マンション購入を決めたら、その直後に転勤が決まったー。都市伝説のようなこの話、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。では、実際に住宅購入直後に辞令が出た場合はどうするのか、その対応について先輩の事例を基に紹介しましょう。
マイホーム、買った途端に転勤辞令!住宅ローンはどうする?!
新築マンションには住めないけど、住宅ローンは支払いが発生
今回、転勤と住宅ローンの関係について話を聞かせてくれたのは、Oさん夫妻。2007年12月、妻の妊娠をきっかけに、夫が住まい探しを開始し、勤務先の近くに建設中だった新築マンションの購入(3600万円)を決めました。住んでいた賃貸マンションも解約し、カーテンや家具なども新調して、年明けにはいよいよ入居…と準備を進めていたときに、大阪への転勤が命じられたのです。
妻と生まれてくる子どもは東京に残って生活し、夫が単身赴任することも考えましたが、東京に戻る時期の見通しが不透明だったことから、家族全員で大阪へ転居することに。結局、購入した新築マンションはOさん家族が住むことなく、会社に「借り上げ社宅」としてもらい、賃料収入を得ることとなりました。
住宅ローンの返済には、この賃料を充てていたのですが、管理費や修繕積立金、税金(固定資産税・都市計画税など)は自己負担。大阪での賃貸マンションの家賃ももちろん発生するため「持ち出し分の方が多かった」と言います。特に固定資産税は、新築住宅の特例措置である3年が過ぎると軽減措置が終わり、2倍に。住んでいないマンションの税金が、家計を圧迫したと話してくれました。
住宅ローン控除はどうなる? 友人や家族に貸す場合の注意点は?
そしてOさんが何より残念だというのが、税金などの負担はそのままなのに、新築住宅購入時の恩恵が受けられないこと。多くの人が利用する住宅ローン控除は、自分や家族がその家に住んでいないと、適用が受けられません。自分たちだって住宅ローンを組んで家を買ったのに…と不満そうです。
ただ、住宅ローン控除の対象となるのは10年間。再入居時に期間が残っていれば、適用が受けられます。Oさんが東京に戻り、念願の自宅マンションで暮らし始めたのは、2015年。住宅ローン控除の適用となる残り期間(3年)があるので、この期間については控除が適用されるわけです。
しかし、転勤期間中の分を先送りできるわけではありません。あわせて、この再適用を受けるためには、あらかじめ所轄の税務署で手続きをする必要があります。
ちなみに、単身赴任を選んだ場合であれば、住宅ローン控除が適用されます。ただ、そうなると今度は、家賃収入を得ることはできず、単身赴任中の生活費と家族の生活費がダブルで発生することに。また、離れて暮らす精神的な負担も大きいので、一概にどちらが得ということはできません。
Oさん家族は「家賃収入」がある状態のため、毎年、確定申告をしていました。こうした諸手続きの説明や申請については、親戚の税理士に助けてもらいつつ、自分たちで行っていたとか。自分たちはサポートが受けられたからまだ良かったものの、それでも手続きが面倒だった…と話していました。
知人や家族に貸す場合も書面を交わそう
今回のOさんのケースと異なり、見ず知らずの人が住むのに抵抗感がある場合は、家族や知人・親戚などに貸すという選択肢も考えられます。その場合、口約束などとはせずに、きちんと書類を交わしておくのがよいでしょう。
国土交通省には雛形が用意されているので、活用してみてください。貸し出し期間が見えている場合は、定期借家契約(期間をあらかじめ決めての賃貸借契約のこと。基本的には期間を終えたら退去する契約)の方が、トラブル回避には有効です。
嘉屋恭子 フリーライター
フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2006年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得