老後破綻?住宅ローンは定年までに完済?

老後破綻?住宅ローンは定年までに完済?

今でこそ会社員の定年が65歳に延長された企業が増えていますが、まだまだ60歳定年の企業は珍しくありません。65歳定年を採用している企業でも給与は60歳到達時より下がるケースがほとんどです。住宅ローンの完済時期によっては老後の生活資金に大きく影響します。そこで、老後破綻しないために定年までにできることについて考えてみたいと思います。

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老後破綻?住宅ローンは定年までに完済?

住宅ローンは定年までの完済が理想

住宅金融支援機構の民間金融機関の住宅ローン貸出状況の調査によると、2019年度中の新規貸出期間の平均は27.0年です。さらに25年超の貸出では3年連続で増加しています。この結果から、多くの人が50代から60代での完済を目指して住宅ローンを借り入れていることが分かります。
住宅ローンは定年退職までの完済が理想です。退職金があるから大丈夫と考えている人もいるかもしれませんが、退職金が必ず出るとは限りませんし、退職後もそれなりにお金はかかるものです。

老後にどのくらいのお金が必要か?

総務省の資料「2022年度の家計調査報告」によると、高齢者夫婦(※)の平均支出は271,889円ですが、対する実収入は246,034円という結果で出ています。不足分の約26,000円は貯蓄などから切り崩さなければならないことになります。この結果から都市部と地方では多少の違いはありますが、年金だけで退職前と同様に住宅ローンの返済を続けていくのは簡単でないことは分かります。長い住宅ローン返済の間には家族が病気になることもあるでしょう。年齢が上がるにつれ医療費などがかさむことも予想されます。たとえ団体信用生命保険に加入していても、このようなリスクへの備えにはなりません。また、毎月かかる生活費以外にもお子さんへの援助やマイホームの修繕費などが必要になることもあると思います。

定年退職後に考慮したい費用
  • マイホームの修繕費など
  • 医療費の増加・介護費用など
  • こどもの結婚・出産・マイホーム購入なの援助資金

これらの費用を考慮すると、退職後の住宅ローンの残債をすべて退職金でまかなうのはリスクが高いといえます。

※夫が 65 歳以上、妻が 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯

団体信用生命保険でカバーされる保障とは

団体信用生命保険は住宅ローンを借り入れしている人が、住宅ローンを返済中に死亡または高度障害になったときに、保険会社が住宅ローンの残債を返済してくれる制度です。民間金融機関で住宅ローンを借り入れる際には、団体信用生命保険(団信)への加入が条件となっている場合がほとんどです。団信の保険料はフラット35以外では金融機関が負担しますが、三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などの特約を付加する場合は、借入者が付加保険料を負担することになります。特約を付す場合の保険料は、住宅ローン金利に一定の率(各金融機関により異なります)を上乗せして支払うのが一般的です。

団信に加入している方の中には、万が一のときは残りの住宅ローンの返済の必要がなくなるからと安心している人がいるかもしれませんが、団信は一般の生命保険とは違うことに留意しなければなりません。

団信と一般の生命保険との違い
  • 団信では病気で入院した場合などは保障の対象としていない
  • 債務者が亡くなった時の保険金は、団信ではローン残債=ゼロだが、
    一般の生命保険の場合には保険金≧住宅ローン残債となるケースがある
  • 団信では債務者が亡くなった場合、遺族の今後の生活が保障されない

住宅ローンで老後破綻しないために定年までにすべきこと

手元資金に余裕ができたら、定年を待たず繰上げ返済を検討する

繰り上げ返済をして返済期間を短縮することで定年前の完済が可能になる場合があります。繰り上げ返済の留意点としては、手元資金がなくなることが挙げられます。教育費などと重なる場合などは、繰り上げ返済の時期について慎重に検討する必要があります。

「ねんきん定期便」などで将来の年金額を確認しておく

「ねんきん定期便」は国民年金および厚生年金保険の加入者(被保険者)に対して、毎年1回、誕生月に日本年金機構から郵送されます。年齢によって通知される内容が異なりますが、50歳以上の方の場合は、老齢年金の年金見込額が記載されています。これにより定年後に住宅ローンの返済が残っても無理なく生活できるのか試算することができます。

退職金の額を確認しておく

退職金は基本的に勤務年数によって決まりますが、退職金の支給は法的な義務はなく、会社の就業規則に退職金についての定めがある場合を除いては退職金を支給しなくても法的に問題はありません。実際に零細企業などでは退職金を支給しない場合も少なくありません。就業規則は会社の適当な場所に掲示するか、従業員にコピーを配布するかいずれかが義務付けられています。50歳を過ぎたら、就業規則などで退職金の概算金額を確認しておきましょう。

老後破綻しないためには、定年退職年齢(60歳~65歳)時点でのローン残高を確認し、定年後も無理なく返済できるかをシミュレーションして把握しておくことが大事です。

執筆者紹介
江﨑真奈美 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

江﨑真奈美 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後、会計事務所に勤務し、巡回監査業務に従事。その後、社会福祉法人をはじめ、地元の上場企業などで長年経理業務を担当。勤務していた事務所の閉鎖に不安を感じ、これをきっかけとして2016年に最短1年で1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得する。FPとして独立し、執筆、講師業を中心に精力的に活動中。
【企画・編集/SAKU株式会社】

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