FXの確定申告はいくらから?20万円ルールと扶養の壁

FXの確定申告はいくらから?20万円ルールと扶養の壁

「FXの利益が20万円を超えなければ確定申告はしなくていい、と聞いた。ただ住民税は別だという話も見かける。結局どちらが本当なんだろう」

こういった疑問に答えます。

20万円ルールは所得税の規定であって、住民税には同じ基準がありません。判定の対象になるのも決済益そのものではなく、必要経費を差し引いた後の所得金額です。そしてこの線をまたぐと手取りが逆転します。利益20万円の手取りが190,000円なのに対し、21万円だと167,339円。約238,439円まで稼がないと、20万円のときの手取りに追いつきません。

税率そのものと金額別の税額はFXの税金と税率20.315%の計算方法にまとめているので、この記事は境目の判定だけに絞ります。口座の取引コストを含めて手取りを見直したい方は、主要FX会社の比較ページで条件を並べて確認できます。

類型所得税で申告が必要になる基準住民税の扱い扶養との関係
給与所得者(1か所から給与・年末調整済み)給与所得と退職所得を除く各種の所得の合計が20万円を超えたとき20万円という基準はない。確定申告をしないなら住民税の申告が必要自分が扶養する側なら直接の影響はない
給与所得者以外(専業・自営業・無職など)所得金額の合計が所得控除の合計額を超えたとき。20万円の特例は使えない同じく20万円の基準はなく、原則としてすべての所得を申告誰かの扶養に入っているなら下の行と同じ
被扶養者(学生・配偶者など)上の2類型と同じ考え方で判定する同じ合計所得金額が58万円を超えると扶養控除・配偶者控除の対象から外れる(令和7年分から)

20万円ルールは所得税の規定で、住民税には同じ基準がありません

まず出どころをはっきりさせます。20万円という数字は、国税庁が示す「給与所得者で確定申告が必要な人」の条件のひとつです。1か所から給与を受けていて、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人が、それに当たります(国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」)。

このページは所得税について書かれたものです。住民税の規定ではありません。

住民税の側はどうなっているか。横浜市は、給与所得以外の所得の年間合計額が20万円以下なら確定申告をしなくてもよいと述べたうえで、住民税の場合は所得税と異なり、所得の多少にかかわらず給与所得と合算して税額を計算することになっていると説明しています。そして確定申告をしなかった場合は住民税の申告をする必要があると明記しています(横浜市「給与以外に副収入がある場合の住民税の申告」)。

名古屋市の説明はもっと短く、市民税・県民税には所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があると書かれています(名古屋市「給与所得者で副収入がある場合、市民税・県民税の申告は」)。

私が確認できたのはこの2市の公式ページまでです。総務省のページにも20万円ルールに触れた記載は見つけられませんでした。だからここは「横浜市と名古屋市はこう説明している」という書き方にとどめます。申告先も様式も提出期限も市区町村ごとに定まっているため、実際の手続きはお住まいの自治体の案内で確認してください。

判定するのは決済益ではなく、必要経費を引いた後の所得金額です

もうひとつ、読み違えが多いのが判定対象です。20万円と比べるのは口座の年間損益そのものではありません。

20万円と突き合わせるのは、雑所得の計算式を通した後の数字です。総収入金額から必要経費を差し引く、というのがその式。引ける側に入るのは、その総収入金額を得るために直接要した費用と、その年に生じた業務上の費用です。自宅の家賃や通信費のような家事関連費が全額そこに入ることはなく、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額までとされています(国税庁「No.2210 必要経費の知識」)。

数字にすると差がはっきりします。

年間の決済益必要経費所得金額20万円を超えるか
25万円6万円19万円超えない
25万円4万円21万円超える
22万円0円22万円超える
19万円0円19万円超えない

同じ25万円の決済益でも、経費が6万円あるか4万円かで結論が入れ替わります。ここを口座の損益報告書の数字だけで判断すると、必要な申告を落とすか、不要な申告をするかのどちらかになる。

さらに合算のルールもあります。20万円と比べるのは「給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額」なので、FX以外に副業の収入や原稿料があるなら、それらを足した金額で見ます。FX単独で18万円、ほかの副収入が5万円なら合計23万円で、申告が必要になる側です。

なお必要経費の按分割合について、国税庁のページには目安になる数字が一切書かれていません。「何割まで認められる」という数値を私は書きません。自分の使い方で判断がつかない項目は、税務署か税理士に確認してください。

19万円・20万円・21万円で何が起きるかを、税額で並べます

境目の前後で何が変わるのか。会社員の方を想定して計算します。

前提は、1か所から給与を受けていて年末調整が済んでおり、給与収入は2,000万円以下。FX以外の副収入はなく、必要経費と繰越損失はゼロ。住民税の非課税限度額には該当せず、所得控除は給与の側ですでに使い切っている場合です。税率は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計20.315%を用います(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。

年間のFX所得所得税の確定申告所得税と復興特別所得税住民税5%税額の合計手取り
19万円不要0円9,500円9,500円180,500円
20万円不要0円10,000円10,000円190,000円
21万円必要32,161円10,500円42,661円167,339円

20万円ちょうどは申告不要の側です。条件は「20万円を超える」であって「20万円以上」ではないため、ぴったり20万円なら該当しません。なお表の税額は端数処理を省いた概算なので、実際の申告額は税務署または税理士に確認してください。

そして注目してほしいのが手取りの列。利益が20万円から21万円へ1万円増えたのに、手取りは190,000円から167,339円へ22,661円も減ります。増えた1万円に対して所得税が丸ごと乗るのではなく、21万円の全額が課税対象になるからです。

この逆転はいつ解消されるのか。手取りが20万円のときの190,000円に戻る水準を逆算すると、190,000円を0.79685で割って約238,439円。つまり所得が200,001円から238,438円までの約3万8,000円分の帯では、20万円で止めておいたほうが手取りが多くなります。

ただし、ここは誤解しないでください。これは「20万円で止めるべきだ」という話ではありません。住民税は19万円でも20万円でもかかり、20万円以下だからといって何もしなくてよいわけでもない。単に、この帯にいる人は税額を見てから年末の決済を判断する意味がある、というだけです。

給与をもらっていない人に、20万円の線はありません

専業でFXをしている方、自営業の方、無職の方から最も多い誤解がここです。

20万円という数字は給与所得者向けの規定の中にあります。給与がない人には、そもそも適用される場面がありません。一般的な要件のほうで判断することになり、その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が配当控除額などを超える場合に確定申告が必要とされています(国税庁「No.2020 確定申告」)。

つまり基準になるのは所得控除の合計額のほう。ここで注意が要るのは、基礎控除の金額が令和7年分から見直されている点です。合計所得金額132万円以下なら95万円、区分が上がるごとに88万円・68万円・63万円と下がり、655万円超2,350万円以下で58万円。それより所得が大きい層はさらに縮小します。令和6年分以前は合計所得2,400万円以下が一律48万円だったので、前提そのものが変わりました(国税庁「No.1199 基礎控除」)。

「専業なら48万円まで申告不要」と書かれた解説は、令和6年分以前の話です。そのまま令和7年分に当てはめないでください。

自営業の方はもう1点。FXの損益は先物取引に係る雑所得等という別枠で計算するため、事業所得と合算されません。事業が赤字でもFXの利益に対する税額は同じように出ます。この点はいくら稼いだかの判定より、納税額の見積もりで効いてきます。

扶養の壁は、令和7年分から合計所得58万円に上がりました

学生や配偶者の方が気にする「扶養から外れる境目」も、令和7年分で数字が動いています。

扶養親族の要件について、国税庁は年間の合計所得金額の基準を示したうえで、令和7年12月1日に施行され令和7年分から適用される金額は58万円以下だと注記しています(国税庁「No.1180 扶養控除」)。配偶者控除も同じで、控除対象配偶者の合計所得金額の要件は令和7年分から58万円以下、令和2年分から令和6年分は48万円以下、令和元年分以前は38万円以下と整理されています(国税庁「No.1191 配偶者控除」)。

48万円と書かれた記事はまだ大量に残っています。年分を確認せずに拾うと、判断を1年分間違えることになる。

アルバイト収入がある学生の方は、給与所得と合算した金額で見ます。令和7年分以後の給与所得控除は、収入金額190万円までが65万円。360万1円から660万円までは収入金額の20%に44万円を足した額です(国税庁「No.1410 給与所得控除」)。

年間の給与収入給与所得合計所得58万円までに残るFXの所得
0円0円58万円
80万円15万円43万円
100万円35万円23万円
123万円58万円0円

給与収入123万円で給与所得が58万円ちょうどになるのは偶然ではありません。国税庁も、給与のみの場合の配偶者控除の要件を給与収入123万円以下と示しています。この行までアルバイトをしている学生の方は、FXの所得が1円でも出た時点で扶養から外れる計算になります。

なお、健康保険や年金の被扶養者の基準は税の扶養とは別の制度で、加入している保険者が定めています。確認先が違う点に注意してください。

20万円以下でも、確定申告してしまったほうが手続きは減ります

ここまで読んで「結局どうすればいいのか」と思った方へ、私の考えを書いておきます。

住民税の申告と所得税の確定申告は、二者択一ではありません。横浜市も名古屋市も、所得税の確定申告を行った場合は住民税の申告をあらためて提出する必要はないと案内しています。逆に確定申告をしないなら、住民税の申告を市区町村へ出すことになります。

つまり20万円以下の人が選ぶのは、次の2つです。

  1. 確定申告をする。所得税と復興特別所得税を納めることになるが、住民税の申告は不要になる
  2. 確定申告をしない。所得税分は発生しないが、住民税の申告を市区町村へ出す

医療費控除やふるさと納税の申告をどのみち行う年なら、迷わず1番です。手続きが1本で済み、住民税の徴収方法の選択欄も同じ申告書の第二表で扱えます。令和7年分の受付は令和8年2月16日(月)から3月16日(月)まで(国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」)。

損失が出た年は、申告する理由がもう1つ増えます。先物取引の差金等決済に係る損失は翌年以後3年間繰り越せますが、その要件は損失が生じた年に確定申告をし、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出し続けることです(国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。損した年に何もしないと、翌年以降の控除枠を自分で捨てることになります。

住民税そのものの税率も押さえておくと迷いません。東京都主税局は所得割の税率を都民税4%、区市町村民税6%と示しています(東京都主税局「個人住民税」)。内訳は住む場所で変わります。横浜市は、道府県から指定都市への税源移譲により指定都市では所得割の標準税率が市民税8%・道府県民税2%になったと説明し、同市の税率を市民税8%・県民税2.025%と案内しています(横浜市「個人の市民税・県民税について」)。ただしFXの利益は申告分離課税なので、こうした総合課税の税率ではなく5%で計算します。

FXの確定申告の境目でよく聞かれる質問

線引きの考え方が分かると、今度は自分のケースに当てはめる段階で手が止まります。よく調べられている4つに答えます。

FXの利益がちょうど20万円なら確定申告は不要ですか?

所得税については不要です。条件は「20万円を超える」なので、ちょうど20万円は該当しません。

ただし住民税は別で、20万円という基準がありません。確定申告をしないなら、住民税の申告を市区町村へ出すことになります。20万円ちょうどのFX所得に対する住民税は5%で10,000円です。

20万円以下でも住民税の申告をしないとどうなりますか?

申告の義務を果たしていない状態になります。横浜市も名古屋市も、確定申告をしなかった場合は住民税の申告が必要だと明記しています。

具体的な取り扱いは市区町村ごとに定まっているため、私が全国一律の結論を書くことはできません。未申告に気づいた時点で、お住まいの市区町村の税務担当窓口に問い合わせてください。放置するほど選択肢は減ります。

学生や主婦がFXで稼ぐと、いくらから扶養を外れますか?

合計所得金額が58万円を超えたときです。令和7年分から適用される金額で、令和6年分以前の48万円とは違います。

アルバイト収入がある場合は給与所得と合算します。給与収入100万円なら給与所得は35万円になるので、FXの所得は23万円までが目安。健康保険の被扶養者の基準は税とは別なので、加入先にも確認してください。

FXの損失だけで利益がない年も申告したほうがいいですか?

したほうがいいです。損失を翌年以後3年間繰り越すには、損失が生じた年に確定申告をしておく必要があります。

しかも要件は「連続して」提出すること。取引をしなかった年に申告を飛ばすと、そこで繰越が途切れる可能性があります。繰越を使うつもりなら毎年出しておくのが安全側の判断です。

FXの申告要否は、20万円という数字ひとつでは決まりません

20万円ルールを知っているかどうかで差が付くのではなく、それが所得税だけの規定だと知っているかどうかで差が付きます。住民税、必要経費、扶養。判定に絡む軸は3つあり、どれも20万円とは別の基準で動いています。

  • 20万円は所得税の基準で、住民税には同じ線がない。確定申告をしないなら住民税の申告が必要になる
  • 比べる相手は決済益ではなく、必要経費を差し引いた後の所得金額。他の副収入があれば合算する
  • 所得20万円の手取りは190,000円、21万円では167,339円。約238,439円まで稼がないと追いつかない
  • 給与をもらっていない人に20万円の線はなく、所得控除の合計額を超えるかで判断する
  • 扶養の壁は令和7年分から合計所得58万円。給与のみなら給与収入123万円が同じ水準にあたる

税務の判断は他の所得の有無や控除の使い方で結論が変わります。この記事は公表資料で確認できた範囲をまとめたものなので、最終的な判断は国税庁の情報か税務署への確認で行ってください。申告が必要だと分かった方は、FXの確定申告のやり方とe-Taxでの入力手順で書類の作り方を確認してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!