「1分足のスキャルピングで、1日どれくらいのpipsを狙えるものなんだろう。数秒で抜ける秒スキャも気になるけれど、自分に向いているのか分からない」
こういった疑問に答えます。
1分足スキャルピングで現実的に届くのは、1日2〜8pipsです。1回3〜5pipsの利幅を20回前後積み、勝率55〜60%を保ったときの計算値がこの範囲に収まります。地味な数字に見えるとしたら、それは狙う値幅を小さくするほどスプレッドが利益を削る比率が跳ね上がるから。1回10pipsを狙うならコストは利益の2.0%ですが、3pipsまで縮めた瞬間に6.7%へ膨らみます。
取引回数が多い手法ほど、口座のコストと約定環境が成績にそのまま出ます。各社の条件を先に見比べておきたい方は、主要FX会社の比較ページにスプレッドや取引単位を一覧にまとめました。
| 項目 | この記事の結論 |
|---|---|
| 1回で狙う値幅 | 3〜5pips。1分足の値動きに対して欲張らない幅 |
| 1日の取引回数 | 10〜20回。時間帯を絞って回数を作る |
| 1日の目標pips | 2〜8pips。まずは5pipsを上限の目安に置く |
| 損益分岐勝率 | 3pips狙いで53.3%、5pipsで52.0%、10pipsで51.0% |
| コストが利益に占める比率 | 3pipsで6.7%、5pipsで4.0%、10pipsで2.0% |
| 時間足の使い分け | 方向は5分足、入る場所は1分足 |
| 損切り | 直近の高値安値の外側。利確と同じかやや広い幅 |
| 秒スキャの適性 | 数秒で判断と発注ができる人限定。全員向けではない |
1分足スキャルピングは、1回3〜5pipsを何度も積み上げる取引
1分足は、ローソク足1本が1分ぶんの値動きを表すチャートです。この足を見ながら数十秒から数分で決済していくのが、1分足スキャルピングと呼ばれる手法。
まず単位をそろえておきます。pipsは値動きの最小単位を指す言葉で、米ドル/円なら1pipsは0.01円、つまり1銭にあたります。1万通貨を建てていれば1pipsは100円、1,000通貨なら10円です。
「1回3pipsなんて小さすぎないか」と思うかもしれません。ただ、1分足で狙える値幅はもともとそこまで大きくないのが実情。20pipsを1回で取りにいく発想は、この時間足では最初から捨てたほうが早い。
そのかわり回数で稼ぎます。1回の利益が小さい手法は、勝ちの大きさではなく「取引1回あたりの期待値がプラスかどうか」だけで結果が決まる、と考えてください。
狙う値幅が小さいほど、スプレッドが利益に占める比率は跳ね上がる
ここが1分足スキャルピングで最初に理解すべき構造です。数字で確かめます。
前提を明示します。日本銀行の外国為替市況によると、2026年7月21日17時時点の米ドル/円は162.59円台でした(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。取引数量は1万通貨とし、1pipsを100円として計算します。
スプレッドは会社ごとに異なり、常に一定というわけでもありません。ヒロセ通商もJFXも、流動性の低い時間帯や指標発表時などにはスプレッドが広がる場合がある旨を公式ページに注記しています(ヒロセ通商「スキャルピングに強いFX取引ならLION FX」)。そこで、平常時を0.2pips、広がった場面を1.0pipsと置いて、2通りで試算します。
まずは平常時の0.2pipsから。
| 狙う値幅 | 値幅の金額 | スプレッド負担 | 手取り | コストが占める比率 |
|---|---|---|---|---|
| 3pips | 300円 | 20円 | 280円 | 6.7% |
| 5pips | 500円 | 20円 | 480円 | 4.0% |
| 10pips | 1,000円 | 20円 | 980円 | 2.0% |
計算はシンプルで、スプレッド0.2pipsを狙う値幅で割るだけ。3pips狙いなら0.2÷3で6.7%、5pips狙いなら0.2÷5で4.0%、10pips狙いなら0.2÷10で2.0%になります。
同じ0.2pipsを払っているのに、狙う幅を10pipsから3pipsへ縮めただけで負担の比率は3.3倍。スプレッドが動いたわけではなく、分母を自分で小さくしただけという点が重要です。
では、そのスプレッドが1.0pipsまで広がるとどうなるか。
| 狙う値幅 | 値幅の金額 | スプレッド負担 | 手取り | コストが占める比率 |
|---|---|---|---|---|
| 3pips | 300円 | 100円 | 200円 | 33.3% |
| 5pips | 500円 | 100円 | 400円 | 20.0% |
| 10pips | 1,000円 | 100円 | 900円 | 10.0% |
3pips狙いでは、利益の3分の1が消えました。10pips狙いなら10.0%の目減りで済むので、同じ広がり方でも受けるダメージがまるで違うということ。
この差は勝率の要求水準にも表れます。利確幅と損切り幅を同じにした場合、勝ちは「値幅マイナス0.2pips」、負けは「値幅プラス0.2pips」になるため、損益がゼロになる勝率は3pips狙いで3.2÷6.0の53.3%、5pips狙いで5.2÷10.0の52.0%、10pips狙いで10.2÷20.0の51.0%です。
小さく取る手法ほど、2ポイント以上高い勝率を要求される。1分足スキャルピングが「難しい」と言われる理由の半分は、相場の読みではなくこの計算式にあります。
1日に狙えるのは2〜8pips。取引回数と勝率から逆算するとこうなる
「1日何pips狙えばいいのか」は、この手法で最も多く聞かれる問いです。回数と勝率を置けば、答えは計算で出せます。
前提は利確3pips、損切り3pips、スプレッド0.2pipsとします。1回あたりの期待値は「勝率×2.8pips」から「負ける確率×3.2pips」を引いた値。勝率55%なら1.54から1.44を引いて0.10pips、勝率60%なら1.68から1.28を引いて0.40pipsになります。
これに1日の取引回数を掛けたものが下の表です。
| 1日の取引回数 | 勝率50% | 勝率55% | 勝率60% |
|---|---|---|---|
| 10回 | -2.0pips | +1.0pips | +4.0pips |
| 20回 | -4.0pips | +2.0pips | +8.0pips |
| 30回 | -6.0pips | +3.0pips | +12.0pips |
1万通貨で回すなら、20回の取引で勝率55%なら1日200円、勝率60%なら1日800円。月20営業日で4,000円から1万6,000円という水準です。
同時に押さえておきたいのがコストの総額。20回取引すれば0.2pips×20回で4pipsを毎日払う計算になり、勝率55%で残る2pipsのちょうど倍にあたります。手元に残る額より、支払う額のほうが大きい構造だということ。
だから答えはこうなります。1日に狙うのは2〜8pipsが現実的で、最初は5pipsを「上限の目安」として置くのが安全です。勝率50%では回数を増やすほど負けが積み上がるため、回数から先に増やす発想は逆効果になります。
なお、日本の個人FXがそもそも回転前提の市場である点は統計にも出ています。金融先物取引業協会の店頭FX月次速報では、2026年6月の個人向け店頭FXの取引金額が6,675,552億円、建玉合計が111,265億円でした(金融先物取引業協会「店頭FX月次速報」)。取引金額は建玉のおよそ60倍。短期売買を選ぶ人が多いこと自体は、統計と整合しています。
方向は5分足で決め、1分足は入る場所を探すためだけに使う
1分足だけを見ていると、上と下の両方に理由が見えてしまいます。往復で切られる人の大半は、方向を決める足を持っていないだけ。
2つの時間足に役割を割り振ります。
| 時間足 | 役割 | 見るもの | ここで下す判断 |
|---|---|---|---|
| 5分足 | 方向を決める | 直近の高値安値の切り上げ切り下げ、移動平均線の傾き | 買いか売りか、それとも休むか |
| 1分足 | 入る場所を決める | 押しや戻りが止まった位置、その足の高安 | どこで発注し、どこで損切るか |
順番は必ず5分足からです。5分足が上向きなら買いだけを探し、下向きなら売りだけを探す。どちらとも言えない形なら、その時間は取引しないのが正解。
「休む」を選択肢に入れられるかどうかで、1日の成績はかなり変わります。方向が曖昧な場面での取引は、期待値の計算そのものが成立しないからです。
5分足側の型については、時間足ごとの組み立てを別記事に分けています。この記事では1分足の執行に話を絞ります。
エントリーは押し目の1回に絞り、損切りは直近の高安の外側に置く
型はできるだけ少なく。1分足で覚えるのは、次の1つで足ります。
5分足が上向きであることを確認したら、1分足で価格が移動平均線まで押してくるのを待つ。押しが止まった足を確認し、その足の高値を上に抜けたところで買う。損切りは直近安値の1〜2pips外、利確は3〜5pips。売りはこの逆です。
抜けた瞬間に飛び乗らないこと。1分足は上下のヒゲが伸びやすく、抜けたように見えて戻る形が頻発します。足が確定するまで待つと機会は減りますが、勝率の数ポイントはここで守れます。
損切り幅を利確幅より広げたくなる気持ちは分かります。ただ、3pips利確で10pips損切りにすると、必要な勝率は先ほどの53.3%から一気に跳ね上がる。損切りだけを緩めるのは、計算上いちばん割に合わない調整です。
なお、自分で置く損切りと、業者が行うロスカットは別物です。金融先物取引業協会の解説によれば、個人顧客と取引する業者には2010年2月1日からロスカットルールの整備と遵守が義務づけられており、証拠金の区分管理も同日から信託に一本化されています(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。ロスカットは最後の安全装置であって、スキャルピングの損切り計画の代わりにはなりません。
取引回数は動く時間帯に寄せる。東京時間の午前に20回は作れない
1日20回という数字を見て「一日中チャートの前にいる必要がある」と受け取った人は、まず続きません。実際にやることは、動く2〜3時間に回数を寄せる作業です。
値幅の出ない時間に無理やり回数を作ると、3pipsに届かないまま横ばいに巻き込まれます。1分足スキャルピングは値幅がなければ成立しない手法なので、時間帯の選択がそのまま成績になるということ。
逆に、経済指標の発表前後は避ける判断も要ります。先ほどの試算で見たとおり、スプレッドが1.0pipsまで広がる場面では3pips狙いのコスト比率が33.3%まで上がるためです。
どの時間に値幅が出て、指標発表の前後をどう立ち回るかは、スキャルピングに向く時間帯と指標発表時の立ち回りで時間帯ごとに整理しました。回数が作れずに悩んでいる方は、こちらを先に読むと組み立てが早くなります。
秒スキャは数秒で判断と発注ができる人だけの手法で、私は全員には勧めない
秒スキャは、保有時間を数秒から十数秒に切り詰めるやり方を指します。ここは正直に線を引きます。私は、この記事を読んでいる全員にこの手法を勧めません。
理由は3つあります。1つ目は値幅です。数秒しか持たなければ狙える幅は1〜2pipsまで縮み、スプレッド0.2pipsのコスト比率は10.0%から20.0%に上がる。3pips狙いの6.7%と比べても、負担は明らかに重くなります。
2つ目は判断時間。1分足なら足が確定するまで数十秒の猶予がありますが、秒単位の取引にその余裕はありません。値動きを見てから考える時間が構造的に存在しない、という点を軽く見ないでください。
3つ目は環境です。約定が滑れば1pipsの利幅は簡単に消えます。ヒロセ通商は約定スピードを最速0.001秒と示し、注記で平均0.003〜0.005秒としています。JFXは約定率99.99%を公表しており、対象はスリッページ設定をした注文を除く成行注文で、約定した成行注文件数を成行注文数で割って算出した数値です(JFX「約定率について」)。※2026年7月時点の公表内容です。取引条件は改定されることがあるため、公式サイトで最新版をご確認ください。
では誰なら選択肢に入るのか。相場を見られる時間が毎日固定で確保でき、1分足の3pips狙いで3か月ぶんの記録がプラスになっている人。この2つを満たしていないうちは、保有時間を縮める前にやることが残っています。
逆に、注文操作に迷いがある方、仕事の合間にスマートフォンで触る方は、秒スキャを候補から外して構いません。この判断で失うものはほとんどないと考えています。
スキャルピング口座は、公認の明記と約款の禁止行為を先に読む
取引回数が多い手法では、口座側のルールが成績以前の問題になります。確認するのは2点だけ。スキャルピングの扱いが公式に明記されているか、そして約款で何が禁止されているかです。
回数を出す手法である以上、業者の姿勢は先に確かめておきたいところ。JFXの案内ページには「スキャルピングを理由に口座凍結することはありません」という一文があり、1日の取引上限と取引回数の制限を設けていないことも示されています。ただし同じページで、システム売買など約款が禁じる行為が確認された場合は規定に基づいて対応するとも断ってあります(JFX「スキャルピングならJFX」)。
一方、約款の禁止行為を具体的に列挙している会社もあります。外為どっとコムは抵触行為として、短時間に頻繁に行われる取引、複数台のパソコン等で同時ログインし同一タイミングに複数回行われる取引、取引システム以外のツール等を使用した取引、流動性の低い時間帯における多額の取引、流動性にかかわらず継続的に反復する多額の取引の5類型を挙げ、いずれも他の顧客や自社のシステムなどに著しい悪影響を及ぼす行為であることを要件としています(外為どっとコム「取引約款に抵触する行為」)。
公表されている条件を並べると次のとおりです。
| 会社 | スキャルピングの扱い | 約定スピード | 約定率 | 最小取引単位 |
|---|---|---|---|---|
| ヒロセ通商 LION FX | スキャルピング公認と明記 | 最速0.001秒(注記で平均0.003〜0.005秒) | 非公表 | 1,000通貨 |
| JFX | スキャルピングを理由とした口座凍結はないと明記 | 最速0.001秒 | 99.99% | 1ロット1,000通貨(一部通貨ペアは10,000通貨) |
両社とも、上記のページではスプレッドの具体的な数値を示しておらず、完全固定ではない旨の注記を添えています。ヒロセ通商は通貨ペア54種類、1,000通貨単位からの取引に対応していると公式トップページで案内しています(ヒロセ通商 公式サイト)。※2026年7月時点の公表内容です。取引条件は改定されることがあるため、公式サイトで最新版をご確認ください。
正直なところ、月に数回しか取引しないなら、ここまで約定環境にこだわる必要はありません。1日20回を毎営業日続けるつもりなら、この章の確認は省けません。
1分足スキャルピングと秒スキャで、読者からよく出る疑問
計算と型は揃いました。あとは細部の詰めです。検索でよく調べられている4つに答えます。
FXのスキャルピングは1日何pips狙えますか?
利確3pips、損切り3pips、スプレッド0.2pipsの前提なら、1日20回の取引で勝率55%なら2.0pips、勝率60%なら8.0pipsが計算上の到達点です。
つまり現実的なレンジは2〜8pips。1日20pipsや30pipsを毎日という設定は、勝率60%を大きく超え続ける前提が必要になるため、目標としては置かないほうが安全です。
1分足と5分足は、どちらから見るべきですか?
5分足が先です。5分足で方向と「取引するかどうか」を決め、1分足では入る位置と損切り位置だけを決めます。
順番を逆にすると、1分足の細かい上下に方向感を引っ張られます。判断の材料を増やすのではなく、判断の場所を分けるのが狙いだと考えてください。
10秒足でスキャルピングはできますか?
1本を10秒で区切ったチャートを使えるかどうかは、取引ツールの仕様しだいです。標準の時間足として1分足より短い足を用意しているかは会社ごとに違うため、使う前提なら口座を開く前にツールの対応時間足を確認してください。
ただし表示できることと勝てることは別問題。足を短くしても、1〜2pipsの利幅に対してスプレッドが重くのしかかる構造は変わりません。
秒スキャに必要な資金はいくらですか?
金額そのものより、1回の損失額から逆算する順番のほうが大切です。1万通貨で2pipsの損切りなら1回200円、20回で最大4,000円という見積もりになります。
1,000通貨から取引できる口座を使えば、この10分の1で試せます。まず最小単位で3か月記録を取り、期待値がプラスであることを確認してから量を増やす。この順番なら、必要資金は自然に決まります。
1分足スキャルピングで残るのは、値幅とコストの比率を先に決めた人
1分足スキャルピングの難所は、チャートの読み方ではありません。狙う値幅を自分で小さく設定した結果、コストと勝率のハードルが同時に上がるという構造を、どこまで自覚できるかにあります。
- 1回3〜5pipsを20回前後。1日に狙う現実的な範囲は2〜8pipsで、まずは5pipsを上限の目安に置く
- スプレッド0.2pips想定でも、コスト比率は3pips狙いで6.7%、10pips狙いで2.0%と3.3倍の開き
- 損益分岐勝率は3pips狙いで53.3%、10pips狙いで51.0%。小さく取るほど高い勝率が要る
- 方向は5分足、執行は1分足。方向が曖昧な時間は取引しないという選択も型のうち
- 秒スキャは数秒で判断と発注ができ、1分足で記録がプラスの人だけの選択肢
最初の1か月は、pipsではなく取引回数と勝率を記録することをおすすめします。期待値の式に入れる数字が自分の手元に揃ってから、目標を決めれば間に合います。
次に読むなら、同じスキャルピングでも要求される勝率が下がる5分足の型が参考になります。FX5分足スキャルピング手法と勝率を上げる型で、値幅を広げたときに何が変わるかを確認してみてください。

