マイナススワップ対策!両建てとスワップフリーの実際

マイナススワップ対策!両建てとスワップフリーの実際

「売りポジションを持っているだけで、毎日スワップが引かれていく。両建てにすれば相殺できると聞いたけれど、本当だろうか」

こういった疑問に答えます。

マイナススワップは、金利の高い通貨を売って低い通貨を買った側に毎日発生する支払いです。同じ通貨ペアで両建てを組んでも消えません。買いの受取より売りの支払いのほうが大きく設定されているため、組んだ瞬間から一方的に減り続けるほうへ動きます。ヒロセ通商の公表値で計算すると、米ドル/円を2万通貨ずつ両建てした場合の目減りは1日60円、1年で21,900円。さらに国内の登録業者には、スワップフリーを掲げる口座が見当たりませんでした。

スワップの水準や付与ルールは会社ごとに違うので、口座から見直すつもりの方は主要FX会社の比較ページで条件を並べてから判断してください。

対策解決すること解決しないこと実際に取れるか
同一通貨ペアの両建て為替変動による損益の増減を止めるマイナススワップは残り、買いの受取との差額が毎日出ていく取れるが、支払いは増える方向
通貨ペアを変える支払額の絶対値を下げられる狙う相場が入れ替わり、値動きのリスクは別物になる取れる。ただし相場観の変更を伴う
保有期間を短くするニューヨーククローズをまたがなければ発生自体がなくなる日をまたぐ手法そのものが使えなくなる取れる。唯一ゼロにできる方法
数量を減らす支払額が通貨量に比例して下がる1通貨単位あたりの条件は変わらない取れる。効果は比例分だけ
スワップフリー口座理屈のうえでは発生自体をなくす国内の登録業者では該当するサービスを確認できず現時点では選択肢にならない

マイナススワップは金利差が逆を向いた側に、毎日自動で発生する

スワップポイントの正体は、2つの通貨の金利差です。GMOクリック証券は「2つの通貨間の金利差のことを『スワップポイント』といいます」と説明し、高金利通貨を売って低金利通貨を買う場合には支払いが生じると明記しています(GMOクリック証券「日々金利差分を受け取れるスワップポイントとは?」)。

つまりマイナススワップは、事故でもペナルティでもありません。金利の向きに対して逆方向のポジションを取った時点で、必然的に発生する側に回るということ。

数字で確かめます。日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました(日本銀行「金融市場調節方針の変更(2026年6月金融政策決定会合)」)。一方の米国は、2026年6月17日のFOMCでフェデラルファンド金利の誘導目標を3.50〜3.75%に据え置いています(FRB「Federal Reserve issues FOMC statement(2026年6月17日)」)。

金利が高いのはドルの側。だから米ドル/円を買えば受け取る側、売れば支払う側に回ります。円高を狙って米ドル/円を売る人は、相場観の正しさとは無関係に、毎日の支払いを引き受けることになる。

「では金利が逆転すれば受取に変わるのか」と思うかもしれません。理屈のうえではその通りです。ただし政策金利は年に数回しか動かず、しかも動く方向を個人が先回りして当て続けるのは現実的ではありません。マイナススワップは、しばらく付き合う前提の数字だと考えてください。

誰が払っているのかの答えは、金利差そのものと会社の取り分の2階建て

マイナススワップを調べる人がいちばん引っかかるのは、「この支払いは誰の懐に入るのか」という点でしょう。

答えは2層に分かれます。1層目は金利差そのもの。円を借りてドルを持つ側は金利差を受け取り、その逆はその分を負担する。ここまでは市場の構造です。

2層目が会社の取り分です。同じ通貨ペア・同じ日でも、買いの受取額と売りの支払額は一致していません。ヒロセ通商が2026年7月22日更新として公表している一覧を、そのまま並べます(ヒロセ通商「LION FXスワップポイント」)。

通貨ペア買い(3日分)売り(3日分)売りは買いの何倍か1Lotの通貨数
米ドル/円48円-57円1.19倍1,000通貨
ユーロ/円22.5円-28.5円1.27倍1,000通貨
豪ドル/円30.6円-35.1円1.15倍1,000通貨
NZドル/円15円-22.5円1.50倍1,000通貨
ポーランドズロチ/円9.9円-12円1.21倍1,000通貨
トルコリラ/円7.2円-8.7円1.21倍1,000通貨
南アフリカランド/円4.2円-5.7円1.36倍1,000通貨
メキシコペソ/円42円-57円1.36倍10,000通貨
中国人民元/円6円-30円5.00倍10,000通貨

※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。表の数値は付与日数3日分の表記で、メキシコペソ/円と中国人民元/円だけが1Lot=10,000通貨、それ以外は1Lot=1,000通貨です。

右から2列目を見てください。米ドル/円の1.19倍から中国人民元/円の5.00倍まで、開きは通貨ペアごとにまるで違います。金利差が同じでも受取と支払いが非対称になるのは、この差が会社側に残る設計だからです。

外為どっとコムは同じ数字を「金利差調整額」と呼び、2026年6月時点の政策金利としてトルコ37.00%、メキシコ6.50%、南アフリカ7.00%、日本1.00%を掲載しています(外為どっとコム「金利差調整額『スワップポイント』」)。調整額という言い方のほうが実態に近いと私は思います。銀行の利息のように誰かが確実に払ってくれるものではなく、会社との間で日々やり取りされる差額にすぎません。

高金利通貨ほど支払いも大きくなるとは限らない点も、上の表から読み取れます。通貨ごとの重さの違いについては南アフリカランドのスワップ運用とランド円の注意点で、1通貨あたりの単価から整理しました。

2万通貨の両建ては、米ドル/円で公表値どおりなら毎日60円ずつ減っていく

ここが本題です。同じ通貨ペアの買いと売りを同時に持てば、受取と支払いが相殺されて実質ゼロになる。そう説明されることがあります。

先ほどの公表値で検算します。前提は3つ。買いと売りをそれぞれ2万通貨ずつ保有すること、公表値が3日分表記なので3で割って1日あたりに直すこと、1Lotの通貨数で割って2万通貨ぶんに換算することです。

米ドル/円で追いかけます。1Lotは1,000通貨なので2万通貨は20Lot。買いは48円×20÷3で1日320円の受取、売りは57円×20÷3で1日380円の支払い。合計は1日60円のマイナスになります。

同じ手順で全通貨ペアを並べました。

通貨ペア買いの受取(1日)売りの支払い(1日)合計(1日)30日365日
米ドル/円320円-380円-60円-1,800円-21,900円
NZドル/円100円-150円-50円-1,500円-18,250円
ユーロ/円150円-190円-40円-1,200円-14,600円
豪ドル/円204円-234円-30円-900円-10,950円
中国人民元/円4円-20円-16円-480円-5,840円
ポーランドズロチ/円66円-80円-14円-420円-5,110円
トルコリラ/円48円-58円-10円-300円-3,650円
南アフリカランド/円28円-38円-10円-300円-3,650円
メキシコペソ/円28円-38円-10円-300円-3,650円

合計の列に、プラスの行が1つもありません。9通貨ペアすべてでマイナスです。両建てで相殺されるのは為替差損益だけであって、スワップは相殺されずに差額が残る。ここは断言します。

前提の置き方も書いておきます。2026年7月22日の水準が変わらないと仮定し、1か月を30日・1年を365日として単純に掛けました。祝日でロールオーバーが行われない日は考慮していません。実際の額は毎営業日動きます。

両建てそのものの使いどころや証拠金の扱いはFXの両建てとは何かと禁止と言われる理由に分けて書きました。この記事はスワップの側面だけを扱っています。

年間21,900円の目減りは、必要証拠金13万72円の16.8%にあたる

金額の絶対値だけ見ると、1日60円は小さく感じるかもしれません。比率に直すと印象が変わります。

日本銀行の外国為替市況によれば、2026年7月21日17時時点の米ドル/円は162.59円台でした(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。このレートで2万通貨の取引金額は約325万1,800円。個人向けの証拠金率は取引金額の4%以上と義務づけられているので(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)、必要証拠金は約13万72円になります。

年間21,900円は、この13万72円の16.8%。値動きを止めているだけで、1年で証拠金のおよそ6分の1が消える計算です。

pipsにも直しておきます。2万通貨なら1pipsは200円なので、21,900円は109.5pips。30日でも9.0pips、90日で27.0pipsです。米ドル/円で109.5pipsといえば約1.1円ぶんの値幅。両建てを1年続けるのは、1.1円の逆行を最初から確定させておくのと同じことになります。

「それでも損失が広がらないなら安いのでは」と感じる方もいるはずです。私はここで一度立ち止まってほしいと思っています。両建ては損失を止めているのではなく、含み損を固定したまま毎日の支払いを追加している状態。時間が経つほど不利になる構造であることは、上の数字がそのまま示しています。

通貨ペアを変えると支払額は下がるが、抱えるリスクは別物に入れ替わる

対策の2つめは、マイナススワップの小さい通貨ペアに移ることです。効果はあります。ただし効果の中身を誤解しないでください。

売りポジションだけを2万通貨持った場合の年間支払額を並べます。

通貨ペア売り(1日)30日365日
米ドル/円-380円-11,400円-138,700円
豪ドル/円-234円-7,020円-85,410円
ユーロ/円-190円-5,700円-69,350円
NZドル/円-150円-4,500円-54,750円
ポーランドズロチ/円-80円-2,400円-29,200円
トルコリラ/円-58円-1,740円-21,170円
南アフリカランド/円-38円-1,140円-13,870円
メキシコペソ/円-38円-1,140円-13,870円
中国人民元/円-20円-600円-7,300円

同じ2万通貨の売りでも、米ドル/円の138,700円と中国人民元/円の7,300円では約19倍の差。数字だけ見れば、支払いを嫌うなら人民元を売ればよいという話になります。

しかし2万米ドルと2万人民元では、円換算した元本がまるで違います。162.59円で換算した2万米ドルは約325万円。同じ通貨量でも動く金額が違う以上、支払額だけを比べても意味がありません。

通貨ペアの変更は、コスト削減ではなく戦う相場の入れ替えです。ドル円の下落を狙っていた人が、支払いを嫌って人民元の売りに移ったとして、その相場を読める根拠はどこにもない。ここは正直に書きますが、マイナススワップを理由に通貨ペアを選ぶのは順番が逆だと思います。

保有期間を短くする方法だけが、支払いをゼロにできる

3つめの対策は、そもそも日をまたがないことです。これだけが発生自体を消せます。

みんなのFXは付与条件を明示しています。ポジションを保有するだけでもらえるが、ニューヨーククローズをまたいで保有する必要があり、ポジションを持った日のニューヨーククローズ前に決済した場合はスワップが付与されないと書かれています(みんなのFX「スワップについて」)。判定時刻はニューヨーク市場クローズの日本時間午前6時50分、サマータイム中は5時50分と案内されています(みんなのFX「スワップポイントとは?」)。

裏を返せば、その時刻より前に決済していればマイナススワップは発生しません。デイトレードやスキャルピングでマイナススワップの話がほとんど出てこないのは、この一点によります。

ただし、またぐ回数の数え方は会社で違います。外為どっとコムは、付与日数を曜日ではなくインターバンク市場の受渡日で決めると説明しており、取引日の2営業日後の受渡日が何日繰り延べられるかによって日数が決まる、各国の祝日でも受渡日は繰り延べられるため通貨ごとに日数が異なると明記しています(外為どっとコム「スワップポイント付与ルール」)。週末や祝日を挟むと、1泊のつもりが3日分を支払う形になることもあるということ。

現実的な線引きはこうなります。数時間から1日で手じまいする手法なら、マイナススワップは考えなくてよい。数週間持つ手法なら、支払いを織り込んだ設計にするしかない。この2つの中間に、うまい抜け道はありません。

国内の登録業者に、スワップフリーを掲げる口座は見当たらなかった

最後の対策として名前が挙がるのがスワップフリー口座です。スワップの受け払いが発生しない口座を指す言葉として使われています。

結論から書きます。国内の主要9社の公式ドメインに絞って調べましたが、スワップフリーやスワップなしを掲げるサービスページは確認できませんでした。金の取引に限定した口座についても同様で、該当するページは見つかっていません。したがって、国内の登録業者から選ぶ範囲では現時点の選択肢になりません。

この語を掲げる業者が海外に存在するという説明は見かけます。ただ、そこへ口座を移す前に確かめてほしいことがあります。スワップを払わなくて済む代わりに、その口座で何かあったときに誰が守ってくれるのか。当局は、日本の規制を超える条件を売り物にする海外の無登録業者について、問題が起きたあとの追及は極めて困難だとしています(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。実際に寄せられている相談も、出金を断られる、法外な手数料を取られる、連絡が途絶える、という内容が並びます(金融庁「無登録業者との取引は要注意」)。年間2万円のマイナススワップと引き換えにする話ではありません。

当サイトでは、金融庁の登録を受けていない業者は検討の対象に含めません。日々のスワップ数十円を避けるために、預けた資金そのものを取り戻せない可能性を負うのは、比べる対象として釣り合っていないからです。

なお、国内でもスワップの上乗せを公表しているサービスはあります。SBI FXトレードのつみたて外貨は、スワップポイントを一律5%増額し人気通貨は最大20%増額すると案内しています(SBI FXトレード「スワップポイントを活用する(つみたて外貨)」)。これは買いポジションの受取を増やす仕組みであって、売り側のマイナスを消すものではありません。同ページにも、金利情勢によってはスワップポイントがマイナスになる場合がある旨の注記が付いています。

マイナススワップと両建てについてFX口座を開く前に多い質問

ここまでで、対策として挙がる4つのうち3つが「減らす」までしかできず、ゼロにできるのは保有期間の短縮だけだと分かったはずです。残りは実務で引っかかりやすい部分に答えます。

マイナススワップは誰が受け取っているのですか?

取引の相手方であるFX会社との間でやり取りされます。銀行預金の利息のように、外部の誰かが確実に払ってくれるものではありません。

金利差そのものに加えて、買いの受取額と売りの支払額の差が会社側に残る設計になっています。ヒロセ通商の公表値では、その差は米ドル/円で1.19倍、中国人民元/円で5.00倍と通貨ペアによってかなり違いました。

両建てにすればマイナススワップは相殺されますか?

されません。相殺されるのは為替変動による損益だけです。

2万通貨ずつの両建てを公表値で計算すると、米ドル/円で1日60円、365日で21,900円のマイナスが残りました。9通貨ペアすべてで同じ向きの結果になっています。

決済しないままマイナススワップだけ払うことはできますか?

会社によって扱いが分かれます。セントラル短資FXは、スワップを原則として建玉の持越日のメンテナンス時間中に未決済スワップへ反映すると公表しています(セントラル短資FX「スワップポイント(FXダイレクトプラス)」)。

未決済のまま増減する形式なら、口座の余力は日々削られていきます。値動きが完全に止まっていても有効証拠金は減るので、長期の両建てはロスカット水準へゆっくり近づく点に注意してください。

スワップフリーの国内口座はどこにありますか?

調べた範囲では見つかりませんでした。国内主要9社の公式ドメインに、スワップフリーやスワップなしを掲げるサービスページは存在しません。

「あるはずだ」という前提で探し続けるより、保有期間か通貨ペアの側で調整するほうが早いと思います。海外の無登録業者は、当サイトでは検討の対象に含めていません。

マイナススワップは消す対象ではなく、方向と日数で管理する数字

対策という言葉から想像されるのは、支払いを打ち消す仕掛けでしょう。しかし公表値を並べたかぎり、そういう仕掛けは存在しませんでした。動かせるのは、どちらの方向に建てるか、何泊するか、どれだけの量を持つかの3つだけです。

  • マイナススワップは金利差が逆向きのポジションに毎日発生し、支払先は取引の相手方であるFX会社
  • 買いの受取と売りの支払いには差があり、ヒロセ通商の公表値では米ドル/円1.19倍から中国人民元/円5.00倍まで開く
  • 2万通貨の両建ては米ドル/円で1日60円、365日で21,900円のマイナスとなり、必要証拠金13万72円の16.8%にあたる
  • 通貨ペアの変更は支払額を下げるが、円換算の元本と相場そのものが入れ替わる
  • 発生をゼロにできるのはニューヨーククローズをまたがない設計だけで、国内にスワップフリー口座は見当たらない

支払ったマイナススワップが税金の計算でどう扱われるかは、もう一段先の論点になります。課税のタイミングと確定申告の要否はスワップポイントの税金と課税タイミングの解説で、確認できる資料の範囲を明示しながら整理しました。

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