変日の未収金 | 件数最多は2019年1月3日の6,598件、金額最大は2015年1月15日の3,388百万円 |
| 金融庁への相談 | 令和8年1〜3月のFX関連は276件(受付総数15,765件の約1.8%) |
| 読者が取れる行動 | 業界の割合ではなく、自分の口座の勝率と損益比と回数を数える |
勝っている人の割合を集計した公的統計は、探しても出てこない
最初に、いちばん肝心なところを正直に書きます。
FX参加者のうち何割が利益を出しているのかを示す公的統計は、今回の調査では見つかりませんでした。金融庁の公表資料にも、日本銀行の統計にも、業界団体である金融先物取引業協会の統計にも、個人の損益分布に相当するものは確認できていません。
金融先物取引業協会が公開している統計は4区分に整理されています。四半期統計、店頭FX月次速報、個人向け店頭バイナリーオプション取引月次速報、その他調査レポート等の4つです(金融先物取引業協会「統計・調査資料」)。会員各社から集めているのは取引状況であって、顧客ひとりひとりの年間損益ではありません。
そもそも、集計しようとすると難所が3つあります。1人が複数社に口座を持っている場合の名寄せ、口座を作っただけで取引していない人の扱い、そして「勝ち」をどの期間で判定するかという定義。ここが決まらないと、割合は計算できないということ。
だからこの記事では、割合の数字を推測で置きません。代わりに、公表されている数字を全部並べます。
「9割が負ける」を検証するなら、数字を4つの項目に分解すればいい
割合の数字を見かけたとき、その場で真偽を判定する方法があります。次の4項目が書かれているかを確かめるだけ。
| 確認項目 | 具体的に見るところ | 「9割が負ける」に当てはめると |
|---|---|---|
| 発行主体 | 誰が集計し、どこで公表したか | たどっても一次資料の発行主体に行き着かない |
| 対象期間 | いつからいつまでのデータか | 期間の記載を見つけられない |
| 母集団 | 何を何件数えたのか(人か口座か) | 口座数なのか人数なのか判別できない |
| 算出方法 | 何をもって「負け」と判定したか | 年間損益か、口座残高か、税務上の所得かが不明 |
この4項目のうち1つでも欠けていると、その数字は検証できません。検証できない数字は、正しいとも間違っているとも言えないということ。
「9割が負ける」は、この4項目のすべてが欠けています。私が確認した限り、上位に出てくるのは個人ブログと比較サイトだけで、そこから一次資料へさかのぼる導線はありませんでした。
海外の業者が開示しているという損失口座の比率を根拠に挙げているケースも見かけます。ただし、それは日本の登録業者のデータではありません。証拠金規制もレバレッジ上限も違う市場の数字を、そのまま日本の読者に当てはめることはできない。日本の登録業者を対象にした同種の開示は、今回の調査では確認できませんでした。
「じゃあ、逆に1割が勝っているというのも嘘なんですか」と思うかもしれません。嘘だとも言えません。検証できる資料がないので、肯定も否定もできない。ここが正確なところです。
公表されている数字は5種類あり、言えることの範囲がそれぞれ違う
割合が出せない代わりに、公表されている数字を全部並べます。重要なのは、それぞれ「ここまでは言える」と「ここから先は言えない」の線が違うこと。
| 公表されている数字 | 直近の値 | ここまでは言える | ここから先は言えない |
|---|---|---|---|
| 店頭FX月次速報 | 2026年6月の個人向け取引金額6,675,552億円、建玉合計111,265億円、取扱会員46社 | 市場の規模と月末時点の持ち高 | 取引した人数、1人あたりの損益 |
| ロスカット等未収金発生状況 | 相場急変4回分。最多は2019年1月3日の6,598件 | 急変日に証拠金を超える損失が実際に出た件数と金額 | 損失を出した口座の総数 |
| ロスカット等未収金発生口座数(月次) | 2026年6月は0件・0千円 | 平常月の不足金がどの程度の規模か | 含み損や実現損の分布 |
| 金融サービス利用者相談室の受付状況 | 令和8年1〜3月のFX関連は276件 | 相談として持ち込まれた件数 | 相談者が勝っていたか負けていたか |
| 外国為替市況 | 2026年7月21日17時の米ドル/円は162.59-60円 | 価格そのもの | 参加者の損益 |
出所は順に、店頭FX月次速報が金融先物取引業協会「店頭FX月次速報」、相談受付状況が金融庁「金融サービス利用者相談室における相談等の受付状況等」、レートが日本銀行「外国為替市況(日次)」です。未収金の2本は次の章で詳しく見ます。
表の右2列を見比べると、共通点が浮かびます。どの統計も、市場や事故や相談を数えていて、個人の成績を数えていない。集計の目的がそもそも違うということ。
未収金の統計は「負けた人の数」ではなく「証拠金を超えた人の数」
ここがいちばん誤読されやすい数字なので、丁寧に扱います。
金融先物取引業協会は、相場が急変した日に発生したロスカット等未収金の件数と金額を公表しています。未収金とは、ロスカットが執行されても損失が預けた証拠金を上回り、顧客側に支払い義務が残った分のこと。公表されているのは4回分です(金融先物取引業協会「ロスカット等未収金発生状況」)。
この4回について、1件あたりの平均額を割り算してみます。公表値は合計欄の数値をそのまま使いました。
| 発生日 | 合計件数 | 合計金額 | 1件あたりの平均 |
|---|---|---|---|
| 2015年1月15日 | 1,229件 | 3,388百万円 | 約276万円 |
| 2015年8月24日 | 4,999件 | 919百万円 | 約18万円 |
| 2019年1月3日 | 6,598件 | 943百万円 | 約14万円 |
| 2021年3月22日 | 3,458件 | 1,381百万円 | 約40万円 |
件数がいちばん多い2019年1月3日は、1件あたりで見ると約14万円ともっとも軽い。逆に件数が最少の2015年1月15日は、1件あたり約276万円と約20倍の重さになっています。同じ「未収金が出た日」でも、中身がまったく違うということ。
ただし、この件数を「負けた人の数」と読むのは誤りです。未収金は証拠金を超えた分だけを指すので、証拠金の範囲内で損失が収まった口座は1件も入っていません。逆に、この日に利益を出した口座も当然カウントされない。母集団が「損をした人」ではなく「証拠金を食いつぶした人」なので、割合の計算には使えません。
なお、ロスカットがあれば損失が証拠金内に収まるわけでもありません。同協会は「ルール通りにロスカット取引が行われた場合であっても、相場の状況によっては顧客から預かった証拠金以上の損失の額が生じることがあります」と明記しています(金融先物取引業協会「ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付け」)。
平常月の不足金は月に数件。桁が変わるのは急変した日だけ
未収金には月次の速報もあり、平常時の水準が分かります(金融先物取引業協会「ロスカット等未収金発生口座数」)。
2025年7月から2026年6月までの12か月を集計すると、合計469件・9,346千円。ただし平均を取るとミスリードになります。2025年7月の397件が突出しているためで、この1か月を除いた11か月の合計はわずか72件。12か月の中央値は月3件です。直近の2026年6月は0件・0千円でした。
この月次データと、先ほどの急変日を並べると構図が見えます。2015年1月15日の1日で発生した3,388百万円は、直近12か月の合計9,346千円のおよそ362倍。平常月には数件しか起きないことが、1日で数百倍に膨らむ。
つまり、未収金という事故は「じわじわ全員に起きる」ものではなく、「ほとんどの月は起きず、特定の日に集中する」ものです。ここから読み取れるのは損益の分布ではなく、リスクの時間的な偏り方のほう。
割合の話をしていたはずが事故の話になっている、と感じたかもしれません。それが実情です。公表されている数字は、成績ではなく事故と規模しか捉えていません。
金融庁への相談は四半期で276件。これも損益の分布ではない
もう1本、実数が出ている統計があります。
金融庁の金融サービス利用者相談室は、令和8年1月1日から3月31日までの受付総件数を15,765件と公表しています。うち投資商品等に関するものが5,449件で全体の約35%、その内訳として上場株式1,490件、FXが276件です(金融庁「金融サービス利用者相談室における相談等の受付状況等(令和8年1月〜3月)」)。
FXの276件は、受付総数15,765件に対して約1.8%、投資商品等5,449件の中では約5.1%にあたります。
この数字をどう読むか。相談は「困った人が電話やウェブで持ち込んだ件数」であって、損失を出した人の件数ではありません。損をしても相談しない人が大半でしょうし、逆に利益が出ていても手続きで困れば相談します。母集団が自己選択で決まるので、割合の推計には使えないということ。
そして、ここまで見た統計すべてに共通する事実があります。負けた原因や勝った要因を分解した公的資料は、今回の調査ではどこにも確認できなかったという点。原因の側から考えたい方は、取引回数と損切りという測れる項目で整理したFXで勝てない理由とポジポジ病の直し方を先に読んでおくと、この記事の空白が埋まります。
割合を語る数字が出てきたら、勧誘の入口である可能性を疑う
割合の話には、注意しておきたい使われ方があります。
「9割が負ける。でもこの手法を学べば残りの1割に入れる」という組み立ては、勧誘の定番です。金融庁は典型的な詐欺的勧誘の文句として「セミナーで勉強すれば、勝てるようになる」「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」を挙げています(金融庁「FX取引・暗号資産等に関する詐欺的な勧誘にご注意ください」)。
同ページには、FXや暗号資産等について、勧誘を要請していない顧客への勧誘は原則禁止であることも書かれています。向こうから来た勧誘は、その時点で制度の前提を外れているということ。
だからこそ、検証できない割合の数字を根拠に何かを買う判断はしないほうがいい。ここは断言します。とはいえ、割合を知りたいという気持ち自体は自然なもの。次の章で、その代わりに置ける数字を示します。
業界の割合の代わりに、自分の口座から4つの数字を出す
割合が分からないなら、分かるものに置き換えます。自分の取引履歴から作れる数字が4つあります。
| 自分で出せる数字 | 求め方 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 勝率 | 利益で終えた回数 ÷ 総取引回数 | 当たっている頻度 |
| 損益比 | 平均利益額 ÷ 平均損失額 | 1回あたりの取り分と失う分の比 |
| 取引回数 | 期間内の往復回数 | コストと判断ミスの発生機会 |
| 往復コストの累計 | 1往復のコスト × 回数 | 手法とは無関係に確実に出ていく額 |
この4つのうち、勝率だけを見るのがいちばん危ない読み方です。勝率70%でも損益比が0.3なら差引はマイナスになりますし、勝率30%でも損益比が3.0を超えれば残ります。組み合わせで初めて意味を持つということ。
対象期間は最低でも50往復。10往復や20往復では、たまたま良かった期間とそうでない期間の区別がつきません。回数が少ないうちに出した勝率は、自分の実力ではなく相場の機嫌を測っているだけになります。
「業界全体で何割が勝っているか」は分からなくても、「自分がこの3か月でどうだったか」は必ず出せます。判断に使えるのは後者のほうです。
FXで勝ってる人の割合を調べた人が、次に確かめる4つの疑問
割合をめぐる検索は、言い回しを変えた同じ問いに集中しています。まとめて答えます。
FXで成功する人は何パーセントですか?
パーセントで答えられる公的な資料は確認できませんでした。金融庁、金融先物取引業協会、日本銀行のいずれにも、参加者の損益を集計した統計は見当たりません。
「儲かっている人は何割か」「稼いでいる人は何パーセントか」「損する人の割合は」といった問いも、すべて同じ答えになります。母集団と判定期間と勝ちの定義が公表されていない以上、数字を書けば嘘になるからです。
FXは9割が負けるって本当ですか?
本当かどうかを判定できる一次資料に、今回はたどり着けませんでした。
この記事の2つ目の章で示した4項目、つまり発行主体、対象期間、母集団、算出方法。この4つが揃った資料が見つからなかったため、肯定も否定もできないというのが正直な答えです。9割という数字を見かけたら、その4項目が書かれているかを確認してみてください。
勝っている人の割合が分からないなら、何を基準に判断すればいいですか?
自分の口座から出せる4つの数字、つまり勝率、損益比、取引回数、往復コストの累計です。
業界の割合は、仮に分かったとしても自分の成績には直結しません。同じ市場で同じ通貨ペアを触っていても、取引する時間帯とロットの置き方で結果は変わります。他人の平均より、自分の直近50往復のほうが判断材料として上ということ。
損益の統計がないのに、なぜ未収金や相談件数は公表されているのですか?
集計の目的が違うからです。
未収金の統計は、業者のロスカット体制が機能しているかを見るためのもの。相談受付状況は、金融行政に寄せられた声の量と内訳を示すためのもの。どちらも投資家の成績を測る目的では作られていません。目的が違う統計を成績の推計に流用すると、母集団のずれた数字が出てきます。
割合が分からない以上、判断の材料は自分の記録のほうにある
ここまで見てきたとおり、FXの勝者比率を示す公的統計は今回の調査では確認できませんでした。分かるのは市場の規模と、事故が起きた日の件数と、相談として持ち込まれた数だけ。それでも、自分の口座については十分に測れます。
- 勝っている人の割合を示す公的統計は、金融庁・金融先物取引業協会・日本銀行のいずれにも確認できなかった
- 「9割が負ける」は発行主体・対象期間・母集団・算出方法のすべてが不明で、検証のしようがない
- 未収金の件数は「証拠金を超えた口座」であって「損をした口座」ではなく、割合の分母には使えない
- 平常月の未収金は中央値で月3件。2015年1月15日の1日分は直近12か月合計の約362倍にあたる
- 割合の代わりに置けるのは、自分の勝率・損益比・取引回数・往復コストの4項目
割合の数字を探して時間を使うより、直近50往復の記録を並べたほうが早く答えが出ます。
次に読むなら、その4項目を使って損益がどう決まるのかを式にしたFXは本当に儲かるのかを期待値とコストから検証した記事へ。コストを引いた後に符号がどう変わるかを、実際の数字で確かめられます。

