FXは副業になる?会社員の兼業トレード術と注意点

FXは副業になる?会社員の兼業トレード術と注意点

「うちの会社は副業禁止だけど、FXはどうなんだろう。資産運用なら大丈夫だと聞いたこともあるが、根拠がよく分からない」

こういった疑問に答えます。

先に正直なところを書きます。FXを名指しで副業と定めた法令は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。だからといって「FXは副業に当たらない」と断定することもできません。副業かどうかを決めているのは法令ではなく勤務先の就業規則で、その就業規則の作成義務は労働基準法が常時10人以上の職場に課しているからです。この記事では、就業規則で制限されうる行為の類型と、兼業で取引する場合の時間設計に絞って整理します。

取引できる時間帯が限られるほど、その時間帯のスプレッドが効いてきます。時間帯別の条件を並べて見ておきたい方は、主要FX会社の比較ページで各社の取引条件を確認できます。

いくら稼ぐかを先に決めておきたい方は、FXで月10万円を稼ぐための必要資金と手順の記事で目標額と資金の関係を数字にしました。この記事は、その時間をどこから捻出するかという側の話です。

行為就業規則で副業として扱われやすいか判断の手がかり
他社と雇用契約を結んで働く扱われやすい労働時間の通算が必要になり、届出や許可の対象になりやすい
請負や業務委託で継続的に仕事を受ける扱われやすい報酬を得て事業に従事する形になり、競業や秘密漏洩が論点になる
開業届を出して自ら事業を営む扱われやすい自営兼業として、規程に明示されていることが多い
株式や投資信託を売買する資産運用として扱われることが多い副業条項ではなく、投資行為の内規で扱われている場合がある
FXを売買する名指しの定めは確認できず勤務先の規程の書き方と、勤務時間中に取引するかどうかで変わる

この表は一般的な整理であり、個別の職場の規程を上書きするものではありません。

FXを名指しで副業と定めた法令は、今回調べた範囲では見つからなかった

まず、法令の側に何が書かれていないかを確認します。

厚生労働省は副業・兼業について専用のページを設け、ガイドラインや届出様式例を公開しています(厚生労働省「副業・兼業」)。ここに並ぶ資料は、労働時間の通算や管理モデルといった、雇用されて働くことを前提にした内容が中心です。

そのガイドラインの基本的な考え方には、裁判例を踏まえた原則として「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」と書かれています(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月8日改定版))。

原則は自由。そのうえで、企業が副業・兼業を制限できる場合として4つの類型が挙げられています。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 業務上の秘密が漏洩する場合
  3. 競業により自社の利益が害される場合
  4. 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

この4類型のどれにも、金融商品の売買という言葉は出てきません。FXという語も同様です。

だからといって「FXは副業ではない」と言い切ることはできません。言えるのは、FXを副業と定めた法令が確認できなかったこと、そして制限が許される場面としてこの4つが示されていること。この2つまでです。

判断がどこに委ねられているのかは、次の章で見ていきます。

就業規則は常時10人以上の職場に作成義務があり、判断はそこに書かれている

副業かどうかを決めるのは、法令ではなく勤務先の規程です。その規程がどう位置づけられているかを確認します。

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に対し、始業終業時刻や賃金、退職に関する事項などについて就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならないと定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。

つまり、10人以上の職場には規程が存在するはずだということ。存在しない、または見たことがないという場合は、まずその所在を確認するところから始まります。

厚生労働省が公開しているモデル就業規則は、令和7年12月版で第14章に「副業・兼業」の章を置いています(厚生労働省「モデル就業規則について」)。章立てとして独立した項目になっている点は、それだけ規程で扱われる前提になっているという意味でしょう。

正直に書いておくと、この章に置かれた条文の本文は、今回取得したファイルの範囲では確認できませんでした。したがって、条文の文言をこの記事では引用しません。確認できたのは、章として存在するという事実までです。

自分の勤務先の規程を読むときは、次の4点を順に探してください。

  1. 「副業」「兼業」という語が使われている条文があるか
  2. その条文が禁止なのか、許可制なのか、届出制なのか
  3. 「営利企業」「事業」「報酬」といった語がどう定義されているか
  4. 投資や資産運用について、副業とは別立ての条文があるか

4つ目が意外に重要です。金融機関や上場企業では、副業条項とは別に投資行為の内規が置かれていることがあります。副業条項だけを読んで安心するのは、片方の目をふさいだまま歩くようなもの。

なお、公務員の兼業規制や金融機関の自主規制は、条文と自主規制規則という別の系統の話になります。この記事が扱うのは、民間企業の就業規則と実際の時間の使い方のほうです。

勤務時間中に注文を出すかどうかが、いちばん規程に触れやすい分岐

4類型のうち、FXで現実に問題になりやすいのは1つ目の「労務提供上の支障」です。

理由は単純で、FXの取引時間が平日のほぼ全体を覆っているから。ヒロセ通商は取引時間を、米国標準時で月曜7:00から土曜6:30まで、夏時間で月曜6:30から土曜5:30までと公表しています(ヒロセ通商「取引要綱(LION FX)」)。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。

つまり、勤務時間の9時から17時も取引時間の中に入っています。取引しようと思えばできてしまう、という状態が常にあるということ。

ここで線を引くと、判断はかなり整理されます。

  • 勤務時間外に注文を出し、勤務時間外に決済する。労務提供への影響は生じにくい
  • 勤務時間外に注文を出し、逆指値と指値を置いたまま勤務する。約定の確認が勤務時間中に入るかどうかが分岐点
  • 勤務時間中に相場を見て注文を出す。労務提供上の支障として説明されうる領域に入る

3つ目が危ういのは、利益が出たかどうかとは関係がありません。業務時間中に業務以外の作業をしていた、という事実のほうが問題になるからです。

「昼休みならいいのでは」と思うかもしれません。ここは規程しだいで、休憩時間の扱いを明記している職場もあれば、そうでない職場もあります。曖昧なまま運用するより、人事担当に文書で確認したほうが早いと考えています。

税の側から勤務先に伝わる経路を心配している方は、FXの利益と住民税の徴収方法を扱った記事に手続きの順番をまとめました。規程の話と、申告の話は別々に確認してください。

会社員が触れられる時間帯は、取引時間全体の約12.6%しかない

では、勤務時間を避けると何時が残るのか。ここを表にします。

前提を先に置きます。日本時間の夏時間を基準とし、平日は9時から17時が勤務時間、通勤を含めて8時から18時は取引できないものとしました。市場の時間帯は、外為どっとコムが公表している区分を使います。同社は東京市場を日本時間8時から17時、ロンドン市場を夏時間16時から26時、ニューヨーク市場を夏時間21時から早朝6時とし、ニューヨーク市場が始まる21時以降はロンドン市場と重なるため値動きが大きくなりやすく、1日の中で最も取引が活発な時間帯になると説明しています(外為どっとコム「FXの取引時間は?為替取引が活発になる時間帯」)。

スプレッドにはヒロセ通商の公表値を当てはめました。5.9銭が適用されるのはAM3:00からAM9:00で、AM9:00から翌AM3:00は0.2銭という米ドル/円の設定です(ヒロセ通商「LION FXスプレッド情報」)。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。

日本時間会社員の状況主に開いている市場米ドル/円スプレッド兼業での使いやすさ
6:30〜8:00起床から出勤準備主要3市場はいずれも閉場中5.9銭コストが最も高く、時間も細切れ
8:00〜9:00通勤東京の序盤5.9銭(9時から0.2銭)移動中の発注は避けたい
9:00〜17:00勤務東京0.2銭規程の確認が済むまで触れない
17:00〜21:00退勤から帰宅東京の終盤とロンドン0.2銭帰宅時刻しだいで使える
21:00〜24:00自宅ロンドンとニューヨークが重なる0.2銭条件がいちばん揃う時間帯
0:00〜3:00深夜ニューヨークの後半0.2銭翌日の勤務に影響が出る
3:00〜6:30就寝ニューヨークの終盤5.9銭起きていてもコストが不利

平日の21時から24時だけを取引時間とすると、週15時間。ヒロセ通商の取引時間は週で約119時間から119.5時間ですから、全体の約12.6%にあたります。

この12.6%という数字の受け取り方は2通りあります。1つは「そんなに少ないのか」。もう1つは「その3時間に、ロンドンとニューヨークが重なる時間帯がまるごと入っている」。

私は後者を推します。会社員の生活時間と、市場が最も動く時間帯が、たまたま重なっているからです。時間が足りないのではなく、使える時間の質はむしろ悪くありません。

なお会社によって取引時間の終わりは少しずつ違います。DMM FXは夏時間で月曜7:00から土曜5:50まで、冬時間で月曜7:00から土曜6:50までと公表しており(DMM FX「サービス概要」)、GMOクリック証券は月曜7:00から土曜7:00まで、米国夏時間は土曜6:00までとしています(GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール(個人のお客様)」)。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。

出勤前の時間帯を選ぶと、往復コストが29.5倍になる

上の表でいちばん危ないのは、実は勤務時間ではなく出勤前です。

「朝の1時間なら誰にも迷惑をかけない」という発想は自然ですが、その時間帯のスプレッドは5.9銭。9時以降の0.2銭に対して29.5倍です。

金額にします。1往復あたりのコストと、月20往復・年240往復での差を並べました。

数量0.2銭の時間帯(1往復)5.9銭の時間帯(1往復)月20往復の差年240往復の差
1,000通貨2円59円1,140円13,680円
10,000通貨20円590円11,400円136,800円
30,000通貨60円1,770円34,200円410,400円

1万通貨で毎営業日1往復すると、時間帯の選択だけで年13万6,800円の差。手法も通貨ペアも同じで、変えたのは時計だけです。

朝しか時間が取れないという方もいるはずです。その場合でも、9時を過ぎてからにできないかを先に検討してください。8時59分と9時1分で、条件が29.5倍変わる会社があるということですから。

なお、原則固定と書かれていても完全固定ではありません。流動性の低い時間帯や指標発表時等には広がる旨の注記が付いています。

兼業で回すなら、決済まで含めて発注時に完結させる

時間帯が決まったら、次は注文の置き方です。ここは規程の話とコストの話、その両方に効いてくる部分。

勤務時間中にポジションを持ち越すと、確認したくなります。そして確認したくなった時点で、労務提供上の支障という論点に片足を突っ込むことになります。

そこで、兼業では次の3点を先に固定しておくことを勧めます。

  1. 決済注文を新規注文と同時に置く。利益確定と損切りの両方を発注時に確定させる
  2. 持ち越さない時間の上限を決める。たとえば24時までに決済できなければ成行で閉じる
  3. 勤務時間中は取引画面を開かない。通知も切っておく

1つ目を実行できれば、勤務時間中に相場を見る理由がなくなります。見なくてよい状態を作るのが、規程対策としても資金管理としても効くということ。

そして、利益が出たら申告が必要になります。国税庁によれば、FXの差金決済による利益は先物取引に係る雑所得等として申告分離課税の対象で、税率は合計20.315%です(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。給与の額がいくらでも、この税率は変わりません。

いくらから申告が要るのかという線引きは一律ではありません。給与所得者かどうか、他に副収入があるかどうかで変わってきます。自分の場合にどちらへ転ぶかは、最後に国税庁の情報を読むか、税務署へ直接確認して決めてください。

FXは副業になるのかを調べた会社員から、実際によく聞かれる4つの質問

規程と時間の話はここまでで揃いました。とはいえ、判断の手前で引っかかる点が残っているはずです。よく聞かれる4つに答えます。

FXは副業になりますか?

勤務先の就業規則の書き方によります。FXを名指しで副業と定めた法令は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。

厚生労働省のガイドラインが示す制限の4類型は、労務提供上の支障、業務上の秘密の漏洩、競業による利益侵害、名誉や信用の毀損の4つ。いずれも金融商品の売買を直接指していません。ただし、これは「FXは副業に当たらない」という結論を意味しません。規程の定義しだいで扱いが変わるため、勤務先で確認してください。

副業禁止の会社でもFXをして大丈夫ですか?

大丈夫だとも、駄目だとも、この記事は判定しません。判定できるのは規程を読める立場の人だけです。

そのうえで確認の順番は決められます。就業規則の副業条項を読み、投資行為の内規があるかを探し、許可制か届出制かを確かめ、最後に人事担当へ文書で確認する。口頭の回答は後から根拠として使えないので、文書で残してください。

勤務時間中に取引するのは問題になりますか?

4類型のうち労務提供上の支障として説明されうる領域に入ります。利益が出たかどうかとは関係なく、業務時間中に業務以外の作業をしていたという事実のほうが問題になるからです。

対策は、決済注文を新規注文と同時に置いて、勤務時間中に画面を見る理由をなくすこと。通知を切るところまでやると確実です。

会社員はいつ取引すればいいですか?

平日の21時から24時が、条件としてはいちばん揃います。ロンドンとニューヨークが重なる時間帯であり、ヒロセ通商の公表値ではスプレッドも0.2銭の区分に入るためです。

避けたいのは出勤前です。AM3:00からAM9:00は5.9銭で、往復コストが29.5倍。1万通貨で毎営業日1往復すると年13万6,800円の差になります。ただし、この時間帯を選ぶかどうかは生活の都合が優先されるべきで、無理に夜へ寄せる必要はありません。

FXが副業に当たるかどうかは、法令ではなく手元の就業規則が決める

ここまで法令とガイドラインを見てきましたが、答えを出しているのはどれでもありませんでした。答えを持っているのは、勤務先のキャビネットかイントラネットにある就業規則のほうです。

  • FXを名指しで副業と定めた法令は、今回調べた範囲では見つからなかった
  • 厚生労働省のガイドラインは、制限が許される場合として労務提供上の支障、秘密漏洩、競業、名誉や信用の毀損の4類型を挙げている
  • 就業規則は常時10人以上の職場に作成と届出の義務があり、判断の根拠はそこに書かれている
  • 会社員が使える平日21時から24時は、取引時間全体の約12.6%だがロンドンとニューヨークが重なる時間帯にあたる
  • 出勤前のAM3:00からAM9:00は往復コストが29.5倍で、1万通貨・年240往復なら13万6,800円の差になる

まず就業規則を読み、次に触れる時間帯を決め、そのあとで数量を決める。この順番なら、あとから戻る作業が減ります。

勤めながら続けるうちに、専業への転換を考える方もいるはずです。必要な資金と、会社を辞めたときに増える固定費はFXだけで生活できるかを検証した記事に金額で並べたので、判断の材料にしてください。

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