「FXって結局、本当に儲かるんだろうか。初心者だと最初にどのくらい稼げるものなのか、目安が知りたい」
こういった疑問に答えます。
先に正直なところを書くと、儲かるとも儲からないとも断定できません。参加者の平均利益を集計した公的統計は今回の調査で確認できず、金額の相場を示す根拠がないからです。ただし、判定できるものが1つだけあります。往復コストを差し引いたあとの期待値がプラスかマイナスか、その符号です。この記事では、同じ勝率と損益比でも符号が反転する境目を、1万通貨の実数で計算します。
符号を決める最大の変数は往復コストなので、口座選びは結果に直結します。各社のスプレッドや取引単位を先に見比べておきたい方は、主要FX会社の比較ページに条件を一覧でまとめました。
| 論点 | この記事の答え |
|---|---|
| 儲かるかどうか | 断定できない。判定できるのはコスト差引後の期待値の符号だけ |
| 判定に使う式 | 期待値 = 1回の許容損失 ×(勝率 × 損益比 −(1−勝率))− 往復コスト |
| 1万通貨の往復コスト | 米ドル/円で0.2銭なら20円、5.9銭なら590円 |
| 必要証拠金 | 162.59円・1万通貨で65,036円(取引金額の4%) |
| 符号が変わる境目 | 勝率50%・損益比1.2なら、損切り2.0pips(0.2銭)と59.0pips(5.9銭) |
| 初心者が稼げる金額 | 資金・1回の許容損失・回数の3つを置かないと1円も算出できない |
| 平均利益の相場 | 公的統計を確認できず。金額の目安は示しません |
| 利益に対する税 | 申告分離課税20.315%。損失は連続申告を条件に3年繰越 |
儲かるかどうかは、コストを引いたあとの符号でしか判定できない
「FXは儲かりますか」に一言で答えられない理由は、質問に条件が入っていないからです。
同じ相場、同じ通貨ペアでも、勝率と損益比と取引回数と往復コストの4つが違えば、結果は正負どちらにも転びます。だから答えられるのは「どういう条件ならプラスになり、どこを越えるとマイナスになるか」までということ。
判定式は1本だけ。1回の取引の期待値を、円で表します。
期待値(円)= 1回の許容損失額 ×(勝率 × 損益比 −(1−勝率))− 1往復のコスト
かっこの中は、損失1回分を1とみなしたときの取り分です。ここがプラスでも、往復コストを引いた結果がマイナスになれば、その手法は続けるほど資金が減ります。
以降で使う勝率と損益比は、すべて仮定値です。実際の成績を示すものでも、達成できると保証するものでもありません。この点は最初に断っておきます。
1万通貨の往復コストは、取引する時間帯だけで20円と590円に分かれる
式の右端にある往復コストから固めます。ここだけは仮定ではなく、公表値で確定できるからです。
計算の前提を並べます。米ドル/円のレートは、日本銀行が公表した2026年7月21日17時時点の162.59円で統一しました(日本銀行「外国為替市況(日次)」)。数量は1万通貨、クロス円なので1pipsは0.01円、つまり1万通貨で100円。スプレッドは1往復につき1回だけ差し引きます。
必要証拠金は、個人顧客との店頭FXで取引金額の4%以上と定められています(金融先物取引業協会「FX取引の規制について」)。162.59円 × 10,000通貨 × 4% = 65,036円が、この記事の1ポジションあたりの必要証拠金です。
スプレッドは、時間帯別の数値を公表している会社の値を使います。ヒロセ通商は米ドル/円について、AM9:00から翌AM3:00が0.2銭、AM3:00からAM9:00が5.9銭と公表しています(ヒロセ通商「LION FXスプレッド情報」)。※2026年7月時点。最新の条件は公式サイトで確認してください。
| 時間帯(ヒロセ通商の公表値) | スプレッド | 1万通貨の往復コスト | 必要証拠金65,036円に対する比率 |
|---|---|---|---|
| AM9:00〜翌AM3:00 | 0.2銭 | 20円 | 約0.03% |
| AM3:00〜AM9:00 | 5.9銭 | 590円 | 約0.91% |
同じ会社の同じ通貨ペアで、往復コストが29.5倍。手法をまったく変えなくても、時計を見るかどうかで式の右端が29.5倍動くということ。
なお、原則固定と書かれていても完全固定ではありません。流動性の低い時間帯や指標発表時には広がる旨の注記が付いています。
勝率50%・損益比1.2でも、損切り幅が2pipsを下回ると符号が反転する
ここからが本題です。式の左側(取り分)と右端(コスト)を、実数でぶつけます。
前提は、勝率50%、損益比1.2、1万通貨。かっこの中は 0.5 × 1.2 −(1−0.5)= 0.10 になります。1回の許容損失額に0.10を掛けたものが、コストを引く前の取り分です。
損切り幅を変えると、1回の許容損失額が変わります。損切り10pipsなら1敗1,000円、50pipsなら1敗5,000円。それぞれで計算した結果が次の表です。
| 損切り幅 | 1敗の損失額 | コスト前の期待値 | 0.2銭を引いた期待値 | 5.9銭を引いた期待値 |
|---|---|---|---|---|
| 2pips | 200円 | +20円 | 0円 | −570円 |
| 5pips | 500円 | +50円 | +30円 | −540円 |
| 10pips | 1,000円 | +100円 | +80円 | −490円 |
| 20pips | 2,000円 | +200円 | +180円 | −390円 |
| 50pips | 5,000円 | +500円 | +480円 | −90円 |
| 59pips | 5,900円 | +590円 | +570円 | 0円 |
勝率も損益比も1行目から最終行までまったく同じです。変えたのは損切り幅だけ。それなのに、0.2銭の列は2pipsでゼロ、5.9銭の列は59pipsでゼロになりました。
この2つが符号の境目です。0.2銭の時間帯なら損切り2pipsを下回った瞬間にマイナス、5.9銭の時間帯なら59pipsを下回った瞬間にマイナス。境目が29.5倍離れています。
早朝に数pipsを取りにいく設計が成立しない理由が、ここで数字になりました。5.9銭の時間帯で損切り10pipsの手法は、勝率50%・損益比1.2を毎回きっちり実現しても、1回あたり490円ずつ確実に減っていく計算です。
「勝率を上げれば取り返せるのでは」と思うかもしれません。その通りで、かっこの中の係数が大きくなれば境目は手前に移動します。次の章でその感度を出します。
勝率と損益比の組み合わせごとに、符号が変わる損切り幅を並べる
境目の損切り幅は、次の式1本で出せます。
境目の損切り幅(pips)= 1往復のコスト ÷ {100 ×(勝率 × 損益比 −(1−勝率))}
分母の100は、1万通貨で1pipsが100円であることから来ています。この式に、よく語られる勝率と損益比の組み合わせを入れました。すべて仮定値です。
| 勝率 | 損益比 | かっこの中の係数 | 0.2銭での境目 | 5.9銭での境目 |
|---|---|---|---|---|
| 30% | 3.0 | 0.20 | 1.0pips | 29.5pips |
| 40% | 2.0 | 0.20 | 1.0pips | 29.5pips |
| 50% | 1.0 | 0.00 | 常にマイナス | 常にマイナス |
| 50% | 1.2 | 0.10 | 2.0pips | 59.0pips |
| 50% | 1.5 | 0.25 | 0.8pips | 23.6pips |
| 60% | 1.0 | 0.20 | 1.0pips | 29.5pips |
| 70% | 0.6 | 0.12 | 1.7pips | 49.2pips |
| 70% | 0.8 | 0.26 | 0.8pips | 22.7pips |
3行目に注目してください。勝率50%・損益比1.0は、コスト前の期待値がちょうどゼロになる組み合わせです。ゼロから何かを引けば必ずマイナスになるので、損切り幅をいくら広げても符号は変わりません。「勝率5割を目指す」という目標が、コストを入れた瞬間に達成不能になる例。
もうひとつ読み取れるのは、係数が同じなら境目も同じという点です。勝率30%・損益比3.0と、勝率60%・損益比1.0は、どちらも係数0.20で境目は同じ。勝率が2倍違っても、コストとの関係では同じ位置にいます。勝率単独では何も決まらないということ。
そして全行に共通するのは、5.9銭の列の境目が0.2銭の29.5倍であること。コストが29.5倍なら境目も29.5倍。式が線形なので当然ですが、体感より影響が大きいはずです。
初心者がいくら稼げるかに答えられないのは、統計ではなく前提がないから
「初心者は最初にいくら稼げますか」という問いに、金額で答えられない理由を式で示します。
総損益= 取引回数 × {1回の許容損失額 ×(勝率 × 損益比 −(1−勝率))− 1往復のコスト}
右辺に登場する数のうち、読者が自分で決めなければならないものが3つあります。
| 決める項目 | 例 | 金額への効き方 |
|---|---|---|
| 口座資金 | 100万円 | 1回の許容損失額の上限を決める |
| 1回の許容損失額 | 資金の1%=1万円 | 損切り幅と通貨量を決める(1万通貨なら100pips) |
| 取引回数 | 3か月で100往復 | コストの累計と期待値の累計を決める |
この3つが空欄のままだと、右辺は計算できません。だから「初心者はいくら稼げるか」は、統計がないから答えられないのではなく、質問に必要な入力が含まれていないから答えられないということ。
3つを埋めて計算してみます。資金100万円、1回の許容損失1万円、100往復、勝率50%、損益比1.2。
コスト前の総損益は、100回 × 1万円 × 0.10 = 100,000円。ここから往復コストを引きます。
| 前提 | コスト前 | 往復コストの累計 | 差引 | 20.315%課税後の手取り |
|---|---|---|---|---|
| 0.2銭で100往復 | +100,000円 | 2,000円 | +98,000円 | 約78,091円 |
| 5.9銭で100往復 | +100,000円 | 59,000円 | +41,000円 | 約32,671円 |
同じ勝率、同じ損益比、同じ回数で、手取りが2.4倍違いました。取引を何ひとつ変えていないのに、です。
ただしこれは「100万円あれば3か月で7万8千円になる」という話ではありません。勝率50%と損益比1.2を100回続けられるという仮定が入っているだけで、その仮定が成り立つ保証はどこにもない。仮定を変えれば答えは変わります。
なお、勝率や損益比の平均値を示す公的統計も、今回は確認できませんでした。金融先物取引業協会が公表しているのは取引金額と建玉であって、個人の成績ではありません(金融先物取引業協会「店頭FX月次速報」)。割合や平均をめぐる数字の扱いは、FXで勝ってる人の割合と9割が負ける説の検証で出所ごとに整理しました。
儲かると断言する勧誘は、制度の側から先に否定されている
金額の目安が示せないと聞いて、物足りなく感じたかもしれません。ただ、そこを埋めてくる相手には注意が要ります。
金融庁は典型的な詐欺的勧誘の文句として「セミナーで勉強すれば、勝てるようになる」「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」を挙げ、FX・暗号資産等について勧誘を要請していない顧客への勧誘は原則禁止だと示しています(金融庁「FX取引・暗号資産等に関する詐欺的な勧誘にご注意ください」)。
期待値の式を見れば、なぜこの手の言葉が成立しないかが分かります。式に入るのは勝率、損益比、許容損失額、回数、コストの5つだけ。「勉強」も「放置」も、この5つのどれにも直接は入りません。入るとすれば勝率と損益比を通じてですが、その改善量を事前に約束できる根拠はありません。
逆に言えば、確実に動かせるのはコストと回数の2つ。取引する時間帯を選び、回数を絞れば、式の右端は自分の意思で小さくできます。手法より先に触るべきはここです。
残った利益からは20.315%が引かれ、損失は3年しか繰り越せない
差引がプラスで終わっても、手元に残る額はもう一段減ります。
その一段は税です。国税庁の分類では、差金決済による利益は「先物取引に係る雑所得等」にあたり、申告分離課税で処理します。税率は所得税15%と地方税5%、そこへ基準所得税額の2.1%の復興特別所得税が乗り、締めて20.315%(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。
先ほどの試算で、0.2銭の98,000円が約78,091円、5.9銭の41,000円が約32,671円になったのはこの計算です。期待値の式にはこの20.315%が入っていないので、税引き後で考えるなら符号の余裕はもう少し欲しいところ。
負けで終わった年にも、後から効いてくる制度があります。国税庁の繰越控除を使えば、損失は翌年以後3年間の利益と相殺できます。使うには2つの手続きが必要。損失が出た年に、申告書付表と計算明細書を添えた確定申告を済ませること。そして翌年からも、申告書付表を添付した確定申告書を切らさず出し続けることです(国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。
利益が出なかった年に申告をやめると、そこで繰越が切れます。負けた年こそ申告する。ここは覚えておいて損がありません。なお、実際の申告の要否や記載内容は個別の事情で変わるため、最終判断は税務署または税理士に確認してください。
FXは儲かるのかを調べた人が、金額の前に確かめる5つの疑問
金額を知りたい気持ちのまま検索すると、答えの出ない問いに時間を使いがちです。よく調べられている5つに絞って答えます。
FXは儲かりますか?
儲かるとも儲からないとも断定できません。判定できるのは、往復コストを差し引いた期待値の符号だけです。
その符号は、勝率、損益比、損切り幅、取引する時間帯の4つで決まります。勝率50%・損益比1.2という同じ条件でも、0.2銭の時間帯で損切り2pipsを下回ればマイナス、5.9銭の時間帯なら59pipsを下回った時点でマイナス。条件抜きの答えは存在しないということ。
FX初心者が最初に稼げる金額はいくらですか?
金額では答えられません。資金、1回の許容損失額、取引回数の3つを決めないと、式の右辺が計算できないからです。
3つを埋めれば計算はできます。資金100万円、1回の許容損失1万円、100往復、勝率50%・損益比1.2という仮定なら、0.2銭で差引98,000円、5.9銭で41,000円。ただしこれは仮定を置いた計算であって、達成できる金額ではありません。
FXはなぜ儲からないと言われるのですか?
コストが取り分より先に確定するからです。
勝率も損益比も事後にしか分かりませんが、往復コストは注文した瞬間に確定します。1万通貨・5.9銭なら1往復590円が、結果と無関係に出ていく。100往復で59,000円です。取り分の期待値がこれを上回らない設計だと、腕とは関係なく資金が減ります。
FXで1円動くと、いくらの損益になりますか?
1万通貨のクロス円なら、1円の変動で1万円です。
内訳はこうなります。1pipsは0.01円で、1万通貨だと100円。1円は100pipsなので、100 × 100円 = 1万円という計算。1,000通貨なら1,000円、10万通貨なら10万円と、通貨量に正比例します。
株とFXでは、どちらが儲かりますか?
金額として比較できる公的な資料は確認できませんでした。ただ、税制上の扱いに1つはっきりした違いがあります。
FXの損益が属する「先物取引に係る雑所得等」は、区分の中でなら通算できる一方、それ以外の所得とは通算できないと明記されています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失が生じた場合」)。片方の損失でもう片方の利益を相殺する使い方はできないということ。
儲かるかどうかの答えは、コストを引いたあとの符号として現れる
ここまで計算してきたことは、突き詰めるとひとつです。儲かるかどうかを決めているのは手法の名前ではなく、コストを引いたあとに符号が残るかどうか。そして符号を動かす変数のうち、自分で確実に選べるのは時間帯と回数と損切り幅の3つでした。
- 判定式は「1回の許容損失 ×(勝率 × 損益比 −(1−勝率))− 往復コスト」の1本だけ
- 1万通貨の往復コストは0.2銭で20円、5.9銭で590円。同じ会社の同じ通貨ペアで29.5倍の差
- 勝率50%・損益比1.2なら、符号が変わる損切り幅は0.2銭で2.0pips、5.9銭で59.0pips
- 勝率50%・損益比1.0は係数がゼロなので、損切り幅をどう置いてもコスト分だけマイナス
- 金額を出すには資金・1回の許容損失・回数の3つが要る。統計がないから出ないのではない
平均利益の相場を探すより、自分の直近50往復から勝率と損益比を出したほうが早く答えに近づきます。
次に読むなら、目標金額を先に決めたときに必要な資金と回数がどう変わるかを扱ったFXで1日5000円稼ぐのに必要な資金と日利の現実へ。この記事の式を、日次の目標額から逆算する形で使います。

