「10万円を複利で回したら、どこまで増えるんだろう。シミュレーションの数字は見たけれど、あれをそのまま信じていいのかが分からない」
こういった疑問に答えます。
先に計算結果を出します。元本10万円を月利3%の複利で回すと、12か月後に142,576円、60か月後に589,160円。月利10%なら60か月後は約304.48倍の3,044万8,164円になります。ただしこれは数式を60回掛けた結果であって、到達を意味しません。実際には最小取引単位という壁があり、1,000通貨単位の口座では資金が増えても数量を連続的には増やせません。この記事は、増える側の計算と、その計算が崩れる場所の両方を数字で示します。
複利を前提にするなら、取引単位の細かさが効いてきます。各社の最小取引単位を先に見比べておきたい方は、主要FX会社の比較ページに一覧をまとめました。
同じ計算を生活費の側から見た記事もあります。毎月引き出す前提だと必要資金がどう変わるかはFXだけで生活できるかを検証した記事にまとめたので、増やす側と使う側を分けて考えてみてください。
| 月利(仮定値) | 12か月後 | 36か月後 | 60か月後 | 60か月後の倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 月利1% | 112,683円 | 143,077円 | 181,670円 | 約1.82倍 |
| 月利3% | 142,576円 | 289,828円 | 589,160円 | 約5.89倍 |
| 月利5% | 179,586円 | 579,182円 | 1,867,919円 | 約18.68倍 |
| 月利10% | 313,843円 | 3,091,268円 | 30,448,164円 | 約304.48倍 |
元本は10万円、利益はすべて口座に残し、税金と出金は考慮していません。月利はすべて仮定値で、達成できる水準を示すものではありません。
月利1%と10%では、5年後の残高が約167倍離れる
全体表をもう少し丁寧に読みます。使った式は 10万円×(1+月利)の月数乗 の1本だけです。
月利1%の行は、5年かけて18万1,670円。8万円ほどしか増えていません。一方で月利10%の行は3,044万8,164円。同じ5年で、残高は約167倍の開きになります。
なぜここまで離れるのか。複利は掛け算の繰り返しなので、月利のわずかな違いが指数として効くからです。年利に直すと差の正体が見えます。
| 月利(仮定値) | 年利換算 |
|---|---|
| 月利1% | 約12.68% |
| 月利3% | 約42.58% |
| 月利5% | 約79.59% |
| 月利10% | 約213.84% |
月利1%は年利12.68%。この水準なら、資産運用の話として成り立つ範囲に見えます。
月利10%は年利213.84%です。ここまで来ると、運用というより別の何かの話になっているという感覚を持ったほうがいいと考えています。「月に1割なら」と思わせる書き方が、年利に直した瞬間に説得力を失うということ。
念のため繰り返しますが、この記事の月利はすべて仮定値です。月利の相場や、どの水準を何割の人が達成しているかを示す公的な統計は、今回の調査では確認できませんでした。
単利との差は12か月で6,576円。複利が効いてくるのは3年目から
複利のうまみがいつ出てくるのかも、数字で確かめておきます。月利3%で、単利と複利を並べました。
| 経過 | 複利の残高 | 単利の残高 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 12か月 | 142,576円 | 136,000円 | 6,576円 |
| 36か月 | 289,828円 | 208,000円 | 81,828円 |
| 60か月 | 589,160円 | 280,000円 | 309,160円 |
1年目の差は6,576円。元本10万円に対して6.6%ですから、体感としてはほとんど変わりません。
3年目で81,828円、5年目で309,160円。5年目には差額そのものが元本の3倍を超えます。複利が「効く」のは後半だけ、というのが率直なところです。
ここから読み取れることが1つあります。複利を前提にした設計は、途中で引き出さないことが条件だということ。1年で結果を求めるなら、複利かどうかはほぼ関係ありません。
「1年目から効かないなら意味がないのでは」と思うかもしれません。逆です。5年間、同じ月利を、1度も大きく崩さずに続けられるかどうかが問われている、と読むべきところ。
10万円が1億円になるまでの月数を出すと、月利10%でも約6年かかる
「10万円から億」という言い方をよく見ます。式のうえでは何か月かかるのか、計算しておきます。
必要な倍率は1,000倍。月数は log(1000) ÷ log(1+月利) で出ます。
| 月利(仮定値) | 1億円までの月数 | 年数 |
|---|---|---|
| 月利1% | 約694.2か月 | 約57.9年 |
| 月利3% | 約233.7か月 | 約19.5年 |
| 月利5% | 約141.6か月 | 約11.8年 |
| 月利10% | 約72.5か月 | 約6.0年 |
月利10%で約6年。この数字だけを見せられると、手が届きそうに感じるはずです。
ただし6年は72回の月次計算で、その72回すべてで10%を積む前提。1回でも大きく崩れれば、下の行に落ちるどころではありません。試しに、月利3%で11か月積んだあと1か月だけ20%減らしてみます。
11か月後の残高は138,423円。ここから20%減ると110,739円になり、これは月利3%換算で約3.45か月目の水準です。1か月の下落で、約7.5か月分の積み上げが消える計算になります。
減った資金を元に戻すのに必要な利益率については、FXの資金管理術と2%ルールを扱った記事でドローダウンの側から整理しました。この記事は増える側の計算に絞りますが、両方を並べて初めて設計になります。
そして、こうした倍率を売り文句にする勧誘には注意が必要です。金融庁は投資詐欺の手口を8類型に整理し、その中に無登録の海外FX業者をキャッシュバックキャンペーンで宣伝して紹介する手口を挙げています(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)。
複利の前提は「毎月ぴったり同じ比率で数量を増やせる」こと
ここから、計算が現実と食い違う場所を見ていきます。原因は取引単位です。
複利で回すというのは、残高が増えたぶんだけ建てる通貨量も増やす、という意味です。残高が3%増えたら数量も3%増やす。この操作が毎月できることが、上の表すべての前提になっています。
前提を数字で固定します。
- 通貨ペアは米ドル/円。レートは日本銀行が公表した2026年7月21日17時時点の162.59円台(日本銀行「外国為替市況(日次)」)
- 1回の取引で許容する損失を、そのときの残高の2%とする
- 損切り幅は30pips(0.30円)で固定
- 必要証拠金は取引金額の4%。個人顧客との店頭FXで業者に義務づけられた水準です(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。1,000通貨あたり6,504円
この前提だと、建てるべき数量は 残高×2% ÷ 0.30円、つまり残高を15で割った値になります。残高10万円なら6,667通貨。
ところが、この6,667通貨という数字がそのまま注文画面に入りません。ヒロセ通商のLION FXは1Lot=1,000通貨が基本と公表しており(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)、1,000通貨刻みでしか発注できないからです。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。
結果として、実際に建てられるのは6,000通貨。理論値より10.0%小さい数量です。そしてこのずれは、残高が増えても自動的には解消しません。
1,000通貨刻みでは、残高が増えても数量が何か月も動かない
同じ前提で、月利3%の複利を14か月分たどってみます。理論上の数量と、実際に建てられる数量、そして実際のリスク率を並べました。
| 経過 | 残高 | 理論上の数量 | 実際に建てられる数量 | 実際のリスク率 |
|---|---|---|---|---|
| 0か月 | 100,000円 | 6,667通貨 | 6,000通貨 | 1.80% |
| 1か月 | 103,000円 | 6,867通貨 | 6,000通貨 | 1.75% |
| 2か月 | 106,090円 | 7,073通貨 | 7,000通貨 | 1.98% |
| 5か月 | 115,927円 | 7,728通貨 | 7,000通貨 | 1.81% |
| 7か月 | 122,987円 | 8,199通貨 | 8,000通貨 | 1.95% |
| 10か月 | 134,392円 | 8,959通貨 | 8,000通貨 | 1.79% |
| 11か月 | 138,423円 | 9,228通貨 | 9,000通貨 | 1.95% |
| 14か月 | 151,259円 | 10,084通貨 | 10,000通貨 | 1.98% |
数量が6,000通貨から7,000通貨へ上がるのは2か月目、8,000通貨になるのは7か月目、9,000通貨は11か月目、10,000通貨は14か月目です。
つまり7,000通貨のまま5か月、8,000通貨のまま4か月動きません。その間、残高は毎月3%ずつ増えているのに、注文画面に入れる数字は同じままということ。
右端の列も見てください。目標は2%なのに、実際のリスク率は1.75%から1.98%の間を行ったり来たりしています。刻みが上がる直前がいちばん低く、上がった直後がいちばん高い。連続的に増えるはずの複利が、階段状の動きに置き換わっています。
この階段の踏み面が、複利の伸びを削ります。理論値どおりに増やせないぶんだけ、利益額も理論値に届かないからです。
「数か月の遅れくらい誤差では」と思うかもしれません。全体表の月利10%・60か月の欄が約304.48倍だったことを思い出してください。あの倍率は、60回すべてで理論どおりに数量を増やせた場合の数字です。
取引単位の刻みは、資金が小さいときほど大きく効く
刻みの粗さがどれだけ響くかは、口座の最小取引単位と残高の組み合わせで決まります。
最小取引単位は会社で分かれます。SBI FXトレードは1注文あたりの最小数量を1通貨単位と公表しています(SBI FXトレード「取引ルール」)。DMM FXは通常とラージが10,000通貨、ミニが1,000通貨です(DMM FX「サービス概要」)。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。
同じ前提(リスク2%、損切り30pips)で、残高別に実際に建てられる数量と理論値からのずれを出しました。
| 残高 | 理論上の数量 | 1通貨単位 | 1,000通貨単位 | 10,000通貨単位 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 6,667通貨 | 6,666通貨(−0.0%) | 6,000通貨(−10.0%) | 建てられない |
| 20万円 | 13,333通貨 | 13,333通貨(−0.0%) | 13,000通貨(−2.5%) | 10,000通貨(−25.0%) |
| 50万円 | 33,333通貨 | 33,333通貨(−0.0%) | 33,000通貨(−1.0%) | 30,000通貨(−10.0%) |
| 100万円 | 66,667通貨 | 66,666通貨(−0.0%) | 66,000通貨(−1.0%) | 60,000通貨(−10.0%) |
10万円の行で、10,000通貨単位の口座は「建てられない」となりました。理論上の数量6,667通貨に対して最小単位が10,000通貨なので、リスク2%を守ろうとすると発注そのものができません。
1,000通貨単位でも、10万円の時点では10.0%のずれ。それが50万円になると1.0%まで縮みます。刻みの粗さは、資金が小さいときほど比率として重くのしかかるということ。
ここが元本10万円という設定のいちばん厳しい点です。複利の計算では初期の数か月がその後すべての土台になりますが、その初期こそ刻みのずれが最大になります。
複利を前提にするなら、口座の最小取引単位は選定基準として無視できません。1,000通貨単位でも十分だと思いますが、10,000通貨単位の口座を10万円で使うのは設計として噛み合っていない、というのが正直なところです。
税金と出金が入ると、複利の式はもう一段崩れる
最後に、全体表があえて無視していた要素を戻します。税金です。
複利の式から毎年抜けていく分を確定させます。国税庁は差金決済による利益を先物取引に係る雑所得等の区分に置き、申告分離課税としています(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。内訳は所得税15%と地方税5%、そこに基準所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わって、合計20.315%になります。
課税は年単位で発生します。年をまたぐたびに、その年の利益の約2割を口座の外へ出す必要があるということ。全体表のように5年間ノーカットで掛け続ける計算は、この時点で成立しません。
もっとも、マイナスで終わった年が丸ごと無駄になるわけではありません。国税庁は差金決済に係る損失について、翌年以後3年間の繰越を認めています(国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。ただし条件があり、損失の出た年に申告書付表と計算明細書を添えて確定申告すること、そして以降も申告書付表を付けた確定申告書を連続して提出することが求められます。
複利のシミュレーションを自分で作るなら、次の4点を組み込んでください。
- 各年末に、その年の利益の20.315%を残高から引く
- 数量は口座の最小取引単位で切り捨てる
- マイナスの月を何回か混ぜる
- スプレッドを取引回数の分だけ引く
この4つを入れた瞬間、全体表の数字はかなり小さくなります。それでも複利という考え方自体は有効で、変わるのは伸びの速度だけ。数字を小さく見積もっておくほうが、途中でやめずに済みます。
FXの複利運用を試算した人が、入金の前に確かめる5つの疑問
計算と制約はここまでで揃いました。とはいえ、実際に口座へ入金する段になると別の点が気になるはずです。検索で多い5つに答えます。
10万円を複利で回すと、1年でいくらになりますか?
月利1%なら112,683円、3%なら142,576円、5%なら179,586円、10%なら313,843円という計算です。税金と出金、スプレッドは考慮していません。
この4つの数字はすべて、10万円に(1+月利)を12回掛けただけのもの。月利が達成できる前提を置いた場合の計算結果であって、増える見込みを示すものではありません。
FXの複利で10万円から億は狙えますか?
計算上は、月利10%を約72.5か月続ければ1億円に届きます。月利3%なら約233.7か月、およそ19.5年です。
狙えるかどうかを、この記事は判定しません。判定の根拠になる統計が確認できないからです。書けるのは、必要な月数と、その月数のあいだ1度も大きく崩さない前提が必要になるということまで。
複利と単利では、どのくらい差がつきますか?
月利3%・元本10万円で比べると、12か月で6,576円、36か月で81,828円、60か月で309,160円の差になります。
1年目の差は元本の6.6%程度で、体感としてはほとんど変わりません。差が開くのは3年目以降。複利を選ぶかどうかは、その期間を引き出さずに置いておけるかで決まります。
最小取引単位が1,000通貨だと、複利は組めませんか?
組めますが、理論どおりには増やせません。残高10万円でリスク2%・損切り30pipsという設計なら、理論値6,667通貨に対して実際は6,000通貨で、10.0%小さくなります。
このずれは残高が増えるほど縮み、50万円では1.0%まで下がります。1,000通貨単位が使えない、という話ではなく、元本が小さいうちは理論値より控えめな数量になると理解しておけば十分です。
複利のシミュレーションは信じていいのですか?
計算式としては正しいので、数字そのものは信じて構いません。ただし、そこに何が入っていないかを必ず確認してください。
多くの試算には、税金の年次課税、最小取引単位の切り捨て、マイナスの月、スプレッドの4つが入っていません。この4つを入れるだけで結果は大きく変わります。自分で条件を書き足して計算し直すのが、いちばん確実な確かめ方です。
複利の数字は計算の結果であって、到達の約束ではない
ここまで元本10万円を軸に計算してきましたが、いちばん伝えたいのは表の外側にあります。複利の式が示すのは、その月利が続いた場合に何が起こるかであって、その月利が続くかどうかは何も語っていないということです。
- 元本10万円は、月利3%なら60か月後に589,160円、月利10%なら約304.48倍の30,448,164円という計算になる
- 単利との差は12か月で6,576円、60か月で309,160円。複利が効くのは3年目以降
- 1億円までの月数は月利10%で約72.5か月。72回すべてで理論どおりに積む前提がある
- 1,000通貨刻みの口座では、残高10万円のとき理論値6,667通貨に対して6,000通貨しか建てられず、ずれは10.0%
- 数量が7,000通貨から8,000通貨へ上がるまで5か月かかるなど、複利は階段状にしか進まない
まず自分の口座の最小取引単位を確認し、そのうえで残高別に建てられる数量を書き出す。ここから始めれば、試算と現実の距離が最初に分かります。
口座をこれから開く方は、FXの始め方を5ステップで解説した記事に手順をまとめました。取引単位の確認も、口座選びの段階でやってしまうのが早道です。

