法人保険の保険料は、全額をその年の損金にできるとは限りません。保険の種類・受取人・契約日・最高解約返戻率・契約からの経過期間によって、損金、資産、給与として扱う部分が変わります。
提案書に「6割損金」とあっても、その割合が契約の最後まで続くとは限りません。決算で確認したいのは、自社の契約について、今年はいくらを損金にし、いくらを資産として残すかです。
この記事では、法人契約の生命保険を中心に、損金算入の確認順と割合、資産の取崩し、仕訳の考え方を整理します。火災保険や社会保険料などは別の取扱いになるため、下の返戻率の表をそのまま使うことはできません。
最初に確認する5項目 | 返戻率別の割合 | 30万円以下の例外 | 仕訳の計算例
公式情報の確認日:2026年10月19日。国税庁の令和8年4月1日現在法令等の資料などを参照しています。個別の税務処理は、契約書類と経理資料をもとに顧問税理士へご確認ください。
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マネーライフ本舗を運営するタイズホールディングスでは、法人保険のご相談を承っています。必要な保障や保険料の負担、現在のご契約を整理し、事業に合った備えを一緒に考えます。

フォームの相談内容に「法人保険の相談」とご記入ください。ご希望商品の取扱いやお見積もりの可否は、ご相談の際にご案内します。個別の損金算入額・仕訳・申告処理は、契約資料をもとに顧問税理士へご確認ください。
法人保険を損金算入できるかは、5項目を順に確認する
まず、保険証券・設計書・保険会社の経理処理案内を手元に用意しましょう。商品名や年間保険料だけでは、処理を決められません。
| 確認する順番 | 契約資料で見るところ |
|---|---|
| 1.契約日と変更履歴 | 2019年の取扱い変更の前後か。途中で保険期間などを変えていないか |
| 2.保険の種類 | 定期保険・第三分野保険か、養老保険・終身保険などか |
| 3.受取人と対象者 | 法人・本人・遺族の誰が受け取るか。特定の役員等だけの契約か |
| 4.最高解約返戻率 | 設計書に示された、保険期間を通じて最も高い返戻率はいくらか |
| 5.今年に対応する期間 | 資産計上期間・その後の期間・取崩期間のどこに当たるか |
「損金」は法人税を計算する所得から差し引く金額です。「資産計上」は、その年の損金にせず、将来に対応する額などとして帳簿に残す処理です。帳簿で費用にした額がそのまま税務上の損金になるとは限らず、必要に応じて申告時の調整も行います。
損金算入額は、税金から直接差し引ける金額ではありません。保険料の支払いは残るので、損金の割合だけで加入の有利・不利を判断しないようにしてください。
定期保険・第三分野保険の損金割合|50%・70%・85%が区切り

次の表は、2019年7月8日以後の契約で、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険を対象とした基本の整理です。契約者・受取人は法人とし、短期払い・30万円以下の例外・特約などを除いています。
第三分野保険は、病気やケガなどに備える医療保険・がん保険等を指します。最高解約返戻率は、今年解約した場合の返戻率ではなく、契約時に示された保険期間全体で最も高い返戻率です。
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間中の資産割合 | 同期間中の損金割合 |
|---|---|---|
| 50%以下 | 原則なし | 原則として当期に対応する保険料の全額 |
| 50%超70%以下 | 当期分支払保険料の40% | 同60% |
| 70%超85%以下 | 当期分支払保険料の60% | 同40% |
| 85%超 | 当初10年:最高解約返戻率×90% 10年経過後:最高解約返戻率×70% | 100%から左の資産割合を差し引く |
※「当期分支払保険料」は、支払った保険料のうちその事業年度に対応する部分です。上表の資産割合・損金割合を、毎年の支払総額に無条件で掛けるわけではありません。
たとえば最高解約返戻率が90%で、当初10年以内の資産計上期間にあるなら、資産割合は90%×90%=81%、損金割合は19%です。「85%超なら一律1割損金」とは限りません。
参考:国税庁 No.5364「定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い」
参考:国税庁 No.5364-2「相当多額の前払部分を含む保険料の取扱い」
「6割損金」「4割損金」は、契約全期間に固定される割合ではない
最高解約返戻率が50%超85%以下の場合、基本的には、保険期間の初めの40%に相当する期間に一部を資産として積み上げます。その後、保険期間の75%に相当する期間が過ぎると、積み上げた資産を残りの期間に配分して損金にします。
| 期間 | 基本的な処理 |
|---|---|
| 資産計上期間 | 当期に対応する保険料の一部を資産とし、残りを損金にする |
| 資産計上期間の後、取崩期間まで | 当期に対応する保険料を損金にする。積み上げた資産は残す |
| 取崩期間 | 当期に対応する保険料に加え、過去の資産を均等に取り崩した当期分も損金にする |
保険期間20年なら、基本的な区切りは「開始から8年まで」と「15年経過後」です。実際の決算では月単位で確認するため、区切りが事業年度の途中に来ると、その年度の金額を分けて計算します。
最高解約返戻率85%超の契約は、上の40%・75%の期間区分を使いません。資産計上を終える時期は、返戻率のピークやその後の返戻金の増え方などで決まり、短すぎる場合の最低期間のルールもあります。
85%超の契約で過去の資産を取り崩し始める時期は、原則として解約返戻金の金額が最大となる期間の経過後です。返戻率のピークと同じとは限らないため、設計書だけで判断できなければ保険会社の期間別資料を確認してください。
参考:エヌエヌ生命「保険税務ハンドブック」法人契約の税務・支払時の経理処理
「30万円以下なら全額損金」の例外は、条件を分けて確認する
よく混同されるのが、次の二つの取扱いです。同じ30万円でも、何を合計するかが違います。
| 取扱い | 主な条件 | 30万円の判定に使う額 |
|---|---|---|
| 返戻率による資産計上の例外 | 保険期間3年以上、最高解約返戻率70%以下など | 一人の被保険者につき合計した年換算保険料相当額 |
| 返戻金のない短期払いの取扱い | 2019年10月8日以後の契約で、期間を通じ返戻金がない定期・第三分野保険等。払込期間が保険期間より短いもの | 一人の被保険者につき、その事業年度に支払った保険料の合計額 |
一つ目の「年換算保険料相当額」は、保険料の総額を保険期間の年数で割った金額です。月払いなら月額が30万円以下、年払いならその年の支払いが30万円以下、という判定ではありません。
二つ目は、所定の条件を満たす保険料について、支払った日の属する事業年度の損金として処理している場合に認められる取扱いです。ごく少額の払戻金がある契約を含みますが、返戻金のない短期払いなら何でも対象になるわけではありません。
同じ被保険者の契約を、1契約ずつ30万円以下に分ければよいわけでもありません。他の保険会社の契約も含め、どの契約を合算するかを税理士に確認しましょう。受取人などによって給与扱いになる契約にも注意が必要です。
受取人や保険の種類によって、資産・給与になる場合もある
返戻率の表を使う前に、受取人と保険種類を確認してください。同じ法人の支払いでも、役員個人のための保険や、満期保険金がある保険では扱いが変わります。
特定の役員等だけが対象で、本人・遺族が受け取る場合
定期保険・第三分野保険で、保険金等の受取人が本人または遺族であり、役員や特定の従業員等だけを被保険者としている場合、支払保険料はその人への給与とされます。会社が保険会社へ直接支払っていても同じです。
給与扱いは、単に保険料として損金にする処理とは異なります。個人側の課税や、役員給与としての損金算入要件なども関係するため、保険料の勘定科目を変えるだけで済ませないようにしましょう。
参考:国税庁 No.5364(保険金・給付金の受取人が本人または遺族の場合)
養老保険は、死亡時と満期時の受取人を両方確認する
| 死亡保険金の受取人 | 満期時の生存保険金の受取人 | 基本的な保険料の扱い |
|---|---|---|
| 法人 | 法人 | 全額を資産に計上する |
| 本人または遺族 | 本人または遺族 | 役員・従業員への給与になる |
| 被保険者の遺族 | 法人 | 半分を資産に計上し、残り半分を期間に応じて損金にする |
※最後の組合せでも、役員や特定の従業員等だけを被保険者にしている場合、残り半分はその人への給与とされます。「養老保険は必ず半分損金」とは判断できません。
また、法人が契約者・死亡保険金受取人となる死亡保障の終身保険は、基本的に保険料を資産に計上します。「保障が一生続く医療保険」とは保険種類が異なるため、どちらも終身という言葉があるからといって同じ処理にはしません。
仕訳例|保険料10万円のうち、損金4万円・資産6万円となる場合
毎月、その月に対応する保険料10万円を支払い、契約者・受取人が法人、最高解約返戻率が80%の定期保険を例にします。資産計上期間中で、保険料は保険期間を通じて払い、例外・特約・契約変更はないと仮定します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 支払保険料 4万円(費用) 前払保険料 6万円(資産) | 普通預金 10万円 |
支払いは10万円ですが、資産計上期間中は6万円を帳簿に残し、4万円がその月に対応する損金となる考え方です。税金が4万円減るという意味ではありません。また、資産にした6万円は自由に引き出せる預金ではなく、解約時に戻る金額とも一致するとは限りません。
一方、当期に対応する保険料を全額損金にできる契約で、同じく当月分10万円を払う場合は、基本的な仕訳は「支払保険料10万円/普通預金10万円」です。どちらを使うかは、商品の宣伝文句ではなく契約条件で確認します。
※説明用の仮定で、特定商品の保険料や自社契約の処理を示すものではありません。勘定科目名は会社の運用等で異なり、事業年度に対応する額や申告調整も別途確認が必要です。
参考:エヌエヌ生命「保険税務ハンドブック」保険料支払時の経理処理
2019年より前の契約と、契約変更がある場合は別に確認する
上の返戻率別ルールは、基本的に2019年7月8日以後の定期保険・第三分野保険の契約を対象とします。解約返戻金のない短期払いの取扱い変更は、2019年10月8日以後の契約が対象です。
それ以前の契約に、今の表をそのまま当てはめて処理を変えないようにしてください。契約日と、当時適用された取扱いを確認する必要があります。
参考:国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」
また、保険期間や払込期間を変えた場合、返戻率が変わるような契約変更をした場合は、その後の処理も確認します。国税庁のFAQは、保険期間の変更や一定の割引率変更などを、最高解約返戻率の区分等に影響する契約内容の変更の例として挙げています。
すべての変更が同じ扱いになるわけではありません。変更前後の設計書・通知書を保管し、従来の仕訳を続けてよいか、保険会社の案内と税理士の判断を照合してください。
決算前は、保険会社と税理士に渡す資料をそろえる
処理を確認するときは、年間保険料だけを伝えるより、次の資料をまとめると話が進みます。自社で判定しきれない部分は空欄のままで構いません。
| そろえる資料・情報 | 確認したいこと |
|---|---|
| 保険証券・契約内容通知書 | 契約日、契約者、被保険者、受取人、保険種類 |
| 設計書・返戻金推移表 | 最高解約返戻率と、その時期。返戻金額のピーク |
| 経理処理案内・払込記録 | 当期分の保険料、資産計上・取崩期間、特約ごとの扱い |
| 他社契約の一覧 | 同じ被保険者について30万円基準で合算する契約がないか |
| 過年度の仕訳・資産残高、変更通知 | すでに資産にしている額、契約変更の有無と時期 |
保険会社・代理店には契約条件と資料の内容を確認し、その条件で自社の当期にいくら損金算入するかは、顧問税理士に確認しましょう。決算直前に保険料をまとめて払っても、それだけで当期に全額損金算入できるとは限りません。
法人保険の損金算入についてのよくある質問
掛け捨ての保険なら、支払額をすべて損金にできますか?
必ずしもそうではありません。返戻金がない定期保険等でも、短期払いでは将来の保障に対応する保険料が含まれる場合があります。受取人や被保険者の範囲による給与扱い、30万円以下の例外に該当するかも含めて確認してください。
参考:国税庁 No.5364
年払いにすれば、決算で全額を損金にできますか?
年払いという払込方法だけでは決まりません。契約条件と、どの期間に対応する保険料かを確認します。年払いと数年分の前納も同じ扱いとは限らないため、支払日だけで当期の処理を決めないでください。
資産に計上した保険料は、ずっと損金になりませんか?
定期保険・第三分野保険の返戻率別ルールでは、所定の取崩期間に入ると、積み上げた額を期間に応じて損金にします。一方、養老保険など別の種類では処理が異なります。資産の残高だけでなく、どのルールで計上したものかを確認してください。
「損金割合が高い保険」と「会社に合う保険」は同じですか?
同じとは限りません。損金割合が高くても、必要のない保障や払えない保険料なら会社の負担になります。保障の対象・金額・期間と資金繰りを先に確認し、税務上の取扱いも合わせて判断してください。
まとめ|損金割合と適用期間をセットで確認する
法人保険の損金算入は、保険の種類と受取人を確認したうえで、契約日・最高解約返戻率・当期に対応する期間を照合することが大切です。割合だけでなく、資産に積み上げる時期と取り崩す時期も確認しましょう。
契約資料を整理し、保険の内容は保険会社・代理店へ、個別の仕訳や申告処理は顧問税理士へ確認してください。保険を選ぶ際は、損金算入だけでなく、自社が必要とする保障と保険料の負担も合わせて考えましょう。
保障と保険料の負担を、一緒に確認しませんか
マネーライフ本舗を運営するタイズホールディングスでは、法人保険のご相談を承っています。必要な保障や保険料の負担、現在のご契約を整理し、事業に合った備えを一緒に考えます。

フォームの相談内容に「法人保険の相談」とご記入ください。ご希望商品の取扱いやお見積もりの可否は、ご相談の際にご案内します。個別の損金算入額・仕訳・申告処理は、契約資料をもとに顧問税理士へご確認ください。

