「ダブルトップや三尊という言葉は知っている。でも、実際のチャートでどこにネックラインを引き、どこまで下がると見込めばいいのかが分からない。形の名前だけ覚えても使えている気がしない」
こういった疑問に答えます。
チャートパターンで実際に使えるのは、形の名前ではなくネックラインの位置と値幅の測り方です。ダブルトップなら、1番天井のあとにできた押し安値がネックライン。目標値幅は2番天井からネックラインまでの距離を、ネックラインより下に同じ長さだけ取ります。この記事の試算では81.0pips、2,000通貨なら1,620円ぶん。三尊はヘッドアンドショルダーの日本語名で、山が3つあり中央が最も高い形を指します。どの形も、測るべき2点さえ決まれば数字で扱えます。
形を測るなら、出発点はまず線を引くところ。線の引き方そのものはトレンドラインの引き方と水平線の併用手順をまとめた記事に譲りますが、実際に発注する口座の取引単位も早めに確認しておくと計算が具体的になります。取引単位やスプレッドは主要FX会社の比較ページで横並びに見られます。
| パターン | 形の条件 | ネックラインまたは境界線の位置 | 値幅測定の起点と終点 |
|---|---|---|---|
| ダブルトップ | 高値が2つ並ぶM字型 | 1番天井を形成した後の押し安値 | 起点は2番天井、終点はネックライン。ネックラインから下に同じ幅 |
| ダブルボトム | 安値が2つ並ぶW字型 | 1番底を形成した後の戻り高値 | 起点は2番底、終点はネックライン。ネックラインから上に同じ幅 |
| 三尊(ヘッドアンドショルダーズ) | 3つの山と2つの谷。中央の山が最も高い | 最初と次の戻り安値を結んだ線 | 起点は一番高い山、終点はネックライン。ネックラインから下に同じ幅 |
| 逆三尊 | 3つの谷と2つの山。中央の谷が最も低い | 最初と次の戻り高値を結んだ線 | 起点は一番低い谷、終点はネックライン。ネックラインから上に同じ幅 |
| ペナント | 急な値動きの後、高値切り下げと安値切り上げが同時に進む三角形 | 上下2本の境界線。ネックラインという概念は使わない | 起点は直前の急変動の始点、終点はその終点。抜けた価格に同じ幅を足す |
| フラッグ | 急な値動きの後、平行な2本の線に挟まれた斜めの小幅な動き | 平行な上下2本の境界線 | 同上。直前の急変動の値幅を、抜けた価格に足す |
| 三角持ち合い | 高値と安値が近づく。両方傾く型と、片方が水平な型がある | 上下2本の境界線 | 起点と終点は三角形の最も広い部分の上端と下端。抜けた価格にその幅を足す |
| レンジ | 上限と下限がほぼ水平で、その間を往復する | 水平な上限と下限そのもの | 起点は上限、終点は下限。抜けた価格にその幅を足す |
※ダブルトップ・ダブルボトム・三尊・逆三尊のネックラインと目標値の定義は、マネックス証券の解説にもとづきます。ペナント・フラッグ・三角持ち合い・レンジの測定方法は、値幅の測り方として広く紹介されているものを私が同じ形式に整理したものです。
チャートパターンは、高値と安値の位置関係だけで定義できる図形
最初に位置づけを整理します。テクニカル指標は計算式を持つものが多いのですが、チャートパターンには計算式がありません。
マネックス証券はテクニカル指標を5つに分類しており、ダブルボトムとダブルトップ、ヘッドアンドショルダーズ、三角保合い、ソーサートップとソーサーボトムは「フォーメーション分析」というカテゴリにまとめられています(マネックス証券「テクニカル指標一覧」)。移動平均線やRSIとは別枠、という扱いです。
計算式がないということは、判定に主観が入りやすいということでもあります。だからこそ、ネックラインの位置と測定の起点終点を先に決めてしまう必要がある。名前だけ覚えても使えた気がしないのは、この2点を決めていないからだと思います。
1本のローソク足の内部構造についてはローソク足を実体とヒゲの比率で読む記事にまとめています。この記事で扱うのは、そのローソク足が何十本も並んでできる大きな形のほうです。
ダブルトップとダブルボトムは、ネックラインが測定の基準線になる
いちばん出番が多いのがこの2つ。マネックス証券の解説では、ダブルトップは天井が二つあるチャートの形でアルファベットのM、ダブルボトムは底が二つある形でWにたとえられます。ネックラインはダブルボトムでは1番底を形成した後の高値、ダブルトップでは1番天井を形成した後の安値。そして目標値は、2番底や2番天井とネックラインの長さと同じ長さの位置に置きます(マネックス証券「ダブルボトム&ダブルトップ」)。
ここで注意したいのが、測定の起点が「1番天井」ではなく「2番天井」だという点です。2つの天井は完全に同じ高さになることのほうが少ないので、どちらを起点にするかで目標値がずれます。次の章で、そのずれを金額まで出します。
みんなのFXもダブルトップとダブルボトムを主要なテクニカルの1つとして解説しており、フラッグやトレンドラインと並べて紹介しています(みんなのFX「主要なテクニカル指標」)。複数の会社が同じ形を取り上げているのは、それだけ言及される機会が多いということ。ただし「よく機能する」という意味ではありません。
三尊はヘッドアンドショルダーの日本語名で、中央の山が最も高い形
三尊という呼び方に戸惑う方が多いので、対応関係をはっきりさせます。三尊とヘッドアンドショルダーズは同じ形を指し、前者が日本語での呼び名にあたります。
由来は酒田五法の三山です。マネックス証券の解説によると、三山は「3回突破できなかった高値は、もう突破できないだろう、という推測で相場の天井を見極めるパターン分析」であり、中央の山が最高の場合を三尊と呼びます。反対に、3回突破できなかった安値で底を見極めるのが三川で、中央の谷が最低の場合が逆三尊です(マネックス証券「酒田五法」)。
測り方はダブルトップと似ていますが、ネックラインの引き方が違います。ヘッドアンドショルダーズのネックラインは、トップの場合は最初と次の戻り安値を結んだ線、ボトムの場合は最初と次の戻り高値を結んだ線。目標値は「一番高い山とネックラインの長さと同じ長さの位置」とされています(マネックス証券「ヘッドアンドショルダーズ」)。
つまり2点セットで違いを覚えるのが早い。ダブルトップのネックラインは1点の安値、三尊のネックラインは2点を結んだ線。測定の起点はダブルトップが2番天井、三尊が一番高い山(中央)。
なお同じ解説では、ヘッドアンドショルダーズは「ダブルフォーメーションと比較して出現頻度が少なく、さらに高い確率でトレンド転換を判断することができる」とも書かれています。ただし、この確率を裏づける数値そのものは同ページに示されていません。私としては、頻度が少ないという事実のほうを重く見て、めったに出ない形を待つより測り方を身につけるほうが実用的だと考えています。
ダブルトップを実際の価格で置くと、目標値幅は81.0pipsで2,000通貨なら1,620円
数字にします。前提を先に置きます。米ドル/円は1pips=0.01円、2,000通貨なら1pips=20円。基準レートは日本銀行が公表した2026年7月21日17時時点の162.59円台で、以下の価格はその近辺に私が置いた仮の数値です(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。
- 1番天井 163.400円
- 押し安値(ネックライン) 162.550円
- 2番天井 163.360円
- ネックラインを割った終値 162.500円
この4点で目標値を出します。
| 測定の起点 | 計算 | パターンの高さ | 2,000通貨での金額 | 目標値 |
|---|---|---|---|---|
| 2番天井(解説どおり) | 163.360 − 162.550 | 81.0pips | 1,620円 | 161.740円 |
| 1番天井(起点を取り違えた場合) | 163.400 − 162.550 | 85.0pips | 1,700円 | 161.700円 |
差は4.0pips、金額にして80円。2,000通貨ならこの程度ですが、10万通貨なら4,000円の差になります。起点をどちらに取るかを最初に決めておく価値は、ここにあります。
次に、エントリーからの距離を出します。ネックラインを割った終値162.500円で売ったとすると、目標161.740円までは76.0pips、金額で1,520円です。
損切りをどこに置くかで、この取引の姿はまったく変わります。
| 損切りの置き方 | 損切り価格 | 損切りまでの距離 | 2,000通貨での損失額 | 利益1,520円との比 |
|---|---|---|---|---|
| 2番天井の少し上 | 163.410円 | 91.0pips | 1,820円 | 0.84倍 |
| ネックラインの少し上 | 162.700円 | 20.0pips | 400円 | 3.80倍 |
同じ形、同じ目標値なのに、損切りの置き方だけで比率が0.84倍と3.80倍に分かれました。前者は形が崩れるまで耐える置き方で、損失額は2,000通貨の必要証拠金13,007円(取引金額325,180円の4%)の約14%にあたります。後者は割った線に戻されたら降りる置き方で、必要証拠金の約3.1%。
「どちらが正解か」と思うかもしれません。正解はなく、どちらを選ぶかで許容できる損失額が決まるだけです。ここを決めずにパターンだけ見つけても、注文には落ちません。
なお取引コストも足しておきます。ヒロセ通商のLION FXは米ドル/円のスプレッドをAM9:00から翌AM3:00まで0.2銭と公表しており、2,000通貨なら1往復で4円(ヒロセ通商「LION FXスプレッド情報」)。この規模の値幅を狙うなら、コストは判断を変えるほどの大きさではありません。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。
ペナント・フラッグ・三角持ち合いは、直前の急な値動きの幅を測る形
ここまでは天井や底で出る転換の形でした。次は、動きの途中で出る形を扱います。
ペナントとフラッグは、急な値動きのあとに現れる小さな保ち合いです。ペナントは高値の切り下げと安値の切り上げが同時に進んで三角形になる形、フラッグは平行な2本の線に挟まれて斜めに推移する形。どちらも、直前の急変動の値幅を測って、保ち合いを抜けた価格に足すという測り方をします。
三角持ち合いはマネックス証券の分類で「三角保合い」としてフォーメーション分析に含まれています(マネックス証券「テクニカル指標一覧」)。測定の起点は三角形の最も広い部分、つまり形が始まった時点の高値と安値です。
数字を1つ置きます。三角形の最も広い部分が163.200円と162.400円だとすると、幅は80.0pips、2,000通貨で1,600円ぶん。162.900円で下抜けたなら、目標は162.900 − 0.800 = 162.100円という計算になります。
大事なのは、これらの形が「必ずその方向へ抜ける」ものではないという点です。三角形が収束していくと、どちらへ抜けるかは形からは分かりません。測れるのは抜けたあとの目安であって、方向ではないということ。
レンジは抜けたら終わる形で、上限と下限の距離がそのまま測定の起点になる
最後にレンジ。上限と下限がほぼ水平で、その間を価格が往復している状態です。
レンジがほかの形と違うのは、成立中と崩壊後で使い方が正反対になる点です。成立中は上限で売り、下限で買うという往復の取引が想定されます。崩壊後、つまりどちらかを抜けたあとは、レンジの縦幅を抜けた価格に足して目標を測る形に切り替わります。
たとえば上限163.000円・下限162.400円のレンジなら縦幅は60.0pips、2,000通貨で1,200円。上限を163.050円で上抜けたなら、目標は163.050 + 0.600 = 163.650円です。
ここで正直に書いておきたいことがあります。レンジの上限と下限は、あとから見れば明確ですが、渦中では「まだ続くのか、もう抜けたのか」が分かりません。抜けたと判断する基準をどう置くかは、それ自体が独立した論点になります。この記事で扱えるのは、抜けたあとに何pipsを目安とするかという測り方までです。
パターンは動く理由ではなく、注文が集まりやすい価格を示した地図
「なぜダブルトップで下がるのか」と考えたことはないでしょうか。私はこの問いへの答えを、公的な資料の中に見つけられていません。
分かるのは、パターンが指し示す価格に注文が置かれやすいという構造のほうです。ネックライン162.550円という水準は、多くの人が同じ手順で引けば同じ位置に出ます。そこに逆指値の売り注文が集まれば、割ったときに約定が連鎖しやすい。これは値動きの理由というより、注文が置かれる場所の話です。
だから私は、チャートパターンを予測の道具ではなく地図として扱っています。地図は目的地を保証しませんが、道がどこにあるかは教えてくれる。ネックラインや境界線は、その道にあたります。
この考え方をとると、「パターンが外れた」という言い方もしなくて済みます。測った目標に届かなかっただけで、測ること自体は間違っていない。損切り位置を先に決めていれば、届かなかった場合の損失額もすでに分かっています。
FXのチャートパターンとダブルトップについて多い疑問
形の定義と測り方は揃いました。実際に使い始めると出てくる4つの疑問に答えます。
FXでダブルトップとはどういうことですか?
高値がほぼ同じ水準で2回できて、アルファベットのMのような形になった状態を指します。1番天井の後にできた押し安値がネックラインで、そこを割ったところで形が完成したと判定するのが一般的です(マネックス証券「ダブルボトム&ダブルトップ」)。
注意点は、2つの天井が完全に同じ高さになる必要はないということ。この記事の例でも163.400円と163.360円で4.0pipsの差があります。どこまでの差を許容するかは、自分で決めておく必要があります。
チャートパターンの的中率はどのくらいですか?
的中率を示した検証可能な一次資料を、私は確認できていません。そのため、この記事では確率の数値を一切書いていません。
ネット上には具体的な勝率を掲げた情報もありますが、検証対象の通貨ペア、期間、パターンの判定基準が示されていなければ、その数字は再現できません。数字を見かけたら、まず判定基準が書かれているかを確認してください。
1万円の資金でもチャートパターンを狙えますか?
通貨量しだいです。この記事で使った2,000通貨の場合、必要証拠金は取引金額325,180円の4%にあたる約13,007円なので、1万円では足りません。
1,000通貨なら必要証拠金は約6,504円まで下がります。SBI FXトレードのように1注文あたりの最小数量を1通貨単位としている会社もあるので、資金に合わせて量を落とすこと自体は可能です(SBI FXトレード「取引ルール」)。ただし必要証拠金ぎりぎりで建てると、わずかな逆行でロスカット水準に触れます。※2026年7月時点。
三尊とヘッドアンドショルダーは違うものですか?
同じ形です。三尊は酒田五法の三山のうち、中央の山が最高になったものを指す日本語の呼び名で、英語のヘッドアンドショルダーズと同じ形を表しています(マネックス証券「酒田五法」)。
呼び名が2つあるのは、日本の相場記録の系譜と欧米の系譜がそれぞれ独立に名前をつけたからだと考えられます。逆三尊とヘッドアンドショルダーズボトムの関係も同じ。
チャートパターンは当たる形ではなく、値幅を測るための物差し
チャートパターンの学習が途中で止まりやすいのは、形の名前を集める作業になってしまうからだと思います。名前は8つも覚えれば十分で、その先に必要なのは、ネックラインをどこに引き、どの2点を測るかという手順のほうです。
- 実用に必要なのはネックラインの位置と、値幅測定の起点と終点の2つだけ
- ダブルトップの測定起点は2番天井。1番天井と取り違えると目標値が4.0pipsずれる
- 三尊はヘッドアンドショルダーの日本語名で、ネックラインは2つの戻り安値を結んだ線
- 例に置いた目標値幅は81.0pips、2,000通貨で1,620円。損切り位置しだいで利益と損失の比は0.84倍にも3.80倍にもなる
- 的中率を示す一次資料は確認できていないため、確率の数字は判断材料にしない
形を測れるようになったら、次は形の中で価格がどのあたりにいるかを別の道具でも確かめたくなります。線ではなく計算式で相場の位置を見る方法は移動平均線の設定とゴールデンクロスの使い方をまとめた記事に整理してありますので、あわせて確認してみてください。

