「FXの計算式を調べるたびに、損益はこのページ、証拠金は別のページと散らばっていて、結局どれとどれがつながっているのか分からなくなる」
こういった疑問に答えます。
FXで使う計算は5つだけです。損益、必要証拠金、証拠金維持率、ロスカットまでの値幅、スワップポイント。そしてこの5つは、レートと数量と資金という3つの数字を組み替えているにすぎません。この記事では「口座資金50万円で、米ドル/円162.59円を3万通貨買った」という前提を1つだけ置き、そこから5つの式を順に通して数字を出します。前提を1本に固定すると、どの式がどの数字を共有しているのかが見えてきます。
必要証拠金や維持率の数値は会社ごとの条件で変わります。自分の口座で当てはめる前に各社の条件を確認したい方は、主要FX会社の比較ページに一覧をまとめています。
| 計算 | 式 | 使う数字 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①損益 | (決済レート − 建値)× 数量 | 建値、決済レート、数量 | 売りから入った場合は符号が逆になる |
| ②必要証拠金 | レート × 数量 × 4% | レート、数量 | 個人は取引金額の4%以上。基準レートの取り方は会社ごとに違う |
| ③証拠金維持率 | 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100 | 資金、含み損益、必要証拠金 | 分子は口座残高ではなく、含み損益を反映した額 |
| ④ロスカットまでの値幅 | (有効証拠金 − 水準 × 必要証拠金)÷ 数量 | 資金、必要証拠金、数量、会社のロスカット水準 | 水準の定義が会社で違う。急変時は水準どおりに約定しない |
| ⑤スワップ | 1ロットあたりの数値 × ロット数 × 日数 | 通貨ペア、ロット数、保有日数 | 買いと売りで符号が違い、数値は日々変わる |
※証拠金率4%は個人の店頭FXに適用される下限です。実際の必要証拠金や水準は各社の取引ルールで確認してください。
5つの式は、レートと数量と資金の3つの数字を組み替えているだけ
計算式を覚えようとすると量に見えますが、材料はごく少数です。レート、数量、資金。この3つを入れ替えているだけと考えてください。
通し計算の前提を確定させます。日本銀行の外国為替市況によると、2026年7月21日17時時点の米ドル/円は162.59-60円でした(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。この162.59円で、3万通貨の買いポジションを、口座資金50万円の状態で建てたとします。
まず取引金額を出しておきます。162.59円 × 30,000通貨 = 4,877,700円。以降の式は、ほぼすべてこの数字から派生します。
なお、実際に約定する価格は表示レートと一致しないことがあります。この記事の計算は表示どおりに約定した前提で進めますが、ずれの仕組みはFXのスリッページと約定力について書いた記事に切り分けてありますので、実運用ではそちらも合わせて見てください。
①損益は「値幅 × 数量」。3万通貨なら1pipsが300円になる
最初の式がいちばん単純です。
損益 =(決済レート − 建値)× 数量
162.59円で買ったポジションを163.59円で決済した場合、(163.59 − 162.59)× 30,000 = 30,000円の利益。逆に161.59円で決済すれば、(161.59 − 162.59)× 30,000 = マイナス30,000円です。
pips単位に直すと扱いやすくなります。クロス円の1pipsは0.01円なので、3万通貨の1pipsは30,000 × 0.01円で300円。1円の値動きは100pipsなので、300円 × 100 = 30,000円となり、上の計算と一致しました。
| 値幅 | pips換算 | 3万通貨の損益 |
|---|---|---|
| 0.10円 | 10pips | 3,000円 |
| 0.50円 | 50pips | 1万5,000円 |
| 1.00円 | 100pips | 3万円 |
| 3.00円 | 300pips | 9万円 |
売りから入った場合は符号だけが逆になります。162.59円で売って161.59円で買い戻せば、(162.59 − 161.59)× 30,000 で30,000円の利益。式を2本覚える必要はありません。
そして、この30,000円がそのまま手元に残るわけではないという点。国税庁によれば、FXの差金決済による利益は先物取引に係る雑所得等として申告分離課税の対象で、税率は所得税15%、地方税5%、これに復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加わります(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。合計20.315%で計算すると、30,000円 × 0.20315 = 6,094.5円。端数処理を除けば、手取りは約2万3,905円という概算になります。申告の要否や経費の扱いはFXの税金と20.315%の計算方法をまとめた記事を参照してください。
②必要証拠金は「レート × 数量 × 4%」で19万5,108円
次はポジションを建てるために拘束される金額です。
必要証拠金 = レート × 数量 × 証拠金率
先ほど出した取引金額4,877,700円に4%を掛けます。4,877,700円 × 0.04 = 195,108円。資金50万円のうち、19万5,108円が拘束され、残りの30万4,892円が余力になります。
4%という数字は各社の裁量ではありません。金融先物取引業協会によれば、個人顧客との店頭FXでは取引金額に対して2010年8月1日から2%以上、2011年8月1日以降は4%以上の証拠金を預かることが業者に義務づけられています(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。4%以上が義務なので、レバレッジ換算では25倍が上限になるという関係です。
ここで注意したいのが、掛けるレートの取り方。ヒロセ通商は取引要綱で個人の必要証拠金を想定元本の4%以上と示していますが(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)、SBI FXトレードは前営業日終了時点の取引レート(仲値)を参考に証拠金率を乗じる方式と案内しています(SBI FXトレード「取引ルール」)。基準となるレートが現在値なのか前日の仲値なのかで、同じ数量でも必要証拠金は数百円単位でずれます。
自分の口座の数字と手計算が1円単位で合わないときは、たいていこのレートの取り方が原因です。慌てて式を疑う前に、基準日を確認してみてください。
③証拠金維持率は「有効証拠金 ÷ 必要証拠金」。この時点で256.27%
3つ目の式が、口座の体力を表す数字です。
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
有効証拠金は、口座資金に含み損益を反映させた金額。建てた直後で含み損益がゼロなら、そのまま50万円です。
500,000円 ÷ 195,108円 × 100 = 256.27%
含み損が出ると分子だけが減り、分母は動きません。3万通貨なので、含み損は1pipsあたり300円ずつ増えていきます。
| 含み損 | 有効証拠金 | 証拠金維持率 | 逆行幅の目安 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 50万円 | 256.27% | 0pips |
| 3万円 | 47万円 | 240.89% | 100pips(1.00円) |
| 10万円 | 40万円 | 205.01% | 333pips(3.33円) |
| 20万円 | 30万円 | 153.76% | 667pips(6.67円) |
| 30万円 | 20万円 | 102.51% | 1,000pips(10.00円) |
DMM FXは証拠金維持率が50%以下でロスカット、判定時刻に100%を下回ると追加証拠金が発生すると公表しています(DMM FX「サービス概要」)。この表を同社の条件に当てはめると、維持率がちょうど100%になるのは含み損30万4,892円のとき。表の30万円の行は102.51%なので、追加証拠金の一歩手前という位置づけです。
「維持率は何%あれば安全か」と思うかもしれません。安全と言い切れる水準は存在しませんが、維持率が高いほどロスカットまでの距離が長いという関係は動きません。その距離を実際に計算するのが4つ目の式です。
④ロスカットまでの値幅は、ロスカット水準と「資金 ÷ 数量」で決まる
4つ目は、いちばん実務的な式です。
ロスカットまでの値幅 =(有効証拠金 − ロスカット水準 × 必要証拠金)÷ 数量
証拠金維持率50%でロスカットする会社を想定します。GMOクリック証券のFXネオは、時価評価総額が取引金額の2%に相当する日本円額を下回った場合、つまり証拠金維持率が50%を下回った場合にロスカットすると公表しています(GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール(個人のお客様)」)。
195,108円 × 50% = 97,554円。耐えられる含み損は 500,000 − 97,554 = 402,446円。これを数量で割ります。
402,446円 ÷ 30,000通貨 = 13.4149円、およそ1,341pipsです。
厳密に言うと、必要証拠金もレートに連動して動くため、この値は少し保守的な近似になります。レート下落を織り込んで解くと、ロスカット到達レートは148.9014円、値幅は13.6886円(約1,369pips)。近似と厳密で0.27円ほどの差が出ますが、判断に使うぶんには近似値で足ります。
ロスカット水準が有効比率100%の会社なら、話が変わります。耐えられる含み損は 500,000 − 195,108 = 304,892円、値幅は10.1631円(約1,016pips)。同じ資金・同じ数量でも、3.25円ぶん早く切られる計算です。
| ロスカット水準 | 耐えられる含み損 | 値幅(近似) | pips換算 |
|---|---|---|---|
| 証拠金維持率50% | 40万2,446円 | 13.41円 | 約1,341pips |
| 有効比率100% | 30万4,892円 | 10.16円 | 約1,016pips |
式をよく見ると、ロスカット水準とレートを固定すれば、値幅は「資金 ÷ 数量」の比だけで決まると分かります。資金を100万円にして数量を6万通貨にしても、比が同じなら値幅は13.41円のままです。金額を大きくしたから危ない、小さいから安全という話ではないということ。
なお、ロスカットは執行を保証する仕組みではありません。SBI FXトレードは証拠金維持率が原則20秒ごとの判定で50%を下回った場合に強制決済すると案内していますが(SBI FXトレード 公式サイト「取引ルール」)、判定と判定の間に相場が飛べば、計算した水準より不利な価格で約定します。
⑤スワップは「1ロットあたりの数値 × ロット数 × 日数」で出る
最後は、ポジションを持ち越したときに受け払いする金額です。
スワップ損益 = 1ロットあたりのスワップ × ロット数 × 保有日数
ヒロセ通商のスワップポイント一覧では、2026年7月24日対象分の米ドル/円が1Lotあたり買い16ポイント、売りマイナス19ポイント、付与日数1日として公表されています。同社の1Lotは1,000通貨です(ヒロセ通商「LION FXスワップポイント」)。
3万通貨は30Lotにあたるので、買いポジションなら 16 × 30 = 480円が1日あたりの受取。30日持てば14,400円になります。
| 保有日数 | 買いポジション(16ポイント) | 売りポジション(マイナス19ポイント) |
|---|---|---|
| 1日 | 480円 | マイナス570円 |
| 7日 | 3,360円 | マイナス3,990円 |
| 30日 | 1万4,400円 | マイナス1万7,100円 |
ここで押さえておきたいのが、スワップは日数どおりに単純に積み上がるわけではないという点。JFXは、原則として水曜日分に土日分を含めた3日分を付与し、USD/CADとUSD/TRYは木曜日に3日分を付与すると案内しています(JFX「スワップポイントについて」)。年末年始や各国の祝祭日で変則になることもあるとされています。
そして数値そのものが日々変わります。上の480円は特定の1日の公表値を30倍しただけの試算で、実際には毎日の数値が積み上がった額になるということ。※2026年7月時点の公表値です。最新の数値は各社の公式ページで確認してください。
資金だけを50万円から30万円に変えると、動く数字と動かない数字が分かれる
ここまでの5つを1つの前提で通したので、前提を1か所だけ変えたときの挙動も確かめられます。数量3万通貨とレート162.59円はそのまま、資金だけを30万円に落とします。
| 項目 | 資金50万円 | 資金30万円 |
|---|---|---|
| ①1pipsの損益 | 300円 | 300円 |
| ②必要証拠金 | 19万5,108円 | 19万5,108円 |
| ③証拠金維持率 | 256.27% | 153.76% |
| ④ロスカットまでの値幅(維持率50%) | 13.41円 | 6.75円 |
| ⑤1日あたりのスワップ(買い) | 480円 | 480円 |
動かないのが①②⑤、動くのが③④です。損益とスワップは数量だけで決まり、必要証拠金はレートと数量だけで決まるため、資金をいくら入れても変化しません。
一方で、資金を4割減らしただけでロスカットまでの値幅はほぼ半分になりました。厳密に解いても6.8859円で、やはり半分前後です。資金を追加することは利益を増やす行為ではなく、耐えられる距離を買う行為だと言い換えられます。
「では余力はどれくらい残せばいいのか」と問われたら、私は金額ではなく値幅で答えるようにしています。自分がその通貨ペアで想定する1日の値動きの何倍を確保できているか。この比較のほうが、維持率の%を眺めるより判断が速くなります。
FXの計算式について、注文画面を開く前によく調べられている疑問
5つの式と通し計算はここまで。とはいえ、実際に自分の口座で数字を合わせようとすると、細かい部分で止まりやすいところが残ります。よく調べられている5つに答えます。
損益計算にはどのレートを使えばいいですか?
買いポジションは、建てるときに買値、決済するときに売値を使います。売りポジションはその逆です。
同じ瞬間でも買値と売値には差があり、その差がスプレッド。式の上では(決済レート − 建値)の1本ですが、実際の約定価格を入れれば、スプレッドぶんのコストは自動的に結果に含まれます。
必要証拠金が自分で計算した額と少し違うのはなぜですか?
掛けるレートの基準が会社ごとに違うためです。現在値を使う会社もあれば、前営業日終了時点の仲値を参考にする会社もあります。
数量とレートを正しく入れても数百円ずれるのは、この基準日の差であることがほとんど。式が間違っているわけではないので、口座の取引ルールで基準の取り方を確認してください。
証拠金維持率は何%を保てば安全ですか?
安全と言い切れる水準はありません。%そのものより、ロスカットまで何円あるかに直したほうが判断できます。
この記事の前提(資金50万円・3万通貨)では維持率256.27%で約13.41円の余裕でしたが、同じ維持率でも数量が変われば値幅は変わります。%は比率、必要なのは距離。この2つを混同しないでください。
スワップポイントが3日分まとめて付く日があるのはなぜですか?
土日は市場が動かないため、その分を平日にまとめて付与する運用になっているからです。多くの会社が原則として水曜日に3日分としています。
ただし通貨ペアによって曜日が異なる場合があり、祝祭日で変則になることもあります。持ち越し日数を厳密に数えたいときは、口座のスワップポイント一覧で付与日数の欄を見るのが確実です。
FXのピボットの計算は、損益計算と関係がありますか?
別物です。ピボットは前日の高値・安値・終値から当日の目安となる価格帯を出すテクニカル指標の計算で、代表的な式は(高値+安値+終値)÷3。
損益や証拠金の計算が「いくらになるか」を確定させるものであるのに対し、ピボットは「どのあたりで反応しやすいか」を推定するもの。使う場面がまったく違うので、混ぜて覚えないほうが整理しやすくなります。
5つの式は、同じ3つの数字を並べ替えているだけだった
計算式を1つずつ暗記しようとすると挫折します。レート、数量、資金の3つがどこに入るのかだけを追えば、5つとも同じ構造だと分かるはずです。
- 資金50万円・米ドル/円162.59円・3万通貨という1つの前提から、5つの式はすべて計算できる
- 損益は1pipsで300円、1円で3万円。必要証拠金はレート × 数量 × 4%で19万5,108円
- 証拠金維持率は50万円 ÷ 19万5,108円で256.27%。ロスカットまでの値幅は維持率50%基準で約13.41円
- ロスカットまでの距離は「資金 ÷ 数量」の比で決まるため、金額の大小そのものは安全性を意味しない
- スワップは1Lot16ポイント(2026年7月24日対象分)なら30Lotで1日480円。数値は日々変わり、水曜に3日分がまとまることもある
まずは自分の口座残高と実際の数量を入れて、この5つを一度だけ手で通してみてください。画面に表示される数字と自分の計算が合った瞬間から、口座の見え方が変わります。
数字が出せるようになったら、次はその数字を出す場所であるチャートの読み方です。FXチャートの見方とリアルタイムチャートの読み方で、値幅を測るための基本的な見方を確認してみてください。

