住宅ローンの借り換え相談【具体的な借り換えメリット額はいくら?】

時間がなくて住宅ローンの借り換えを検討できていない、そんな方は多いのではないでしょうか。知らない間に相場の3~4倍の住宅ローンを返済している、という場合もあります。特に10年固定金利で借り入れている場合、固定期間が終了した後の金利優遇幅にも注意する必要があります。今回は実際にあった相談事例を元に、どのぐらい借り換えメリットが出るのかを考えてみました。

目次

住宅ローンの借り換え相談【具体的な借り換えメリット額はいくら?】

ご面談日 2017年11月21日
ご相談者 佐藤 勝子様(仮名)/53歳(独身)/職業:看護師

佐藤様とは外資系生命保険の営業マンのご紹介でお会いしました。
普段、看護師として働き、趣味で合唱サークルにも行っていること、お母様が高齢でやや体調を崩し気味のため、通院に付き添うなど非常に忙しい生活を送っておられました。そのため、ゆっくり自分のお金のことを検討する時間が無かったところ、経験豊富な住宅ローン専門のファイナンシャルプランナーに相談ができると聞いて、弊社事務所までお越しいただきました。
当日もお打合せ後、用事があるとのことで、世間話もそこそこにご相談をスタートしました。
早速お持ちいただいた住宅ローンの「返済予定表」(※1)を確認させていただくと、大手銀行の10年固定金利プランのものでした。

また、ちょうど10年の固定期間が終わったタイミングで、新しい条件に変更となっており、その案内のハガキもお持ちでした。

佐藤様のお借入プラン(当初)

項目名 
金利タイプ10年固定金利
借り入れ金利2.475%
当初借入2,800万円
月額返済99,723円

佐藤さまのお借入プラン(固定期間終了後)

項目名
金利タイプ変動金利
借り入れ金利2.275%
当初借入2,182万円
月額返済97,405円

まず、住宅ローン専門FPの私がすぐにお伝えしたいところは、借り換えた場合のメリットについてです。佐藤さまのケースの場合、最新の金利水準を知っていれば、大幅に借り換えメリットがでることは計算するまでもなく明らかです。
現在のプランは変動金利2.275%ですが、最新の金利は0.5%~高くても0.875%位です。

つまり、現在借り入れ中の金利と比べると4分の1~3分の1くらいが平均的な相場なのに、3倍~4倍の金利で住宅ローンを借りているという、重症患者の状況でした。
「家賃10万円が相場であり、それを知らないがゆえに30~40万円で借りている」というケースはほとんどないと思うのですが、住宅ローンの金利については、まだまだこのように最新金利の4倍の金利で借りているという方は少なくありません。

借り換えが成功した場合、毎月返済額と総返済額は下記のように変わります。

 残債金利月額返済額総返済額
現在のプラン2,182万円 2.275% 97,405円 2,863万円
借り換え後のプラン2,250万円(※2) 0.497% 79,771円 2,393万円
差分+68万円 -1.778% -17,634円-470万円
  • 上記は比較計算上、変動金利で今後の金利上昇はなかったという前提で計算しています。
    現在借り入れ中の金利も、新しく借り入れる金利も双方変動金利のため、同条件で比較計算しています。
  • 某ネット銀行で借り換えをした場合を想定しています。

借り換えした瞬間、借入金額は増加しますが、現状よりも毎月返済で17,634円 総返済額で470万円安くなることはほぼ確定します。
これが、住宅ローンを借り換えすることの1つ目かつ最大の効果です!!
佐藤さまは上記のような借り換えメリットが出ることがわかりました。では私の場合はどうなの?という疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
そこで「実際に借り換えメリットが出るのかどうかをセルフチェックするためのポイント」についてもお伝えしましょう。

  1. 返済予定表とは償還表とも呼ばれ、住宅ローンを借りたときに受け取る、今後の返済予定が一覧に記載された用紙になります。固定金利プランで借りた場合はその固定期間のすべての情報が記載してあり、変動金利プランの場合は半年ごとに向こう半年分の予定が記載されたものが郵送されます。
  2. 借り換えの際は、それに伴い諸費用がかかります。表記の金額は残債+諸費用を上乗せした金額となります。諸費用とは登録免許税・印紙代・司法書士報酬・銀行の事務手数料などになります。

実際に借り換えメリットが出るのかどうかセルフチェックするためのポイント

現在の住宅ローンの借り換えをして、メリットが出るか否か?
よく、上記のような記事を目にします。

まず以下の条件にあてはまる方は借り換えを検討してください。

  • 返済期間が10年以上ある
  • 現在の金利が借り換えする金利と1%以上の差がある
  • 住宅ローンの残債が1000万円以上ある

確かに、この3つが当てはまれば借り換えメリットがでる可能性は高いのですが…。実際の相談の現場では、住宅ローンの借り換えに対する意識が高い方もいれば、そうでもない方がいらっしゃいます。
意識が高い方の借り換えは一巡している印象です。

今まで借り換えをしてこなかった方の特徴としては、
「よくわからないから、何もしていない」
「そもそも、2番の「1%以上の差」があるかどうかわからない」
とうものがほとんど。

セルフチェックのポイントとして下記の要件に当てはまる方は借り換えをぜひ検討してください。

  • 住宅ローンを借りてから5~10年以内の方
  • 3年以上前に固定金利もしくは、固定と変動のミックスでローンを借りた方
  • 3年以上前に借りて、残債3000万円以上、期間25年以上残っている方

逆にメリットが出にくいのは下記の方です。

  • 3年以内に変動金利・0.775%以下でローンを借りている方

上記の方は借り換えに必要なコストを加味すると、メリットが非常に出にくい方になります。

自分の住宅ローンをチェックするには、住宅ローンの返済予定表をご確認ください。
変動金利で借りた方は、銀行より半年ごとに郵送で案内が送られてきます。
固定金利で借りた方は、住宅ローンを借りたときに固定期間分の返済予定表が送られています。不動産の売買契約書等の書類と一緒に保管しているケースが多いようです。

住宅ローンの借り換えは、お客様にとってデメリットはほとんどありません。しいて言えば面倒なことくらい。
住宅ローンの相談を専門にしている弊社のお客様の中には、総返済額が100~300万円くらい減る方が多くいらっしゃいます。
数時間の作業で返済総額が数百万円変わりますので、上記セルフチェックに当てはまる方は、借り換えメリットの有無のチェックを進めて頂ければと思います。

ご自身でのチェック方法がよくわからない方は、専門家への相談のサービスもご利用ください。チェックから最適金融機関のご案内、住宅ローンの借り換えと同時に家計の無駄遣い有無の診断まで、ワンストップで行うことが可能です。

さて、次は「住宅ローン借り換えの審査・住宅ローンの借り換えができる人、できない人の例」についてご紹介します。

住宅ローン借り換えの審査・住宅ローンの借り換えができる人、できない人

現在借りているローンの借り換えを検討した時、月々の返済金額・返済総額が安くなることが確認できれば、当然みなさんは手続きを進めたくなると思います。先述のとおり、住宅ローンの借り換えはお客様にとってメリットが大きく、デメリットはほぼ見つかりません。

しかし、下記の例に当てはまる方は借り換えができません。

  • クレジットカード等の支払いが滞ったことのある方
  • 以前より大きく年収が下がってしまい、返済比率が基準を満たさない方
  • 健康状態が悪くなり、団体信用生命保険に加入できない方
  • 物件の担保評価が出ない方

一番厳しいのは、住宅ローン以外の借入で返済が滞ってしまったという経験を5年以内にされた方です。
個人の借入情報は「個人信用情報」と言われ、金融業者間で情報共有されるシステムがあります。

上記に該当しないのに審査に落ちてしまったという方は、審査の出し方そのものを変更すれば、融資に通るかもしれません。まず確認していただきたいのが、返済比率の基準が金融機関の基準を満たしていなかった可能性についてです。

お客様自身で計算し、月々の返済額に無理のない数字が算出できたとしても、銀行側の計算では、継続的な返済が難しい金額だと判断されて、審査に通らなくなってしまうことがあります。なぜこのような事がおこるのか?その秘密は、銀行側が計算の際に使う「審査金利」というものにあります。

例えば、お客様が契約しようとした住宅ローンの金利が「変動金利」で0.625%だったとしても、銀行は「審査金利」として3.5~4%と、少々ストレスのかかった数字で計算します。すると、お客様が把握していた金額よりも多く見積もられることとなり、審査基準をオーバーしてしまうことが起こるのです。

なぜ「審査金利」のような数字が設定されるのでしょうか?それは「お客様が住宅ローンを選ぶ視点」と、「銀行がお客様の返済能力を見極める視点」の違いにあります。

皆さんが住宅緒ローンを組む時は、「自分にあったプランかどうか」を基準に選ぶと思いますが、銀行は「どんなプランでも返済できるお客様なのかどうか」を見極める必要があります。そのため、割増の金利で計算して見積もりを出すのです。

住宅ローンは長く組むことも、短く組むことも可能です。しかし、返済期間の長いローンを「繰り上げ返済」等で短くしていくことは可能でも、短いローンを長くするのは難しいとされています。

借り換えには十分な期間・金額を

借り換え事例を通してメリットや具体的な金額についてご紹介しました。
本記事でご紹介した内容はまとめると以下になります。

  • 借り換えで総返済額・月々の返済額が低くなることも
  • 借り換えでメリットの出る人と出ない人がいること
  • 借り換えができる人できない人の条件があることにも注意

計画的に返していける金額を組むことは当然の事なのですが、「定年までに返し終えたい!」といって返済期限を無理に短くするなどすると、上記のようなアクシデントに見舞われることがあります。そのため、住宅ローンの借り換えをすすめる際も、期間・金額ともにゆとりを持った計画を立ててからご検討されることをお勧めいたします。

執筆者紹介

丸尾 健 株式会社N&Bファイナンシャル・コンサルティング 代表執行役

大学卒業後、建築関連の仕事を経て大手商社系の中高級住宅を扱うハウスメーカーに入社。在籍期間9年のうち5年は店長職を兼務。MVP賞3回。その後、大手金融機関のファイナンシャル・プランニング部門に転職。FP先進国の米国のファイナンシャルプランニングメソッドトレーニングを受講。2009年9月に独立して、株式会社N&Bファイナンシャル・コンサルティングを設立。FP経験現在9年目。新規年間相談件数120件前後、面談累計件数1,000件以上。主に個別面談を中心に活動している、実務家FP。ライフプラン全体を通してのマネープランの作成、資産形成アドバイスの提案に定評がある。

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