公務員や銀行員はFX禁止?職業別の規制と注意点まとめ

公務員や銀行員はFX禁止?職業別の規制と注意点まとめ

「公務員はFXをやってもいいのか、銀行に勤めていると口座を作れないのか。ネットの説明がバラバラで、どれを信じればいいのか分からない」

こういった疑問に答えます。

先に結論を書きます。FXを名指しで禁止する法令は、国家公務員法にも地方公務員法にも見当たりません。国家公務員の兼業規制について、内閣人事局と人事院の資料には「単に資産運用の一環として株式を所有したり、売買することは兼業規制に抵触するものではありません」と明記されています。ただし、この記載にFXという語は出てきません。そのため、この記事では確認できた事実と確認できなかった事実を分けて書きます。

規程の確認が済んで口座を選ぶ段階に進む方は、主要FX会社の比較ページに各社の取引条件をまとめています。

職業根拠となる法令・規則制限されている内容FXが対象に含まれるか
国家公務員国家公務員法第103条・第104条営利企業の役員兼業と自営兼業、報酬を得て事業に従事すること条文にFXの記載はなし。資産運用としての株式売買は抵触しないと公表資料に明記
地方公務員地方公務員法第38条営利企業の役員等の兼職、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業に従事すること条文にFXの記載はなし。「営利企業を営む」に当たるかは条文からは判断できない
金融商品取引業者の役職員日本証券業協会「協会員の従業員に関する規則」第7条第3項第4号自己の計算による信用取引、有価証券関連デリバティブ取引、特定店頭デリバティブ取引定義が別規則を参照する形で、FXが含まれるかはこの規則からは読み取れない
FX業者の役職員金融先物取引業協会の諸規則規則名の一覧のみ公表自己売買を直接制限する規則は一覧では確認できず
上場企業の従業員金融商品取引法第163条・第166条重要事実の公表前に上場会社等の特定有価証券等を売買すること本条の対象は上場会社等の有価証券。通貨を対象とする規定は本条にない
その他の会社員法令上の制限は確認できず勤務先の就業規則による就業規則の副業規定の書き方次第

FXを名指しで禁止する法令は、今回調べた範囲では見つからなかった

まず前提を揃えます。FXは金融商品取引法上のデリバティブ取引に該当し、業として行うには金融商品取引業の登録が必要です。個人は取引金額の4%以上の証拠金が必要で、レバレッジは25倍以下と定められています(金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」)。

条文の側でも位置づけは明確です。金融商品取引法第2条第20項はデリバティブ取引を市場デリバティブ取引、店頭デリバティブ取引、外国市場デリバティブ取引と定義し、同条第24項第3号で通貨が金融商品として定義されています(e-Gov法令検索「金融商品取引法」)。

つまり規制の対象になっているのは、FXを提供する側です。取引する個人の職業に着目した制限は、この法律には置かれていません。

では公務員の兼業規制はどうか。ここから条文を1つずつ見ていきます。勧誘そのものへの注意点は、FX詐欺の手口を勧誘の経路別に整理した記事にまとめました。職場の規程の話と、外部からの勧誘の話は別々に確認してください。

国家公務員法103条が禁じているのは「営利企業を営むこと」と「役員を兼ねること」

国家公務員法第103条第1項は次のように定めています。

「職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。」

読み取れる禁止対象は2つです。営利企業の役員、顧問、評議員の職を兼ねること。そして自ら営利企業を営むこと。

同条第2項は人事院の承認による適用除外を定め、第3項は「営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員」に対する人事院の報告徴収を定めています(e-Gov法令検索「国家公務員法」)。

第3項に株式所有という言葉が出てきますが、これは売買そのものの禁止ではなく、経営に参加し得る地位にある場合の報告の話です。

もう1本の第104条は次のとおりです。

「職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。」

要件は「報酬を得て」「事業に従事し、又は事務を行う」ことです。金融商品の売買そのものを名指しした文言は、103条にも104条にもありません。

地方公務員法は38条1本にまとまっているが、構造は同じ

地方公務員の場合、規定が1つの条文に集約されています。

地方公務員法第38条第1項は「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において『営利企業』という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」と定めています。ただし書で、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員等を除く)は対象外とされています(e-Gov法令検索「地方公務員法」)。

国家公務員が103条と104条に分かれているのに対し、地方公務員は38条に役員兼職、自営、有報酬従事の3つがまとめられている形です。

違いはもう1つあります。国家公務員は内閣総理大臣と所轄庁の長の許可、地方公務員は任命権者の許可という点。手続きの相手が変わります。

条文の対応関係を並べておきます。

制限される行為国家公務員地方公務員許可・承認の相手
営利企業の役員・顧問・評議員を兼ねる国公法第103条第1項地公法第38条第1項国は人事院の承認、地方は任命権者の許可
自ら営利企業を営む国公法第103条第1項地公法第38条第1項国は人事院の承認、地方は任命権者の許可
報酬を得て事業に従事し、事務を行う国公法第104条地公法第38条第1項国は内閣総理大臣と所轄庁の長の許可、地方は任命権者の許可
経営に参加し得る地位での株式所有国公法第103条第3項(人事院への報告)条文に対応規定は確認できず国は人事院への報告
通貨の売買(FX)条文に記載なし条文に記載なし条文からは判断できない

ここでも、通貨の売買を対象とする文言は出てきません。「営利企業を営む」に当たるかどうかが論点になりますが、条文からその範囲を確定することはできません。

資産運用としての株式売買は兼業規制に抵触しない、と公表資料に書かれている

条文だけでは判断が止まるので、運用側の資料を見ます。

内閣人事局と人事院が公表しているQ&A集には「単に資産運用の一環として株式を所有したり、売買することは兼業規制に抵触するものではありません。」と明記されています。あわせて、発行済株式総数の3分の1を超える株式を保有し、かつ所属府省の行政権の対象となっている企業の場合は、保有状況の報告が必要になりうるとも書かれています(内閣人事局・人事院「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」)。

同じQ&A集には、府省によってはインサイダー取引の防止といった観点から内規で株取引を制限している場合があること、本省審議官級以上の職員には国家公務員倫理法にもとづく報告が必要になることも、括弧書きで添えられています。つまり法令の側で止まっていても、所属先の内規や役職によって別の制約がかかる余地は残るということです。

ここが重要な分かれ目です。両資料が明言しているのは株式についてであって、FXという語はどちらにも出てきません。

したがって、この記載を根拠に「公務員はFXをしてよい」と断定することはできません。書けるのは、資産運用としての株式の所有と売買が兼業規制に抵触しないと公表資料に明記されている、という事実まで。

参考として、自営兼業の基準も示されています。不動産賃貸については、独立家屋5棟以上、アパート10室以上、土地10件以上、年額500万円以上の賃貸料収入のいずれかに当たる場合は承認が必要な兼業に該当するとされています。数量基準が置かれている領域と、置かれていない領域があるということ。

ここから読み取れるのは、規制の側が数量で線を引いている領域と、そもそも線が引かれていない領域があるということです。FXは後者にあたります。

銀行員やFX業者の役職員は、法令ではなく自主規制と各社の内規で決まる

金融機関に勤めている場合、確認する場所が変わります。

日本証券業協会の「協会員の従業員に関する規則」第7条第3項第4号は、従業員の禁止行為として「いかなる名義を用いているかを問わず、自己の計算において信用取引、有価証券関連デリバティブ取引又は特定店頭デリバティブ取引を行うこと」を挙げています。報酬として支給される株式やストック・オプションの価格変動リスクを低減する目的の取引は例外とされています(日本証券業協会「協会員の従業員に関する規則」)。

ここで正直に書いておきます。「有価証券関連デリバティブ取引」と「特定店頭デリバティブ取引」の定義は別の定義規則を参照する形になっており、外国為替証拠金取引が含まれるかどうかは、この規則単独では判断できませんでした。

FX業者側も調べました。金融先物取引業協会の諸規則の一覧には「金融先物取引業務に従事する従業員等の服務に関する規則」などが並びますが、協会員の役職員による自己売買を直接制限する規則は、この一覧では確認できませんでした(金融先物取引業協会「定款・諸規則等」)。規則名の列挙のみで、条項の内容はこのページからは読めません。

まとめると、金融機関の従業員については「FXが禁止されている」とも「禁止されていない」とも公開資料からは断定できないということ。ここは所属先のコンプライアンス部門に確認する以外に方法がありません。

自分の勤務先がどちらの協会に属しているのか、ご存じでしょうか。銀行、証券会社、FX会社で加入している自主規制機関は異なります。まずそこから確認するのが早道です。

上場企業の従業員は、インサイダー規制の対象範囲を条文で確認できる

上場企業に勤めている人が気にするのは、インサイダー取引規制との関係です。

金融商品取引法第166条第1項は、会社関係者について、重要事実の公表がされた後でなければ「当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け」や合併・分割による承継、デリバティブ取引をしてはならないと定めています。条文が規制の対象として挙げているのは「当該上場会社等の特定有価証券等」。

その特定有価証券等の中身は第163条に書かれています。特定有価証券は上場会社等の一定の有価証券を指し、特定有価証券等は特定有価証券と関連有価証券を合わせたもの。関連有価証券は、当該上場会社等の特定有価証券に係るオプションを表示する有価証券その他の政令で定める有価証券とされています。

いずれも上場会社等の有価証券であり、通貨は含まれていません。したがって、通貨のデリバティブ取引であるFXは本条の対象には含まれていない、というのが条文から読み取れる範囲です。

ここでも断定は避けます。「FXにインサイダー規制はない」と言い切るのではなく、第166条と第163条の対象には含まれていない、という書き方が正確だと考えています。

そのうえで、多くの上場企業は自社の内規で役職員の投資行為に制限を設けています。法令の射程と社内規程の射程は別物、ということ。

最終的に見るべきは、法令ではなく所属先の規程と人事担当への確認

ここまでの整理を、実際の確認手順に落とします。

  1. 就業規則または服務規程の副業・兼業条項を読む。「営利企業」「事業」「報酬」という語がどう定義されているかを見ます
  2. 投資行為に関する内規があるかを探す。金融機関や上場企業では、副業とは別立てで用意されていることがあります
  3. 申告や届出の要否を確認する。禁止ではなく届出制になっているケースがあります
  4. 人事担当またはコンプライアンス部門に文書で確認する。口頭の回答は、あとで根拠として使えません

4つ目を文書と書いたのには理由があります。前例のない質問に対して、担当者の解釈が分かれることがあるためです。

税金の面から勤務先に知られる経路を心配している方も多いはず。その仕組みと手続きはFXの利益と住民税の徴収方法を扱った記事に整理しました。この記事が扱っているのは、あくまで法令と規程のほうです。

なお、確認の結果として制限があると分かった場合、その規程に従ってください。この記事は法令上の位置づけを整理したものであり、個別の職場の規程を上書きするものではありません。

公務員や銀行員のFXについて職場で聞かれやすい質問

条文と資料を並べてくると、残る疑問はかなり具体的になります。検索で多い4つに答えます。

FXをしてはいけない職業はありますか?

FXを名指しで禁止する法令は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条のいずれにも、通貨の売買を対象とする文言はありません。

一方で、金融商品取引業者の役職員については自主規制規則に自己売買の制限があり、FXが対象に含まれるかはその規則からは読み取れませんでした。職業単位で線を引くより、所属先の規程を1件ずつ確認するほうが確実です。

公務員がFXをしても問題ないと言い切れますか?

言い切れません。内閣人事局と人事院の資料に書かれているのは「単に資産運用の一環として株式を所有したり、売買することは兼業規制に抵触するものではありません」という記載で、FXという語は使われていないためです。

この記載を株式についての明言として受け取り、FXへの当てはめは所属府省の内規と人事担当への確認で決める。この順番が安全だと考えています。

銀行員はFX口座を作れないのですか?

作れないと定めた法令は確認できませんでした。ただし、日本証券業協会の規則には従業員の自己売買を制限する条項があり、金融機関では独自の内規を設けている例もあります。

この記事で断定はできないため、勤務先のコンプライアンス部門に確認してください。届出をすれば可能というケースもあります。

FXにもインサイダー取引の規制はありますか?

金融商品取引法第166条が規制しているのは、上場会社等の特定有価証券等に関する取引です。第163条の定義でも、対象は上場会社等の有価証券であり通貨は含まれていません。

したがってFXは本条の対象には含まれていない、という整理になります。ただし為替相場に影響する未公表情報を職務上知りうる立場の人は、勤務先の内規で別途制限される可能性があります。

職業による制限は、条文よりも所属先の規程で決まる部分が大きい

ここまで確認してきたとおり、法令の条文はFXを名指ししていません。判断が分かれるのは、条文の解釈と、それを受けた各組織の内規のほうです。

  • 国家公務員法第103条が禁じるのは営利企業の役員兼業と自営兼業、第104条は報酬を得ての事業従事。通貨の売買を対象とする文言はない
  • 地方公務員法第38条は役員兼職・自営・有報酬従事の3つを1条にまとめ、任命権者の許可を要件としている
  • 内閣人事局と人事院の資料は資産運用としての株式売買が兼業規制に抵触しないと明記しているが、FXという語は使われていない
  • 日本証券業協会の規則は従業員の自己売買を制限しているが、FXが含まれるかはこの規則からは読み取れなかった
  • 金融商品取引法第166条と第163条の対象は上場会社等の有価証券であり、通貨は含まれていない

調べるべき順番は、法令、公表されている解釈資料、所属先の規程、人事担当への確認の4段階です。3段階目と4段階目は自分で動くしかありません。

次に読むなら、「9割が負ける」という説の根拠を検証したFXで勝っている人の割合を検証した記事がおすすめです。この記事と同じく、確認できた事実と確認できなかった事実を分けて扱っています。

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