FXの損失は繰越控除できる!損益通算と3年ルール

FXの損失は繰越控除できる!損益通算と3年ルール

「FXで年間マイナスだった。利益が出ていないなら確定申告はしなくていいはずだし、そもそも何も戻ってこないだろう」

こういった疑問に答えます。

損失が出た年こそ申告する意味があります。1年目に50万円の損失、2年目に30万円の利益、3年目に40万円の利益という3年間で計算すると、繰越控除を使わなかった場合の税額は142,205円、使った場合は40,630円。差は101,575円で、これは損失50万円に20.315%を掛けた金額とぴったり一致します。ただし条件があり、損失が出た年に申告し、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を出し続けること。1年でも飛ばすと、この101,575円は消えます。

書類の集め方や作成コーナーでの入力手順はFXの確定申告のやり方とe-Taxでの入力手順にまとめているので、この記事は通算の範囲と繰越の数値に絞ります。損失を出した口座と別に、取引条件を見直したい方は主要FX会社の比較ページで並べて確認できます。

相手FXの損失と通算できるか根拠として使える資料
他社の店頭FX口座の損益できる国税庁の作成コーナー(同じ先物取引に係る雑所得等)
取引所FX(くりっく365)の損益できる同上、および金融商品取引業者の案内
CFDの損益できる金融商品取引業者の案内
取引所の先物取引やオプション取引の損益できる金融商品取引業者の案内
株価指数バイナリーオプションの損益できる金融商品取引業者の案内
給与所得できない国税庁の作成コーナー
事業所得・不動産所得できない国税庁の作成コーナー
上場株式や投資信託等の損益できない金融商品取引業者の案内
原稿料や副業など先物取引以外の雑所得できない国税庁の作成コーナー

表の上半分と下半分を分けているのは「同じ箱に入っているかどうか」です。同じ箱なら相殺でき、違う箱なら相殺できない。この一線さえ押さえれば、通算の話はほぼ終わります。

通算できるのは「先物取引に係る雑所得等」の枠の中だけです

まず箱の中身を確認します。FXの損益がどこに入るかで、通算できる相手が決まるためです。

国税庁によると、FXの差金等決済によって生じた損益は「先物取引に係る雑所得等」として他の所得と分離して課税されます(国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。この区分は、FXのために作られた枠ではありません。商品先物やオプション取引も同じ枠に入ります。

だから他社の口座も、CFDの損益も、同じ箱にある限り足し引きできる。国税庁の確定申告書等作成コーナーも、損失が生じた場合について他の先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算は可能だと説明しています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失が生じた場合」)。

具体的にどの取引が同じ箱に入るのかは、金融商品取引業者の案内のほうが列挙が細かい。GMOクリック証券は、FXネオ取引の損益について他の先物取引に係る雑所得等との通算が可能だとしたうえで、対象としてFXネオ取引、くりっく365取引、くりっく株365取引、外為オプション取引、CFD取引、株価指数バイナリーオプション取引を挙げています(GMOクリック証券「税金(FXネオ 取引ルール)」)。

ヒロセ通商も、FXとCFDの損益は取引所で行う先物取引等との売買損益との通算ができると案内しています(ヒロセ通商「FXの税金と確定申告について」)。

なお、この課税の特例を説明する国税庁のタックスアンサーには「CFD」という語そのものが出てきません。申告分離課税の対象について、平成28年10月1日以後に商品先物取引業者以外と行う店頭商品デリバティブ取引を除くという規定が置かれています(国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」)。ですので、CFDの扱いについて私が書けるのは「金融商品取引業者はこう案内している」というところまでです。自分の取引がどれに当たるかは税務署に確認してください。

給与所得と相殺して還付を受けることはできません

ここは誤解が多い場所なので、はっきり書きます。

国税庁の確定申告書等作成コーナーは、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできないと明記しています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失が生じた場合」)。つまりFXで100万円負けても、給与所得や事業所得と相殺して源泉徴収された税金を取り戻す、ということはできません。

「FXの損失を申告すれば会社の給料から引かれた税金が戻る」という説明を見かけたら、それは誤りです。戻る余地があるのは、同じ箱の中に利益がある場合か、翌年以降に利益が出た場合だけ。

株式との関係も同じです。ヒロセ通商は、FXとCFDの損益について上場株式や投資信託等の損益とは通算できないと明記しています(ヒロセ通商「FXの税金と確定申告について」)。株の特定口座で損が出ていても、FXの利益とぶつけることはできません。

株式等には株式等で別の繰越制度が用意されています。上場株式等に係る譲渡損失も翌年以後3年間にわたって繰越控除でき、確定申告のほか、専用の申告書付表と株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の添付が要件とされています(国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」)。期間も手続きの形も似ていますが、枠は別。両方に損失を抱えているなら、それぞれ別に繰り越すという整理になります。

もう1つ、混同されやすいのが年をまたぐ扱い。国税庁が示しているのは翌年以後への繰越だけで、今年の損失を去年の利益にさかのぼって当てる仕組みは示されていません。使えるのは将来に向かってだけ、という一方通行の制度です。

では損失は捨てるしかないのか。そうではなく、時間軸を変えれば使えます。それが次の章の繰越控除です。

3年間の税額を並べると、繰越の有無で101,575円変わります

数字で見たほうが早いので、具体例で計算します。前提は、各年の先物取引に係る雑所得等が表の金額だけで、必要経費と他の繰越損失はゼロ。税率は所得税15%、住民税5%に復興特別所得税を加えた合計20.315%を用い、端数処理は省いています(国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」)。

その年の損益繰越を使わない場合の課税所得税額繰越からの控除額繰越を使う場合の課税所得税額
1年目-500,000円0円0円繰越額500,000円が発生0円0円
2年目+300,000円300,000円60,945円300,000円0円0円
3年目+400,000円400,000円81,260円200,000円200,000円40,630円
3年間の合計142,205円40,630円

差は101,575円です。1年目の損失を申告しただけで、3年分の税額が7割以上減りました。

内訳を追うとこうなります。2年目の利益30万円は、繰越した50万円のうち30万円で全部消え、課税所得はゼロ。残った20万円が3年目に持ち越され、40万円の利益から差し引かれて課税所得は20万円になります。

繰越控除が使えるのは翌年以後3年間なので、この例では3年目までに50万円を使い切りました。もし2年目と3年目の利益が小さくて使い切れなければ、残りは4年目まで持ち越せます。

この計算は概算です。他の所得や控除の状況によって結論は変わるので、実際の申告は国税庁の情報か税務署への確認で進めてください。

戻ってくるのは損失額ではなく「損失額×20.315%」です

前の章の101,575円という金額、どこかで見た数字だと感じた方もいるはずです。

50万円に20.315%を掛けると101,575円。完全に一致します。これは偶然ではなく、繰越控除の仕組みそのものです。

繰越控除は、損した50万円が返ってくる制度ではありません。将来の課税所得を50万円分だけ小さくする制度です。差し引く先が先物取引に係る雑所得等の金額に限られていることも、確定申告書等作成コーナーの解説で確認できます(国税庁 確定申告書等作成コーナー「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」)。だから効果は「損失額×税率」に収まります。

繰り越した損失額3年以内に使い切れた場合の税額の減少
10万円20,315円
50万円101,575円
100万円203,150円
300万円609,450円

数字を見ると、期待していたより小さいと感じるかもしれません。ただ、申告の手間は損失額がいくらでもほぼ同じです。50万円の損失なら10万円強、300万円なら60万円強が手元に残る。手続き1回あたりの見返りとしては悪くない部類だと思います。

もう1点。表の右列は「3年以内に使い切れた場合」の数字です。その先に利益が出なければ、繰越は減少ゼロのまま期限切れになります。繰越控除は将来の利益とセットでしか効かない、という点は正直に押さえておいてください。

繰り越せるのは翌年以後3年間。令和7年分の損失は令和10年分まで

期限の数え方を確認します。「3年」がどこから数えて3年なのかで、1年ずれるためです。

国税庁は、先物取引の差金等決済に係る損失の金額は翌年以後3年間にわたって繰り越し、先物取引に係る雑所得等の金額から控除できると示しています(国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。基準になるのは損失が生じた年分で、そこから翌年以後3年間ということ。

損失が生じた年分繰越控除を使える年分使えなくなる年分
令和6年分令和7年分・令和8年分・令和9年分令和10年分以降
令和7年分令和8年分・令和9年分・令和10年分令和11年分以降
令和8年分令和9年分・令和10年分・令和11年分令和12年分以降

損失が出た年そのものは含みません。翌年から数えて3年です。

令和7年分の損失なら、使えるのは令和8年分、令和9年分、令和10年分の3回。令和10年分の申告で使い切れなかった残りは、そこで消えます。

権利が消えるのは、申告を1年でも飛ばしたときです

制度としての期限は3年ですが、実務でつまずくのはこちらのほうです。

国税庁の確定申告書等作成コーナーによると、繰越控除を受けるには、損失が生じた年分の確定申告に「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」と「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付し、その後も連続してこれらを添付した確定申告書を提出することが必要です(国税庁 確定申告書等作成コーナー「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。令和7年分の損失申告用の手引きにも、繰越控除の適用を受ける人はこの2つの様式を申告書と一緒に提出しなければならないと書かれています(国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(損失申告用)」)。

要点は「連続して」の3文字です。取引をしなかった年、利益も損失もゼロだった年でも、申告を出しておかないと連続性が切れます。

先ほどの例で、2年目の申告を出さなかったらどうなるか。3年目に繰越を使えないとすれば、課税所得は40万円のままで税額は81,260円。使えた場合の40,630円と比べて、40,630円多く納めることになります。しかも2年目の利益30万円は、給与所得者なら申告が必要な水準です。

「今年は取引していないから出さなくていい」という判断が、いちばん危ない。私はそう見ています。繰越を使うつもりがあるなら、損益がゼロの年も申告する。この運用だけ守れば要件は満たせます。

損失が出た年の申告そのものは難しくありません。作成コーナーで金額を入力すれば、申告書付表と計算明細書は自動的に作成されます。増えるのは様式であって、作業量ではないということ。

損失が複数年あるなら、古い年の分から順に差し引かれます

2年続けて負けた場合はどうなるか。ここも国税庁が順番を示しています。

確定申告書等作成コーナーは、複数年の損失があるときは最も古い年分に生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額から順次差し引くと説明しています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」)。雑損失と併用する場合は、先物取引の損失を先に控除します。

順番が決まっている理由は単純で、繰越には期限があるためです。古い損失ほど先に消える。だから先に使うのが合理的になります。

損益繰越残高(1年目分)繰越残高(2年目分)
1年目-300,000円300,000円
2年目-200,000円300,000円200,000円
3年目+350,000円0円(30万円を使用)150,000円(5万円を使用)
4年目+100,000円期限内に使い切り済み50,000円

3年目の利益35万円に対しては、まず1年目の30万円が充てられ、足りない5万円分を2年目の損失から取ります。この順番だと、期限が先に来る1年目の損失を無駄なく使い切れます。

もし逆の順番だったら、1年目の損失が期限切れで消える可能性が出てくる。ルールとして古い順に決まっているのは、納税者にとって不利な話ではありません。

FXの損失と繰越控除で、申告の前によく聞かれる質問

通算の範囲と繰越の要件が分かると、次は自分のケースに当てはめる段階で手が止まります。よく調べられている5つに答えます。

FXで損失が出た年は確定申告しなくてもいいのですか?

繰越控除を使うつもりなら、申告してください。損失が生じた年に申告しておかないと、翌年以降に利益が出たときの控除枠を自分から捨てることになります。

「所得がないから申告不要」というのは所得税を納める義務の話であって、繰越の権利とは別の話です。3年間で101,575円が動く例を先に示したとおり、放棄する金額は小さくありません。

FXの損失を給与所得と損益通算できますか?

できません。国税庁の作成コーナーが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできないと明記しています。

同じ理由で、事業所得や不動産所得とも相殺できません。相殺できるのは、同じ先物取引に係る雑所得等の枠に入るものだけです。

株の損失とFXの利益は相殺できますか?

できません。ヒロセ通商も、FXとCFDの損益は上場株式や投資信託等の損益とは通算できないと案内しています。

株式等の譲渡損失には別に3年間の繰越制度がありますが、それはFXの繰越とは別の枠です。両方に損失があるなら、それぞれ別々に繰り越すことになります。

損失を繰り越した2年目の申告書はどう書くのですか?

作成コーナーで金額を入力すれば、申告書付表と計算明細書は自動的に作成されます。令和7年分の案内では、前年分の申告書付表の控えを手元に用意したうえで、「先物取引に係る雑所得等の入力」画面の下部にある「繰越損失の入力」欄で金額を入力する流れが示されています(国税庁 確定申告書等作成コーナー「先物取引に係る雑所得等の入力」)。

つまり、前年の控えを捨ててしまうと転記の材料がなくなります。画面の名称は年分ごとに変わりうるので、その年の案内を見ながら進めてください。

損失の申告を忘れたまま年を越したらどうなりますか?

まず税務署に相談してください。この記事で確認できた資料からは、期限後の申告で繰越が認められるかどうかを断定できませんでした。

自己判断で「もう無理だ」と諦める前に、損益報告書を持って窓口へ行くほうが早いと思います。取り扱いは個別の事情で変わります。

損失が出た年の申告は、翌年以降3年分の権利を買う手続きです

損失の申告に、その年の税金を減らす効果はありません。効くのは翌年以降で、しかも利益が出た場合に限られます。それでも出しておく価値があるのは、出さなければ選択肢がゼロになるからです。

  • 通算できるのは同じ先物取引に係る雑所得等の枠に入るものだけ。給与所得や上場株式等とは相殺できない
  • 1年目に50万円の損失、2年目に30万円、3年目に40万円の利益なら、繰越の有無で税額は142,205円と40,630円に分かれる
  • 減る税額は「繰り越した損失額×20.315%」が上限。損失額そのものが戻る制度ではない
  • 繰り越せるのは損失が生じた年の翌年以後3年間。令和7年分の損失なら令和10年分まで
  • 要件は連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出すること。取引がない年も出しておく

税務の判断は他の所得の有無や取引の内容で結論が変わります。この記事は公表資料で確認できた範囲をまとめたものなので、最終的な判断は国税庁の情報か税務署への確認で行ってください。所得を小さくするもう一方の手段である必要経費については、FXで経費にできるものの考え方で按分の考え方と税額への効き方を数値で整理しています。

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