「FXの積立なら、レバレッジを1倍にしてほったらかしでいいと聞いた。でも危険という記事も出てくるので、どちらが本当なのか判断できない」
こういった疑問に答えます。
FX積立とは、外貨を定期的に自動で買い付けていく外国為替証拠金取引のこと。外貨預金ではありません。公式ページで仕様を確認できたのはSBI FXトレードのつみたて外貨と外為どっとコムのらくつむの2つで、どちらもレバレッジを1倍から3倍の範囲で選ぶ設計です。毎月3万円を10年続けると累計の買付額は360万円になり、必要な資金はレバレッジ1倍で360万円、3倍なら120万円。ただし、同じ下落率に対して発生する含み損は3つの倍率で完全に同じ金額になります。
まとまった資金でスワップを狙う場合の規模感はスワップ生活に必要な資金を通貨別に試算した記事にまとめました。積立に対応した会社を含めて口座の条件を並べたい方は、主要FX会社の比較ページもあわせてご覧ください。
| 項目 | SBI FXトレード つみたて外貨 | 外為どっとコム らくつむ |
|---|---|---|
| 位置づけ | 外国為替証拠金取引で、外貨預金ではないと明記 | 「らくらくFX積立」の愛称。外国為替証拠金取引であり外貨預金ではないと明記 |
| 対象通貨 | 対円10通貨(米ドル、英ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドル、中国人民元、南アランド、トルコリラ、香港ドル、メキシコペソ) | 10通貨ペア(米ドル/円、豪ドル/円、ポンド/円、NZドル/円、カナダドル/円、南アフリカランド/円、トルコリラ/円、人民元/円、メキシコペソ/円、露ルーブル/円) |
| レバレッジ | 1倍から3倍。中国人民元、南アランド、トルコリラ、香港ドルは1倍か2倍 | 個人は全通貨ペアで1倍、2倍、3倍から選択。法人は1倍のみ |
| 積立の頻度 | 毎日、毎週、毎月 | 毎日、毎週(水曜日)、毎月(26日)。午前11時30分から順次成行注文で発注 |
| 最低金額 | 公式ページで確認できず。自動入金サービスは1万円から設定可能 | 100円または1通貨から。円指定は100円以上1円単位 |
| 買付時のコスト | 定期購入ではスプレッドが0円 | 取引手数料は無料。買付スプレッドの数値は公式ページで確認できず |
| 売却時のスプレッド | 米ドル/円2.5銭、豪ドル/円10.0銭、英ポンド/円15.0銭 | 公式ページで確認できず |
| スワップの扱い | 一律5%増額、人気通貨は最大20%増額。再投資、貯める、分配から選択 | 買付のみが対象で外貨ネクストネオの取引は対象外。10万通貨単位で表示 |
| ロスカット | 公式ページで確認できず | 有効比率が30%を下回った際に執行 |
※2026年7月26日に各社の公式ページで確認した内容です。らくつむの露ルーブル/円は2022年3月23日より注文受付が停止されています。最新の条件は各社の公式サイトで確認してください。
FX積立は外貨預金の言い換えではなく、レバレッジを絞った証拠金取引
まず名前の整理から。積立と聞くと投資信託や外貨預金を思い浮かべる方が多いはずですが、この2つのサービスはどちらもFXの枠組みで動いています。
SBI FXトレードは案内ページに「外国為替証拠金取引です。外貨預金ではございません。」と明記しています(SBI FXトレード「つみたて外貨」)。外為どっとコムも「外貨積立(らくつむ)は『らくらくFX積立』の愛称です。外国為替証拠金取引であり、外貨預金ではない点にご注意ください」と書いています(外為どっとコム「外貨積立らくつむの特長」)。
証拠金取引ということは、ロスカットの対象になるということ。外貨預金には強制的に解約させられる仕組みがありませんが、FX積立にはあります。ここが最初に押さえるべき差です。
では、なぜ積立という形で提供されているのか。倍率を1倍から3倍に絞ることで、通常のFX口座で使える25倍とはまったく違う設計になるからです。らくつむの取引概要には「個人のお客様:全通貨ペアで1倍、2倍、3倍から選択できます。法人のお客様:全通貨ペアで1倍のみ」と書かれています(外為どっとコム「らくつむ 取引概要」)。
つみたて外貨も同様に「レバレッジ1倍~3倍に抑えた」設計で、中国人民元、南アランド、トルコリラ、香港ドルについては1倍か2倍のいずれかを選ぶ形になっています(SBI FXトレード「業界最良水準のスワップポイント(つみたて外貨)」)。値動きの大きい通貨ほど倍率の選択肢が狭い、という設計思想が読み取れます。
2社で最も違うのは通貨の顔ぶれと、ロスカット水準が公表されているかどうか
全体表を上から追うと、扱う通貨はよく似ています。対円の10通貨で、米ドル、豪ドル、ポンド、NZドル、カナダドル、南アフリカランド、トルコリラ、人民元、メキシコペソが両方に入っています。
違うのは残りの1つ。つみたて外貨は香港ドル、らくつむは露ルーブル/円です。ただしらくつむの露ルーブル/円は2022年3月23日より注文受付が停止されており、実質的には9通貨ペアと考えたほうが実態に近いということ。
金額の入り口にも差があります。らくつむは「100円または1通貨から手軽に外貨投資を始められます」と書き、買付注文は円単位で指定する場合に100円以上1円単位と定めています。つみたて外貨は最低積立金額の記載を公式ページで確認できませんでしたが、自動入金サービスについては1万円から設定でき振込手数料が0円と案内されています(SBI FXトレード「自動購入でかんたん積立(つみたて外貨)」)。
そしていちばん実務に効くのがロスカットです。らくつむは取引概要で「有効比率が30%を下回った際に、ロスカットを執行し、お客様の保有するすべてのポジションを強制決済します」と明示しています(外為どっとコム「らくつむ 取引概要」)。つみたて外貨についてはロスカット水準を公式ページで確認できませんでした。通常のFX口座であるSBI FXトレードは、証拠金維持率が原則20秒ごとの判定で50%を下回ると即時決済すると公表しています(SBI FXトレード「取引ルール」)。同じ水準が積立にも適用されるかは書かれていないため、口座を開く前に契約書面で確かめてください。
SBI FXトレード自体の使い勝手や1通貨単位の設計については、SBI FXトレードの評判をまとめた記事で個別に整理しています。
毎月3万円を10年続けると、必要な資金はレバレッジで120万円から360万円まで開く
ここから数字に入ります。前提は4つ。
毎月3万円ぶんの外貨を買い付けること、買付額は取引金額として扱うこと、レバレッジは必要な資金を決める倍率として使うこと、そして必要保証金は買付時の水準で一定と仮定することです。
| 経過年数 | 積立回数 | 累計買付額 | レバレッジ1倍で必要な資金 | 2倍 | 3倍 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年 | 12回 | 36万円 | 36万円 | 18万円 | 12万円 |
| 3年 | 36回 | 108万円 | 108万円 | 54万円 | 36万円 |
| 5年 | 60回 | 180万円 | 180万円 | 90万円 | 60万円 |
| 10年 | 120回 | 360万円 | 360万円 | 180万円 | 120万円 |
10年で見ると、累計買付額360万円に対して用意する資金は120万円から360万円。3倍を選べば、同じ量の外貨を3分の1の資金で持てます。
「では3倍が効率的なのでは」と思うかもしれません。ここが分かれ道です。効率がよいのは資金の使い方であって、抱えるリスクの量ではありません。買っている外貨の量は3つの倍率でまったく同じだからです。
数量でも確かめておきます。日本銀行の外国為替市況によると2026年7月21日17時時点の米ドル/円は162.59円台でした(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。このレートで毎月3万円を買うと1回あたり約184.5通貨、120回で約2万2,142通貨。倍率を変えても、この数量は1通貨も変わりません。
同じ下落率なら含み損は同額で、レバレッジが変えるのは資金に対する比率
ここが「レバレッジ1倍なら安全」という言い方の危うい部分です。実際に並べます。
| 下落率 | 累計買付360万円に対する含み損 | 資金360万円(1倍)に対する比率 | 資金180万円(2倍) | 資金120万円(3倍) |
|---|---|---|---|---|
| 10% | 36万円 | 10% | 20% | 30% |
| 20% | 72万円 | 20% | 40% | 60% |
| 30% | 108万円 | 30% | 60% | 90% |
| 50% | 180万円 | 50% | 100% | 150% |
含み損の列は1本しかありません。レバレッジをいくつにしても、20%下がれば72万円の含み損が同じだけ発生します。
変わるのは右の3列、つまり預けた資金に対する比率のほうです。1倍なら20%下落で資金の2割、3倍なら6割が消えている状態。3倍のほうが痛みが早く来ますが、失う金額そのものは同じです。
ここは断言しますが、レバレッジ1倍は損失を小さくする設定ではありません。ロスカットされにくくする設定です。損失の額は買い付けた外貨の量と値動きの幅だけで決まり、倍率は式に入ってきません。
とはいえ、ロスカットされにくいことには十分な意味があります。強制決済されなければ、下げた局面で持ち続ける選択肢が残るからです。倍率を下げる判断は「損をしない」ためではなく「自分の意思で決済時期を選べる状態を保つ」ためだと考えると、位置づけを取り違えません。
らくつむの有効比率30%を当てはめると、耐えられる下落率は倍率で割った値になる
ロスカットまでの距離も計算できます。らくつむが公表している有効比率30%割れという水準を使います。
有効比率は純資産を必要保証金で割った値。必要保証金は買付額をレバレッジで割った額なので、式を整理すると耐えられる下落率は70%をレバレッジで割った値になります。
| レバレッジ | 必要な資金(累計買付360万円のとき) | 有効比率30%に達する下落率 | そのときの含み損 |
|---|---|---|---|
| 1倍 | 360万円 | 70.00% | 252万円 |
| 2倍 | 180万円 | 35.00% | 126万円 |
| 3倍 | 120万円 | 23.33% | 84万円 |
3倍を選ぶと、23.33%の下落でロスカット水準に届きます。米ドル/円162.59円なら約37.9円の下落にあたる幅です。
1倍でも70%までしか耐えられない点は押さえておいてください。無限に持ち続けられるわけではありません。なお必要保証金は買付時の水準で一定と仮定しており、実際にはレートが下がれば必要保証金も下がるため、距離はこの計算より少し伸びます。
追加入金で耐える方法もありますが、その場合は積立額と別に資金を用意し続けることになります。ほったらかしという言葉から想像する運用とは、少し違う姿になるということ。
買付スプレッド0円が効くのは金額の大きさではなく、回数を重ねても増えない点
コストの話に移ります。つみたて外貨は「定期購入では、スプレッドは0円」と案内し、売却時のスプレッドを米ドル/円2.5銭、豪ドル/円10.0銭、英ポンド/円15.0銭と公表しています(SBI FXトレード「取引コスト(つみたて外貨)」)。
毎月3万円という規模で、この0円がいくらの価値になるのかを計算しました。米ドル/円162.59円で毎月3万円を買うと1回あたり約184.5通貨。仮に買付にも2.5銭がかかるとすれば1回あたり約4.6円、年間で約55円、10年120回で約554円です。
正直に書くと、金額としては小さい部類。10年で554円は、累計買付額360万円の0.015%にすぎません。
それでも意味が消えるわけではないと考えています。積立は回数が増えるほどコストが積み上がる形式なので、1回あたりが0円という性質は、金額の大小より設計として効いてくるからです。毎日コースを選べば回数は月20回前後になり、同じ理屈で差は開きます。
売却側は0円ではありません。約2万2,142通貨をまとめて売れば2.5銭で約554円。買いと売りの合計で見る癖をつけておくと、コストの見積もりがずれません。
スワップは10年で約65万円まで積み上がる計算だが、18.11%の下落で相殺される
積立でスワップがどれだけ貯まるのかも確かめます。ただし前提が重いので、先に断っておきます。
つみたて外貨とらくつむは、どちらもスワップの実額を動的に描画しており、数値を静的に取得できませんでした。そこで、実額を確認できるヒロセ通商の米ドル/円の水準を当てはめて桁を確かめます。2026年7月22日公表の買い48円は3日分かつ1Lot=1,000通貨あたりなので、1万通貨あたり1日160円に換算できます(ヒロセ通商「LION FXスワップポイント」)。
この水準が10年間そのまま続き、レートも162.59円で変わらないと仮定すると、毎月184.5通貨ずつ増えていく建玉から受け取るスワップは10年の累計で約65万1,900円。最終年だけを取り出すと、約2万2,142通貨で年約12万9,300円です。
数字だけ見れば魅力的に映るかもしれません。ですが、同じ表の中で比べるとこうなります。累計スワップ65万1,900円は累計買付額360万円の18.11%にあたり、米ドル/円に直せば約29.4円の下落で完全に相殺される金額です。
つまり10年かけて積み上げたスワップは、為替が30円ほど逆行すれば消えるということ。ほったらかしの成果は、決済するときのレートによって半分にも倍にもなります。
増額の効き方も書いておきます。つみたて外貨はスワップポイントを一律5%増額、人気通貨は最大20%増額と公表しています(SBI FXトレード「スワップポイントを活用する(つみたて外貨)」)。仮に65万1,900円に5%を掛ければ約3万2,600円、20%なら約13万400円の上乗せです。同社は「金利情勢によってはスワップポイントがマイナスになる場合があります」とも注記しています。
らくつむ側も、買付のみがスワップの対象で外貨ネクストネオでの取引は対象外であること、新興国通貨は流動性が低く突発的な相場急変動が起こりやすいこと、金利差が縮小または逆転すれば受取が減るか支払いに転じる可能性があることを明記しています(外為どっとコム「高水準スワップポイント(らくつむ)」)。
FX積立とほったらかし運用でよく調べられている質問
仕様と数字はここまでで揃いました。検索でよく見かける疑問に、5つに絞って答えます。
FX積立は本当にほったらかしでいいのですか?
買付の操作はほったらかしにできます。つみたて外貨は毎日、毎週、毎月の頻度で自動購入でき、らくつむも毎日、毎週水曜日、毎月26日の3通りから選んで午前11時30分から順次成行注文で発注される仕組みです。
ただし、口座の状態はほったらかしにできません。含み損が膨らめば有効比率が下がり、らくつむなら30%割れでロスカットが執行されます。買う手間は自動化できても、続けるかどうかの判断までは自動化されないということ。
FX積立は危険ですか?
危険かどうかは倍率と通貨の選び方で変わります。この記事の試算では、累計買付360万円に対して20%下落すると含み損は72万円で、これはレバレッジ1倍でも3倍でも同額でした。
一方、ロスカットまでの距離は1倍なら70%、3倍なら23.33%と3倍の開きがあります。危険の中身を「損失の大きさ」と「強制決済されやすさ」に分けて考えると、判断がぶれにくくなります。
ドルコスト平均法なら損しませんか?
損しないとは言えません。定期的に一定額を買う方法は取得単価をならす効果がありますが、平均単価より下のレートで決済すれば損失が出ます。
累計買付額に対して何%下がったかで含み損が決まる構造は、一括で買っても積み立てても同じです。買うタイミングを分散させることと、為替リスクを消すことは別の話だと考えてください。
レバレッジ1倍で積み立てれば元本割れしませんか?
元本割れします。レバレッジ1倍は、買い付けた外貨の金額と同じだけの資金を口座に置く設定であって、価格が下がらない設定ではありません。
米ドルを360万円ぶん持っている状態で為替が20%下がれば、倍率にかかわらず72万円の含み損。1倍にすることで得られるのは、その含み損に耐えてロスカットを回避できる余地です。
積立とスワップ狙いの一括購入では、どちらが有利ですか?
条件が違うため、有利不利を一般化できません。積立は買うレートを分散できる代わりに、資金が入り切るまで保有量が少なく、その間のスワップも少なくなります。
この記事の試算でも、10年の累計スワップ約65万1,900円に対し、最終年の1年分だけで約12万9,300円でした。前半の受取が小さいのは、保有量が積み上がっていないからです。どちらを選ぶかは、投じられる資金の量と、いつから受け取り始めたいかで決めることになります。
FX積立で本当に選んでいるのは、積立額ではなく決済しない期間の長さ
ここまで見てきたとおり、積立で自動化できるのは買う操作までです。自動化されないのは、下げた局面で持ち続けるかどうかという判断のほうにあります。
- FX積立は外貨預金ではなく外国為替証拠金取引で、ロスカットの対象になる
- 公式ページで仕様を確認できたのはつみたて外貨とらくつむの2つで、どちらもレバレッジは1倍から3倍
- 毎月3万円を10年続けると累計買付額は360万円、必要資金は倍率次第で120万円から360万円
- 同じ下落率に対する含み損は倍率が変わっても同額で、変わるのは資金に対する比率とロスカットまでの距離
- らくつむの有効比率30%を当てはめると、耐えられる下落率は1倍70.00%、2倍35.00%、3倍23.33%
積み立てる通貨をどれにするかで、受け取れるスワップも値動きの幅も変わります。トルコリラや南アフリカランドを候補に入れるなら、高金利通貨5つを同じ金額でそろえて比べた記事で、通貨ごとの受取額の差を確認してから決めてください。

