「スプレッドが狭い口座を選べばコストは下がる、という説明はよく見る。ただ、どの会社も0.2銭と書いてあって、これでは選びようがない」
こういった疑問に答えます。
スプレッドとは、買う価格と売る価格の差のこと。取引手数料が0円の口座でも、往復ごとに必ず払っている実質的な手数料です。国内の主要7サービスを調べると、原則固定が効く時間帯の米ドル/円は0.18銭から0.2銭に並び、数値で差はほとんどつきません。差がつくのは原則固定が効いている時間の長さのほうで、18時間の会社もあれば21時間の会社もあります。1万通貨を月20往復する人なら、同じ通貨ペアでも注文時刻が変わるだけで年4,800円と年14万1,600円に分かれる計算です。
会社ごとの条件をまとめて見比べたい方は主要FX会社の比較ページに取引単位やロスカット水準を一覧にしてあります。
| FX会社(サービス) | 米ドル/円 | 原則固定が適用される時間帯 | その時間帯の外 | 数量・大口の扱い |
|---|---|---|---|---|
| ヒロセ通商 LION FX | 0.2銭 | AM9:00〜翌AM3:00(18時間) | AM3:00〜AM9:00は5.9銭 | 米ドル/円などの大口は原則固定の対象外 |
| JFX MATRIX TRADER | 0.2銭 | AM9:00〜翌AM3:00(18時間) | AM3:00〜AM9:00は5.9銭 | 米ドル/円などの大口は原則固定の対象外 |
| GMOクリック証券 FXネオ | 0.2銭 | 午前9:00〜翌午前3:00(18時間) | 左記以外の時間帯は3.8銭 | 参照ページに数量条件の記載を確認できず |
| DMM FX | 0.2銭 | コアタイム午前9時〜翌午前5時(20時間) | 午前5時〜午前9時は0.2〜3.9銭 | 参照ページに数量条件の記載を確認できず |
| 外為どっとコム 外貨ネクストネオ | 0.2銭 | 午前9時〜午前3時(18時間) | それ以外は0.2〜8.0銭 | 掲載表の対象は1,000Lot以下 |
| みんなのFX | 0.2銭 | AM8:00〜翌日AM5:00(21時間) | 左記以外の時間帯は3.9銭 | 通常ペアとLIGHTペアで取引上限等が異なる旨の記載 |
| SBI FXトレード | 0.18銭 | コアタイムAM9:00〜翌AM3:00(18時間) | AM3:00〜AM9:00は0.18〜18.80銭 | 注文数量1〜1,000,000通貨まで |
※いずれも2026年7月時点の各社公表値で、原則固定(例外あり)としての掲載です。数値の小ささで順位をつける意図はありません。最新の条件は各社の公式サイトで確認してください。
スプレッドは請求書が届かない手数料で、取引手数料0円の口座でも払っている
スプレッドとは、同じ瞬間に表示されている買う価格と売る価格の差です。米ドル/円で買う価格が162.592円、売る価格が162.590円なら、差の0.002円がスプレッド。銭に直せば0.2銭になります。
厄介なのは、この金額がどこにも明細として出てこないこと。取引報告書には手数料0円と印字され、コストは損益の中に溶けています。
たとえばヒロセ通商のLION FXは、取引要綱で取引手数料を0円と明記しています(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)。手数料0円は事実ですが、コストがゼロという意味ではありません。株式売買のように取引ごとの手数料を取らない代わりに、価格の差として先に受け取る仕組み。ここが株や投資信託との一番大きな違いかなと思います。
なぜ価格が2つあるのか、どちらが自分の建値になるのかを先に押さえておくと、この記事の数字がそのまま腹に落ちます。土台の部分はBidとAskの違いとFXレートの見方で4象限に整理しました。
1往復につき1回。片道で2回数えると、コストは実際の倍になる
ここは誤解が多いので、先に潰しておきます。スプレッドは片道ごとに発生するものではなく、新規から決済までの1往復につき1回だけ発生します。
理由は価格の使われ方にあります。買いで入るときはAsk、決済で出るときはBid。この2つの価格の差が、往復を終えたときに1回ぶん損益に乗る形です。片道でAskとBidの両方を使うわけではありません。
米ドル/円で0.2銭、1万通貨なら1往復20円。これを「片道20円だから往復40円」と数えると、コストの見積もりが常に2倍にふくらみます。年間の想定コストを出すときに、この誤差はかなり効いてきます。
覚え方は単純で、ポジションを開いて閉じたら1回。数えるのは往復数であって、注文の件数ではないということ。
「原則固定」の但し書きは、時間帯・数量・市場環境の3つに分けて読む
各社が掲げる原則固定という言葉には、必ず例外が添えられています。バラバラに見える注記も、分類すると3種類しかありません。
| 但し書きの種類 | 中身 | 読者側でできること |
|---|---|---|
| 時間帯 | 適用時間の外では単一値かレンジの別の数値に切り替わる | 自分が取引する時刻が適用時間に入るかを確認する |
| 数量・銘柄 | 大口やラージ、一定Lot超は原則固定の対象外 | 建てる数量が表の対象範囲に収まるかを確認する |
| 市場環境 | 経済指標発表前後、流動性の低下、天変地異など | 発表カレンダーを見て、その時間を避ける |
3つ目の市場環境については、書きぶりに濃淡があります。DMM FXは適用除外となる場面として、リーマンショックや東日本大震災のような突発的な事象、市場の流動性が低下している場合として月曜日の午前7時から午前8時頃、夏時間の午前6時前後、年末年始やクリスマス時期など、経済指標の発表前後の時間帯、カバー先等から受信するレートのスプレッドが拡大した場合を挙げています(DMM FX「スプレッド」)。具体的な曜日と時刻まで書いてある例です。
SBI FXトレードも同じ構造で、市場の急変時、市場の流動性が低下している状況として週初や週末、年末年始、クリスマス時期など、重要指標発表時間帯などを挙げています(SBI FXトレード「スプレッド」)。GMOクリック証券は、市場の急変時として震災などの天変地異、各国中央銀行の市場介入、その他外部要因を挙げる書き方をしています(GMOクリック証券「FXネオ スプレッド・取引手数料」)。
2つ目の数量条件も見落とされがちです。外為どっとコムの掲載表は1,000Lot以下が対象と明示されています(外為どっとコム「スプレッド」)。SBI FXトレードは注文数量1通貨から1,000,000通貨までを掲載表の対象としており、ヒロセ通商とJFXは米ドル/円などの大口を原則固定の対象外としています。みんなのFXは数量そのものの条件を参照ページで確認できませんでしたが、通常の通貨ペアとLIGHTペアではサービス内容(取引上限等)が一部異なると案内しています(みんなのFX「スプレッド」)。
つまり「0.2銭」という数字は、単体では意味を持ちません。時刻と数量という2つの条件が揃って、初めて自分に適用される値になります。
同じ0.2銭でも、原則固定が効く時間の長さは18時間から21時間まで違う
数値を並べても差がつかないなら、何を比べればいいのか。私は適用時間の長さを見るのが一番実務的だと考えています。
| 適用時間 | 該当するサービス | 公表されている時間帯 |
|---|---|---|
| 21時間 | みんなのFX | AM8:00〜翌日AM5:00 |
| 20時間 | DMM FX | 午前9時〜翌午前5時(コアタイム) |
| 18時間 | ヒロセ通商、JFX、GMOクリック証券、外為どっとコム、SBI FXトレード | おおむね午前9時〜翌午前3時 |
差は最大で3時間です。3時間と聞くと小さく感じるかもしれませんが、これは自分が取引できる時刻に直結します。
みんなのFXはAM8:00から翌日AM5:00を原則固定(例外あり)の時間帯として公表しています。DMM FXのコアタイムは午前9時から翌午前5時。その外側にあたる午前5時から午前9時は、別枠の扱いになります。
朝8時台に画面を開く人、あるいは早朝4時台まで粘る人にとって、この3時間はそのまま条件の違いになります。逆に日中しか触らない人には、どのサービスでも差は出ません。
「では自分はどこを見ればいいのか」と思うかもしれません。答えは、自分が過去1か月に注文を出した時刻を思い出すこと。その時刻が適用時間の中に入っている会社を候補にする。それだけで選択肢は自然に絞られます。
時間帯の外側の数値は、単一値とレンジの2通りで公表されている
適用時間の外で何が起きるのか。7サービスとも数値そのものは出していますが、出し方が2つに割れます。
ヒロセ通商とJFXは、単一の数値を出す方式です。両社とも米ドル/円をAM9:00〜翌AM3:00は0.2銭、AM3:00〜AM9:00は5.9銭として公表しています(ヒロセ通商「LION FXスプレッド情報」、JFX「スプレッド」)。GMOクリック証券は午前9:00から翌午前3:00の外を3.8銭、みんなのFXはAM8:00〜翌日AM5:00の外を3.9銭と、いずれも1つの数字で示しています。
残る3社はレンジ方式。DMM FXは午前5時から午前9時を0.2〜3.9銭、外為どっとコムはメンテナンス時間を除くそれ以外の時間帯を0.2〜8.0銭、SBI FXトレードはコアタイム外のAM3:00〜AM9:00を0.18〜18.80銭としています。幅の下限がコアタイムと同じ値のままである点は、条件次第では日中と変わらない場合があることを意味します。
裏を返せば、上限のほうは日中の数十倍まで見ておく必要があるということ。SBI FXトレードの上限18.80銭は、同社のコアタイム0.18銭の約104倍にあたります。
ここは正直に評価しておきたいところです。5.9銭や8.0銭、18.80銭という数字を出している会社が高い、という読み方は的外れ。むしろ外側まで数字を出しているぶん、事前に見積もれる材料が多いという見方のほうが実態に近いはずです。
1万通貨を月20往復すると、時間帯だけで年13万6,800円の差がつく
抽象論を続けても仕方がないので、金額に落とします。前提を先に置きます。
- 通貨ペアは米ドル/円、1回あたりの取引数量は1万通貨
- 適用レートは2026年7月21日17時時点の162.59円台を基準とする(日本銀行「外国為替市況(日次)」)
- 取引頻度は月20往復、年間240往復
- スプレッドは公表値どおりに約定したと仮定し、スリッページは考慮しない
| 適用されるスプレッド | 1往復のコスト | 月20往復 | 年240往復 |
|---|---|---|---|
| 0.18銭 | 18円 | 360円 | 4,320円 |
| 0.2銭 | 20円 | 400円 | 4,800円 |
| 3.8銭 | 380円 | 7,600円 | 9万1,200円 |
| 3.9銭 | 390円 | 7,800円 | 9万3,600円 |
| 5.9銭 | 590円 | 1万1,800円 | 14万1,600円 |
| 8.0銭 | 800円 | 1万6,000円 | 19万2,000円 |
| 18.80銭 | 1,880円 | 3万7,600円 | 45万1,200円 |
0.2銭と5.9銭の差は、月で1万1,400円、年で13万6,800円。同じ会社、同じ通貨ペア、同じ数量で、違うのは注文を出した時刻だけです。表の最終行にある18.80銭は、レンジ方式で公表されている上限値。この幅まで広がった状態で同じ回数を打てば、年45万1,200円まで届きます。
重さを実感するために、証拠金と比べてみます。1万通貨の取引金額は162万5,900円で、個人の店頭FXでは取引金額の4%以上の証拠金を預かることが業者に義務づけられているため、必要証拠金は約6万5,036円(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。5.9銭が適用される時間帯で月20往復すると、コストは必要証拠金の18.1%に達します。
一方、0.2銭なら必要証拠金の0.62%。回数も数量も同じなのに、負担率が29倍ほど変わる計算です。
約定の質まで含めて口座を絞り込みたい方は、約定力で選ぶFXスキャルピング口座の比較で公表値の出し方まで並べています。回数を打つスタイルなら、そちらの4項目と本記事の適用時間を重ねて見てください。
会社間の0.02銭を比べるなら、往復回数を掛けた金額に直してから見る
最後に、会社間の数値差がどれくらいの金額なのかを確かめておきます。序列の話ではなく、比較に意味があるかどうかの検算です。
SBI FXトレードの0.18銭と、他社の0.2銭。差は0.02銭です。1万通貨で月20往復した場合、360円と400円で、差は月40円になります。
同じ条件で、時間帯によるコスト差は月1万1,400円でした。会社間の差40円に対して、時間帯の差は285倍。桁が2つ違います。
だからこの記事では、表の数値に順位を付けませんでした。0.02銭を追いかけるより、自分が取引する時刻が適用時間に入っているかを確かめるほうが、金額として何倍も効くからです。
もちろん例外はあります。1日に何百回も往復する人なら、0.02銭の差も積み上がって無視できなくなる。ただ、その領域に入る前に確認すべきなのは、やはり適用時間と数量条件のほうです。
FXのスプレッドと手数料について、口座を決める前によく調べられる疑問
数値の読み方はここまでで揃いました。とはいえ、申し込みの直前になると細かい部分が気になるもの。調べられることの多い5つを取り上げます。
FXのスプレッドって何ですか?
同じ瞬間に表示されている買う価格と売る価格の差です。米ドル/円で買う価格162.592円、売る価格162.590円なら、差の0.2銭がスプレッド。
これがFXの実質的な手数料にあたります。取引手数料0円の口座でも、往復するたびにこの差だけ損益が目減りする、と考えてください。
スプレッドは片道と往復のどちらでかかりますか?
1往復につき1回です。買うときにAsk、決済でBidを使うので、その差が往復を終えた時点で1回ぶん乗ります。
片道ごとに発生すると考えると、コストの見積もりが倍になってしまいます。年間コストを計算するときは、注文件数ではなく往復数を数えてください。
低スプレッドの口座を選べば、手数料は本当に安くなりますか?
自分が取引する時刻が適用時間に入っている場合に限り、安くなります。時間帯の外に出ると、公表値とはまったく別の数値が適用されます。
この記事の試算では、会社間の数値差が月40円だったのに対し、時間帯の差は月1万1,400円でした。比較の軸を数値だけに置くと、この差を見落とします。
スプレッドが広がりやすいのは、具体的にいつですか?
各社が挙げているのは、経済指標の発表前後、市場の流動性が低下する時間帯、そして天変地異や中央銀行の介入といった突発的な事象です。
流動性の低下について、DMM FXは月曜日の午前7時から午前8時頃、夏時間の午前6時前後、年末年始やクリスマス時期を具体例として挙げています。曜日と時刻まで書かれているぶん、避ける計画も立てやすいはず。
原則固定と完全固定は、同じ意味ですか?
違います。国内各社が使っているのは原則固定という表現で、いずれも例外ありの注記が添えられています。
たとえばヒロセ通商とJFXは、流動性の低い時間帯や経済指標発表時等の例外的な事象、さらに天変地異等の突発的な事象によってはスプレッドが広がり、約定結果が掲載値と合致しない場合があると明記しています(JFX「スプレッド」)。固定という語が付いていても、常時その値という保証ではありません。
スプレッドは数値より、その数値が効いている条件を先に読む
国内の主要サービスを並べて分かったのは、米ドル/円の数値がすでに横並びだということでした。差がつくのは数字そのものではなく、その数字がいつ、どの数量まで適用されるかという条件のほうです。
- スプレッドは買う価格と売る価格の差で、取引手数料0円の口座でも払っている実質的な手数料
- 発生は1往復につき1回。片道で2回数えるとコストの見積もりが倍にふくらむ
- 原則固定の但し書きは、時間帯・数量や銘柄・市場環境の3種類に分けて読む
- 原則固定が効く時間は18時間から21時間まで幅があり、自分が触る時刻と重なるかで実質コストが決まる
- 1万通貨を月20往復した場合、0.2銭なら年4,800円、5.9銭なら年14万1,600円で、差は13万6,800円
口座を選ぶ前に、自分が過去1か月に注文を出した時刻を書き出してみてください。その時刻が適用時間に入っている会社だけを候補にすれば、比較する対象は数社まで減ります。
コストを決めるもう1つの要素が、注文の出し方です。指値と成行では価格の決まり方が違うため、指値逆指値からIFDOCOまでのFX注文方法で、自分のスタイルに合う注文の型を先に決めておいてください。

