「損切りは何pipsに置けばいいのだろう。20pipsという説明も50pipsという説明も見かけて、どちらを採ればいいのか決められない」
こういった疑問に答えます。
先に結論を書くと、pipsの数字だけを取り出しても損切り幅は決まりません。決まるのは、数量と資金がセットになったとき。口座資金18万円で9,000通貨を建てるなら、20pipsの損切りは1,800円で資金のちょうど1%にあたりますが、同じ20pipsでも数量が2倍なら2%です。つまり「何pips」は答えではなく、許容損失額と数量から出てくる結果のほう。
損切り幅を狭くすると必要な数量が増え、必要証拠金の制約に当たります。自分の口座で何通貨まで無理なく建てられるかは取引単位で変わるので、主要FX会社の比較ページで最小取引単位を確かめてから読み進めると、この記事の数字がそのまま使えます。
| 損切り位置の決め方 | 具体的な置き方 | 長所 | 外れたときに起きること |
|---|---|---|---|
| 直近の高安を使う | 直近安値の少し下、直近高値の少し上 | 相場の構造と噛み合い、根拠を説明できる | 高安が遠い場面では損失額が跳ね上がる |
| 値幅を固定する | 常に20pipsなど同じ幅に置く | 数量を毎回同じにでき、記録が比較しやすい | 静かな相場では遠すぎ、荒い相場では近すぎる |
| ボラティリティの倍数にする | ATRの1倍から2倍を目安に置く | 相場の荒さに合わせて幅が自動で伸縮する | 荒れた局面で幅が広がり、数量を落とさないと損失額が膨らむ |
| 金額の上限で切る | 資金の1%など、円で先に決める | 損失額が予測でき、連敗しても資金が残る | 相場の構造を無視した価格に置かれ、ノイズで刈られる |
※上表は4つを併用する前提の整理。実務では「金額の上限」を天井として、残る3つのどれかで価格を決める形になります。
「何pipsが目安か」という問いには、数量と資金を決めるまで答えられない
この質問に一般解を出そうとすると、必ずどこかで前提を隠すことになります。損失額は「損切り幅 × 数量」でしか決まらないためです。
クロス円の1pipsは0.01円。9,000通貨なら1pipsあたり90円になります。この90円という換算がないまま「20pipsが目安」と言われても、それが1,800円なのか1万8,000円なのかは決まりません。
順番はこうです。まず資金を決める。次に1回で失ってよい金額を決める。そのあとで損切り幅を決め、最後に数量が割り出される。あるいは数量を先に固定し、そこから許される幅を逆算する。どちらの向きでも構いませんが、pipsを最初に置く順番だけは成立しません。
「それでも目安が欲しい」という気持ちは分かります。ただ、目安として流通している数字は、その人の資金と数量を消したあとの残りかすです。自分の数字を入れれば、答えは2分で出ます。
エントリーの根拠を固めた直後にこの計算をおこなう流れはFXのエントリータイミングと根拠の重ね方をまとめた記事の発注前チェックに組み込んであります。入口と出口はセットで決めるものだと考えてください。
損切りは自分で置く注文、ロスカットは会社が執行する強制決済
用語をはっきり分けておきます。混同したまま資金設計をすると、危険な置き方に気づけません。
損切りは、自分が価格を選んで置く逆指値注文のこと。対してロスカットは、証拠金が一定水準を下回った口座に対して会社が建玉を強制的に決済する処理です。金融先物取引業協会によれば、2010年2月1日から、個人顧客と取引するすべての業者にロスカットルールの整備と遵守が義務づけられました(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。
水準は会社ごとに違います。ヒロセ通商のLION FXは有効比率100%割れでロスカットとし、追証制度はないと取引要綱に明記しています(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)。DMM FXは証拠金維持率50%以下でロスカット、判定時刻に維持率100%を下回ると追加証拠金が発生するとしています(DMM FX「サービス概要」)。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。
決定的な違いは、価格を選べるかどうか。損切りは自分で置いた価格で発注されますが、ロスカットは会社の判定タイミングで発注されます。どこで切られるかを自分では選べません。
距離もまるで違います。資金18万円で9,000通貨を建てた場合、有効比率100%基準の会社ならロスカットまでの値幅は約13.50円、およそ1,350pips。必要証拠金を建玉時のレートで固定した前提での概算です。20pipsの損切りは、その1.5%の位置にあることになります。
つまり損切りとロスカットは、同じ「決済」でも役割が違います。前者は取引ごとの損失を設計する道具、後者は口座が破綻する前の最終ラインです。ロスカットに任せた時点で、1回の損失は資金の67.5%におよびます。
資金18万円・9,000通貨なら、20pipsの損切りがちょうど資金の1%
数字を固定して確かめましょう。前提は次のとおり。
米ドル/円は、日本銀行が外国為替市況で公表した2026年7月21日17時時点の162.59円台を基準にします(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。口座資金18万円、数量は9,000通貨、証拠金率4%、クロス円の1pipsは0.01円。スプレッドとスワップポイントはゼロとした試算です。この条件での必要証拠金は5万8,532円、建てた直後の証拠金維持率は約307.5%になります。
| 損切り幅 | 1pipsあたりの損益 | 損失額 | 資金18万円に対する比率 |
|---|---|---|---|
| 10pips | 90円 | 900円 | 0.50% |
| 20pips | 90円 | 1,800円 | 1.00% |
| 50pips | 90円 | 4,500円 | 2.50% |
10pipsで900円、50pipsで4,500円。幅を5倍にすれば損失額も正確に5倍です。当たり前のようでいて、この比例関係が「何pipsが目安か」という問いを無効にしています。
逆向きにも計算しておきます。1回の許容損失を資金の1%と決めるなら1,800円で、9,000通貨なら20pips。2%なら3,600円で40pipsです。
| 1回の許容損失 | 金額 | 9,000通貨で許される損切り幅 |
|---|---|---|
| 資金の1% | 1,800円 | 20pips |
| 資金の2% | 3,600円 | 40pips |
数量を9,000通貨に固定している以上、許容率を決めた瞬間に幅は一意に決まります。ここに相場の状態は一切入っていません。だからこそ、この幅で置ける場所が相場側にあるかどうかを、次に確認する必要があります。
許容損失を先に固定すると、動くのは幅ではなく数量のほう
実務でよく使うのは、逆の順番です。1回の許容損失を1,800円に固定したまま、相場が要求する損切り幅に合わせて数量を変えます。
| 損切り幅 | 許容損失1,800円から逆算した数量 | 必要証拠金 | 資金18万円での証拠金維持率 |
|---|---|---|---|
| 10pips | 1万8,000通貨 | 11万7,065円 | 約153.8% |
| 20pips | 9,000通貨 | 5万8,532円 | 約307.5% |
| 50pips | 3,600通貨 | 2万3,413円 | 約768.8% |
| 100pips | 1,800通貨 | 1万1,706円 | 約1,537.6% |
10pipsの行を見てください。損失額は同じ1,800円なのに、必要証拠金は11万7,065円まで膨らみ、維持率は約153.8%まで落ちます。GMOクリック証券のFXネオのように証拠金維持率50%を下回るとロスカットになる会社なら、そこまでの距離がかなり近い状態です(GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール(個人のお客様)」)。
許容損失を2%の3,600円にすると、この壁はもっと早く来ます。10pipsなら3万6,000通貨が必要で、証拠金は23万4,130円。資金18万円では発注そのものができません。
ここから言えることは1つです。損切りを狭くするほど安全になるのではなく、狭くするほど大きな数量を要求され、証拠金の制約に当たるということ。
数量は「許容損失から逆算した数量」と「証拠金に無理のない数量」の小さいほうを採ってください。維持率の下限を先に決めておくと機械的に処理できます。300%を下限にするなら、この資金では必要証拠金6万円が天井で、建玉は約9,200通貨まで。
なお、逆算した数量に近い値で発注できるかは会社の取引単位で決まります。SBI FXトレードは1注文あたりの最小数量を1通貨としており、細かく寄せられる部類です(SBI FXトレード「取引ルール」)。1,000通貨単位の口座なら、必ず小さいほうへ丸めてください。
位置の決め方は4種類あり、外れたときの壊れ方がそれぞれ違う
冒頭の表に挙げた4つを、実際の置き方まで落とします。
直近の高安を使う方法は、相場の構造と噛み合う点が強みです。買いなら直近安値の少し下、売りなら直近高値の少し上。「少し下」の幅は、その足で観測できるヒゲの長さから決めます。弱点は、高安が遠い場面で損失額が跳ね上がること。そこは数量を落として吸収します。
値幅を固定する方法は、記録の取りやすさが最大の利点です。毎回20pipsなら、数量も毎回同じ。勝率と損益比を後から集計するとき、この一貫性が効いてきます。ただし相場の荒さは日によって変わるので、静かな日には遠すぎ、荒い日には近すぎる幅になります。
その荒さを数値で測るのがボラティリティの倍数という考え方です。ヒロセ通商の解説では、ATRは相場の動く大きさを判断するときに用いる指標で、TR(True Range)のn日指数平滑移動平均として計算され、nは14日や20日を用いるのが一般的とされています(ヒロセ通商「ATR」)。TRは当日高値と当日安値の差、当日高値と前日終値の差、前日終値と当日安値の差のうち最大値です。
楽天証券のオンラインヘルプも同じ3つの差のうち最大の値幅を真の値幅と呼び、その移動平均線がATRだと説明しています。初期設定の期間は14です(楽天証券「MARKET SPEED FX オンラインヘルプ ATR」)。
ATRが30pipsの局面で1.5倍を採れば45pips、50pipsの局面なら75pips。9,000通貨のままなら損失は4,050円と6,750円で、資金の2.25%と3.75%です。荒れた局面ほど幅が広がるので、数量を落とさないと許容額を突破します。
金額の上限で切る方法は、この突破を防ぐための天井です。1,800円に達したら価格に関係なく決済する。ノイズで刈られやすいのが弱点ですが、資金が尽きる経路だけは確実に塞げます。
4つは択一ではありません。金額の上限を天井に置き、その内側で高安かATRを使って価格を決める。この組み合わせが実務的です。
損切りを外す判断は、20pipsの損切り10回ぶんを1回に集約する行為
「損切り貧乏が嫌だから、今回は置かずに戻りを待つ」。この選択が何を意味するのかを、同じ前提で計算します。
9,000通貨で放置した場合の損失額です。
| 逆行した値幅 | 損失額 | 資金18万円に対する比率 | 20pips損切り何回ぶんか |
|---|---|---|---|
| 100pips | 9,000円 | 5.0% | 5回 |
| 200pips | 1万8,000円 | 10.0% | 10回 |
| 500pips | 4万5,000円 | 25.0% | 25回 |
| 約1,350pips | 12万1,468円 | 67.5% | 約67回(ロスカット水準) |
200pips逆行させただけで、20pipsの損切り10回ぶんが飛びます。10連敗しても資金の10%しか減らない設計を、1回の見送りで台無しにする計算です。
しかも、この10回には勝ちが1回も含まれていません。実際には10回のうち何回かは利確できているはずで、損切りを守っていれば資金の減り方はもっと緩やかになります。
損切り貧乏の正体は、切る回数ではありません。切った幅に対して利確幅が小さすぎるか、そもそも届かない場所に利確を置いているかのどちらかです。時間軸を短く取る場合の比率の詰め方はスキャルピングの損切り目安と利幅の関係を整理した記事にあるので、数分で決済するスタイルの方はそちらもあわせて確認してください。
直すべきは幅と比率であって、置くかどうかではない。ここは断言します。とはいえ、幅を広げること自体は選択肢に入ります。広げるなら、必ず同じ比率で数量を落としてください。
損切りを徹底させるコツは、意志ではなく発注手順に埋め込むこと
決めた損切りを実行できないという相談は多いのですが、原因はたいてい発注の順番にあります。
逆指値は、新規注文と同時に置いてください。建てたあとで位置を考え始めると、判断に「まだ戻るかもしれない」という願望が混ざります。新規と決済を同時に出せる注文方法を使えば、その混入する余地そのものが消えます。
そのうえで、次の3つを守ると崩れにくくなります。
- 置いた逆指値を、含み損が出てから遠ざけない。1回でも動かすと、次から必ず動かします
- 決済してから理由を書かず、発注前に「どうなったら間違いか」を1行書く。書けない場面は入らない
- 1日の損失上限を決めておく。1回1%なら、3回で止めると1日の最大は3%
3番が抜けている人が多い印象です。1回あたりを守っても、日に10回やれば10%が飛びます。回数の上限は、幅の上限と同じくらい効きます。
コストの側も見ておきましょう。9,000通貨の1往復スプレッドは、ヒロセ通商の公表値でAM9:00から翌AM3:00の0.2銭なら18円、AM3:00からAM9:00の5.9銭なら531円です(ヒロセ通商「LION FXスプレッド情報」)。20pipsの損切り1,800円に対して、前者は1.0%、後者は約29.5%。※2026年7月時点。
早朝に20pipsの損切りで戦うと、コストだけで損失想定の3割が上乗せされます。狭い幅で取引するほど、時間帯の選別が資金曲線に効いてくるということ。
FXの損切りルールで、目安と設定方法について多い質問
幅の決め方と逆算の手順はここまでで整理できました。とはいえ、実際に設定画面を開くと細部で迷うはずです。検索でよく調べられている5つに答えます。
fxの損切りは何pipsが目安ですか?
pipsの数字だけでは決まりません。決まるのは、資金と数量が揃ったときです。
この記事の前提である資金18万円・9,000通貨なら、資金の1%を許容するとして20pips、2%なら40pipsという答えになります。同じ1%でも数量が半分の4,500通貨なら40pips、倍の1万8,000通貨なら10pips。数量を書かずに出てくる「目安」は、そのぶんだけ前提が隠れていると考えてください。
損切りとロスカットは何が違いますか?
自分で置くか、会社が執行するかの違いです。損切りは自分が価格を選んで置く逆指値注文で、ロスカットは証拠金が水準を下回った口座に対して会社が実施する強制決済にあたります。
距離もまったく違います。資金18万円・9,000通貨なら、有効比率100%基準の会社でロスカットまでは約1,350pips。20pipsの損切りは、その1.5%の位置です。ロスカットを損切り代わりにする設計は、1回の損失を資金の67.5%まで許容していることになります。
損切り設定はどの注文方法で置けばいいですか?
新規注文と決済注文を同時に出せる方法を使ってください。新規の逆指値と決済の逆指値をセットにできる注文なら、約定した瞬間に損切りが板に乗ります。
利確も同時に置きたいなら、決済側を2本用意できる注文方法を選びます。名称は会社ごとに異なるため、口座の注文画面で「新規と決済を同時に出せるか」を基準に探すのが早道です。
損切りした直後に価格が戻るのが続きます。幅を広げるべきですか?
幅を広げること自体は選択肢ですが、その場合は必ず数量を落としてください。20pipsから40pipsへ広げるなら、9,000通貨を4,500通貨へ。これで1回の損失額は1,800円のまま保てます。
幅だけ広げて数量を据え置くと、許容損失が資金の1%から2%へ倍増します。5連敗したときの減り方が、5%から10%に変わるということ。広げる判断と数量の判断は、必ずセットで動かしてください。
損切りで確定した損失は、税金の計算で何か使えますか?
切った損の合計が年間でマイナスに終わった場合、その分を翌年以後3年間の利益にぶつける制度があります(国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。ただし申告を毎年続けることが条件で、1年でも空けると権利が消えます。損切りを実行した年ほど、申告の手間を惜しまないほうがいいということです。
負けた年に何もしないと、翌年以降に利益が出たときの控除枠を自分から捨てることになります。損切りを積み重ねた年こそ、申告の価値があるという話です。
損切り幅は相場から降ってくる数字ではなく、資金と数量から作る数字
ここまでの計算で分かるとおり、損切り幅に一般解はありません。あるのは「許容損失額 ÷(数量 × 0.01円)」という1本の割り算だけで、そこへ自分の資金と数量を入れれば答えが出ます。
- 損失額は「損切り幅 × 数量」でしか決まらず、pipsを単独で目安にはできない
- 資金18万円・9,000通貨なら、10pipsで900円、20pipsで1,800円、50pipsで4,500円
- 許容損失1%を固定すると、10pipsでは1万8,000通貨が必要になり維持率は約153.8%まで低下
- 位置の決め方は直近の高安、値幅の固定、ATRの倍数、金額の上限の4種類で、金額の上限を天井にして併用する
- 損切りを外して200pips逆行させると1万8,000円で、20pips損切り10回ぶんに相当する
まずは自分の資金に許容率を掛けて、1回の許容損失額を円で出してみてください。その金額を数量で割れば、あなたの口座での「目安」がその場で決まります。
損切り幅が固まったら、次は反対側です。同じ幅を基準にして利確をどこへ置くかはFXの利確タイミングをリスクリワードから逆算した記事に数値で整理しているので、出口の両側を同じ日に決めてしまってください。

