「SNSで知り合った相手からFXの話を持ちかけられた。断る理由は特にないけれど、詐欺かどうかを自分で判断する材料がない」
こういった疑問に答えます。
警察庁の集計では、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件、被害額1,288.0億円。前年比で件数が48.5%、金額が47.9%増えています。1件あたりの平均被害額を割り算すると約1,353万円で、前年の約1,358万円とほぼ同じ。増えたのは1件の金額ではなく、被害に遭った人の数のほうです。手口は勧誘の入口ごとに型が決まっているので、経路を見分ければ判断は早くなります。
なお、勧誘に乗らずに国内の登録業者から選びたい場合は、主要FX会社の比較ページに各社の公表条件を整理してあります。
| 勧誘の経路 | 最初の接点で起きること | そのあと要求されるもの | 金融庁の注意喚起で該当する類型 |
|---|---|---|---|
| SNSの広告・偽アカウント | 著名人の名前や画像を使った広告からLINEなどのグループへ誘導 | グループ内での銘柄勧誘、口座開設、入金 | 著名人の名称や画像を使ったクローズドチャットへの誘導 |
| SNSの投資グループ | 講師役とサクラ役がいる部屋に入れられ、利益の報告が続く | 段階的に金額を上げた入金 | サクラが利益を装って高額入金を要求する類型 |
| マッチングアプリ | 恋愛や友人関係を装って関係を作ったうえで投資の話に移る | 指定サイトへの入金、送金 | マッチングアプリ等を通じた投資勧誘 |
| 知人や先輩からの紹介 | セミナーや勉強会に誘われる | 参加費、教材費、無登録業者での口座開設 | 若年層が知人や先輩から投資教育セミナーに誘われる類型 |
| 検索広告・比較サイト風のページ | キャッシュバックや高レバレッジを売り文句にした業者紹介 | 無登録の海外業者への口座開設と入金 | 無登録の海外FX業者をキャッシュバックで宣伝して紹介する類型 |
| 自動売買ツールや情報商材の販売 | 「勉強すれば勝てる」「放置で儲かる」という説明 | 商材代金、その後の追加コンサル料 | 詐欺的な勧誘の典型的な文句として明示 |
令和7年のSNS型投資詐欺は9,523件で、増えたのは金額より人数
まず実態を数字で確認します。
警察庁が令和8年5月22日に公表した資料によると、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件で前年比プラス3,110件、増加率は48.5%。被害額は1,288.0億円で前年比プラス416.9億円、増加率は47.9%でした(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)。
同じ資料には、SNS型ロマンス詐欺が5,645件・546.4億円、両者の合計が15,168件・1,834.3億円、特殊詐欺が27,832件・1,423.1億円と記載されています。
ここから3つの計算をしておきます。前提は認知件数と被害額の単純な割り算です。
| 指標 | 令和7年のSNS型投資詐欺 | 参考 |
|---|---|---|
| 1件あたりの被害額 | 約1,353万円 | 令和6年は約1,358万円 |
| 1日あたりの認知件数 | 約26件 | 9,523件を365日で割った値 |
| 特殊詐欺との1件あたり比較 | 約2.6倍 | 特殊詐欺は約511万円 |
件数の増加率48.5%に対して金額の増加率が47.9%とほぼ同じ。つまり1件あたりの被害額は変わっておらず、被害に遭う人が1.5倍近くに増えたという構図です。
1件あたり約1,353万円という金額は、特殊詐欺の約2.6倍にあたります。オレオレ詐欺のような手口より、はるかに大きな金額が1人から動いていることになります。
追証や不足金という形で口座に残る損失については、FXで借金地獄になる仕組みを追証と不足金から解説した記事に金額の側から整理しました。詐欺による被害と、相場で生じた損失は別の話として扱う必要があります。
同じ統計に暫定値と確定値があるので、引用するときは公表日で見分ける
数字を引用する前に、1つだけ注意点があります。
警察庁は同じ統計を2回公表しています。2026年2月13日に掲載された暫定値ではSNS型投資詐欺が9,538件・1,274.7億円、SNS型ロマンス詐欺が5,604件・552.2億円でした(警察庁 SOS47「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」)。
確定値は9,523件・1,288.0億円なので、件数は15件少なく、金額は13.3億円多い。差は小さいものの、同じ年の数字として2種類が流通していることになります。
この記事で使っているのは、令和8年5月22日公表の確定値のほうです。統計を引くときは、数値と時点と主体をセットで書く。これは詐欺の話に限らず、投資情報を読むときの基本動作だと思っています。
金融庁は手口を8類型に整理していて、FXは複数の類型に登場する
「詐欺かどうか」を自分の感覚で判定しようとすると、必ず迷います。判定は公表されている類型に当てはめるほうが速い。
金融庁はSNS上の投資勧誘の手口を8つに整理しています(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)。
- 著名人の名称や画像を使ったクローズドチャットに誘い、サクラが利益を装って段階的に高額の入金を要求する
- AIによる分析レポートの配信を装ってSNSへ誘導する
- 無登録の海外FX業者をキャッシュバックキャンペーンで宣伝して紹介する
- 実在の金融事業者になりすまし、登録番号を詐称する
- 実在の高速取引業者名を使ってIPO取引を勧誘する
- 「政府公認」「金融庁の免許がある」と偽る
- 架空の企画で投票させ、褒賞金の支払いを装って追加入金を要求する
- 偽アプリで個人名義口座へ入金させ、出金時に理由をつけて拒否する
FXに直接関係するのは3番。無登録の海外業者を紹介する形が、はっきり類型として挙げられています。4番と6番も、登録の話を偽る点でFXの勧誘に頻繁に現れます。
高額商材についても、金融庁は典型的な詐欺的勧誘の文句として「セミナーで勉強すれば、勝てるようになる」「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」を明示しています。あわせて、FX・バイナリーオプション・暗号資産取引等について、勧誘を要請していない顧客に勧誘を行うことは原則として禁止されているとも記載されています(金融庁「FX取引・暗号資産等に関する詐欺的な勧誘にご注意ください」)。
この不招請勧誘の禁止は、見分け方として使い勝手がいいルールです。こちらから頼んでいないのにFXの勧誘が来た時点で、正規の業者がやってよい形から外れているということ。
経路が変われば、そのあとに要求されるものも決まってくる
手口の中身より先に、どこから話が来たのかを見てください。経路ごとに、次に何を求められるかがほぼ決まっています。
金融庁は、SNS上の偽アカウントや偽広告が著名人のアカウント・広告を装うこと、LINEグループへ誘導されたあとにグループ内で特定の銘柄の投資勧誘や口座開設・入金の要求が行われることを説明しています。返金に応じない、送金後に連絡が取れない、出金時に高額な手数料や税金名目の追加入金を要求されたのちに連絡不能になる、という被害のパターンも挙げられています(金融庁「SNSやマッチングアプリ等を通じた投資勧誘にご注意ください」)。
知人や先輩からの紹介は、また性質が違います。金融庁の相談事例では、若年層が知人や先輩から投資教育セミナーに誘われる類型、タスク型の副業から無登録の海外業者への送金に誘導される類型が整理されています(金融庁「投資詐欺等に関する利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等」)。
国民生活センターの資料には、SNSのグループに誘われて無料セミナーやLINEグループに参加させられ、FX取引へ誘導される流れが載っています。約50万円を投資して500万円の利益が出たと表示されたものの出金できず、約160万円の追加入金を要求されたという事例があり、実際には利益が生じていなかったとも記されています(国民生活センター「SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル」)。
経路がどれであっても、共通する分岐点は1つ。入金の直前です。ここで振込先が個人名義になっていないかを見るだけで、判断材料が1つ増えます。
著名人をかたる勧誘の相談は、2023年度に前年度比で約9.6倍になった
もう1本、年度別の実数が出ている資料を紹介します。
国民生活センターの報道発表資料によると、著名人をかたる投資勧誘等に関する相談件数は2021年度52件、2022年度170件、2023年度1,629件。2023年度は2022年度と比べて約9.6倍に急増したと記載されています。2024年度は4月30日までの登録分で84件です。平均契約購入金額は全体で約644万円でした(国民生活センター 報道発表資料「著名人をかたる投資勧誘等に関する相談」)。
同資料には契約当事者の属性も出ています。平均年齢60.4歳、最多年代は60歳代で31.7%、男性51.5%・女性48.5%、給与生活者51.8%・無職26.5%。
年代の偏りは、この種の勧誘を「若い人が引っかかるもの」と考えている人ほど注意が必要だという意味になります。金額も、60歳代の平均契約購入金額が約852万円と全体より高い。
消費者庁も、SNS上で著名人や有名人になりすました勧誘、投資資金の振込先に個人名義口座を指定する手口、被害回復をうたう二次被害を挙げて注意を呼びかけています(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。
国民生活センターの資料には「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です。振り込まないでください」という記載があります。ここまで言い切っている公的資料は多くありません。判断に迷ったら、この1行を思い出してください。
見分け方は感覚ではなく、登録の確認という3手順に落とす
では、勧誘を受けたときに何をすればいいのか。手順は3つで足ります。
- 業者名を金融庁の一括検索にかける。業種横断で登録金融事業者を調べられる一括検索機能が、2026年1月30日から運用されています(金融庁「金融事業者一括検索機能の運用開始について」)。ここで出てこなければ、判断はその時点で終わりです。
- 無登録業者の名称公表リストを見る。金融庁は、平成22年1月以降に無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発出した者の名称を、国内所在業者と海外所在業者に分けて公表しています。更新日は国内業者一覧が令和8年6月29日、海外業者一覧が令和8年6月19日です(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。
- 登録番号を自分で照合する。相手が示した登録番号を検索し、社名と番号の組み合わせが一致するかを確かめます。番号の詐称は金融庁の8類型の4番として明示されています。
順番が大事です。1で見つからなければ2と3は不要。1で見つかっても、それは登録があるという事実を確認しただけで、勧誘の内容が正しいことの証明にはなりません。
なお、無登録業者リストに載っていないことと、登録があることは同じではありません。金融庁も、掲載は警告時点の情報であり、掲載されていない業者でも無登録営業を行っている可能性があると注記しています。
会社そのものの安全性を段階的に見る手順は、危ないFX会社の見分け方をまとめた記事に信託保全や約款の確認まで書き出しました。勧誘の話と会社選びの話は、確認する場所が違います。
出金できないと言われた時点で、連絡先は公的な窓口に決まっている
すでに入金してしまった場合の話もしておきます。
金融庁は、金融サービス利用者相談室の電話番号として0570-050588(平日10時から17時)を案内しています。消費者庁は消費者ホットライン188を案内しています。加えて、被害届の提出先として警察があります。
避けたいのは、この段階で「返金します」と近づいてくる相手に頼ってしまうこと。金融庁の相談事例にも消費者庁の注意喚起にも、被害回復をうたう二次被害への警告が入っています。この記事でも、被害回復を請け負う事業者は一切紹介しません。
金融庁の相談室に寄せられた相談は、令和8年1月から3月の3か月で15,765件。うち詐欺的な投資勧誘に関するものが2,474件で、そのうち1,947件が被害の申出でした(金融庁「金融サービス利用者相談室における相談等の受付状況等(令和8年1月1日から同年3月31日)」)。
詐欺的な勧誘の相談のうち、約78.7%が実際に被害を申し出たもの。相談する段階では、すでに資金が動いていることが多いという意味になります。
送金する前に相談する。金融庁の相談事例にも「送金する前に消費生活センターや警察に相談する」というアドバイスが載っています。順番を1つ入れ替えるだけで、結果が変わります。
FX詐欺の見分け方について繰り返し寄せられる疑問
ここまでは類型と統計の話でした。とはいえ、実際に勧誘を受けている最中に確かめたいことは、もっと具体的なはず。よく調べられている4つに答えます。
FX詐欺の見分け方はどこを見ればいいですか?
見るのは3か所です。第1に、こちらから頼んでいない勧誘かどうか。FXについて勧誘を要請していない顧客に勧誘を行うことは原則禁止なので、突然の勧誘はその時点で正規の形から外れています。
第2に、業者名が金融庁の一括検索で出てくるかどうか。第3に、入金先が個人名義の口座になっていないかどうかです。国民生活センターは、投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合は詐欺であり振り込まないよう明記しています。
高額な商材やコンサルは、それだけで詐欺だと判断できますか?
価格の高さだけでは判断できません。この記事でも、特定の販売者や特定のサービスを名指しして詐欺だと断定することはしません。
判断材料になるのは中身のほうです。金融庁は詐欺的な勧誘の典型的な文句として「セミナーで勉強すれば、勝てるようになる」「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」を挙げています。同じ趣旨の説明が出てきたら、価格に関係なく一度立ち止まる理由になります。
マッチングアプリで知り合った相手からの投資の話は、どう扱えばいいですか?
金融庁はマッチングアプリ等を通じた投資勧誘を注意喚起の対象として明示し、相談事例でも「マッチングアプリで知り合った相手から送金を求められる」類型を整理しています。
恋愛関係や信頼関係の深さは、投資判断の材料になりません。相手を疑いたくないという気持ちと、業者名を検索することは両立します。まず検索してください。
すでに入金してしまった場合、どこに連絡すればいいですか?
公的な窓口は3つです。金融庁の金融サービス利用者相談室0570-050588(平日10時から17時)、消費者ホットライン188、そして警察になります。
このタイミングで「被害を取り戻せる」と連絡してくる相手には応じないでください。金融庁と消費者庁の双方が、被害回復をうたう二次被害に注意するよう呼びかけています。
詐欺の判定は、内容の巧拙ではなく経路と登録の2点で決まる
手口の説明はどれも巧妙で、内容だけを読んでいると判断がつきません。判定を早くするには、見る場所を減らすほうが確実です。
- 令和7年のSNS型投資詐欺は9,523件・1,288.0億円で、前年比プラス48.5%とプラス47.9%。1件あたりは約1,353万円で前年とほぼ同じ
- 暫定値の9,538件・1,274.7億円と確定値は数字が違うため、公表日を確認して使い分ける
- 金融庁は手口を8類型に整理しており、無登録の海外FX業者の紹介と登録番号の詐称がFXに直結する
- 頼んでいない勧誘は不招請勧誘の禁止に触れる形であり、それだけで距離を置く理由になる
- 入金先が個人名義の口座なら振り込まない。相談先は金融庁0570-050588、消費者ホットライン188、警察の3つ
判断に迷う時間があるなら、その時間で業者名を1回検索してみてください。3手順のうち最初の1つで、ほとんどの判断は終わります。
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